「取り憑かれる」とは
「取り憑かれる」という言葉には、以下のように二つの意味があります。
「取り憑かれる」の「取」には、つかんで離さないという意味があります。「憑」は、常用漢字表にない漢字なのであまり見かけませんが、憑依(ひょうい)や信憑性(しんぴょうせい)という言葉で使われます。「憑」については、次の項で詳しくご紹介します。
「憑」の字義
「憑」は、音読み「ヒョウ」、訓読み「よ-る。かか-る。つ-く。たの-む」と読みます。漢字を構成している「冫(にすい)」は「氷」の原字で、氷がぶつかって割れた筋目をかたどった象形です。「馮(ヒョウ)」は、馬が物を割るような勢いでぶつかることを表わしています。
この「馮」に「心」をつけた「憑」は、物同士をぶつけて合わせることや二つをピタリと合わせるということを表し、そこから、くっつける、よりかかる、たよる、たのむといった意味を持つようになりました。
また、日本語独自の意味として、狐憑き(きつねつき)のように、つくという意味も持つようになったと言われていて、この意味で「取り憑かれる」の「憑」が使われています。したがって、「憑」は、成り立ちとは別に独自の意味を持った漢字ということになります。
「取り憑かれる」の使い方
上記のように、「取り憑かれる」の意味には、二通りありますので分けて使い方や例文をご紹介します。
「霊などが乗り移る」
オカルト映画や昔話、ファンタジー小説などでは、悪霊や物の怪が人間に乗り移って、悪さをしたりしますが、現実にそのようなことがあるかどうかは別として、例えば、人の常識外れの言動や精神状態が不安定な様子を、何かに取り憑かれていると言うことがあります。
【例文】
「妄想や思い込みが頭から離れない」
妄想や思い込みというとあまりいい意味ではないように思われるかもしれませんが、特定の人や物に対する憧れや思い入れなどに対しても、「取り憑かれる」という表現をすることができます。
【例文】
「取り憑かれる」の類語
「憑依」
「憑依(ひょうい)」本来の意味は、何かを頼ること、すがることですが、「憑」の字義で述べたように、日本語独自の意味として、つく(霊などが乗り移ること)を意味します。この意味が、「取り憑かれる」の1の意味の類語です。
ただ、「憑依」が、頼りにするという本来の意味で使われる例は、文芸作品などでは見られますが、一般的には、あまりないようです。
【例文】
- 世界各地に霊などが憑依したと言われる現象が見られる。
- 最近、肩が上がらず、五十肩だと友人に話すと、何かの霊が憑依しているから、お祓いしないといけないと言われた。
「没頭」
「没頭(ぼっとう)」は、何かに深く集中して、ほかの物事が目に入らないことです。「没」には、しずむ(水没など)、おちぶれる(没落など)、うずまる(埋没など)、しぬ(病没など)といった意味のほかに、打ち込む、はまり込むという意味があります。
「頭」は、意識や気持ち・考えなどの例えとされているようです。何かに打ち込んで意識が集中して、ほかの事に意識が向かないところから、「没頭」と言い表しているのではないでしょうか。
人が、何かに没頭する姿は、その物事に取り憑かれていると言い換えることもできるので、類語と言えるでしょう。
【例文】
- 息子は、勉強そっちのけで趣味のギターに没頭している。
- 子供たちも独立し、住宅ローンも完済したので、定年退職後はやっと好きなことに没頭できると思っていたら、親の介護問題が持ち上がってきた。