「齟齬」の読み方と意味
「齟齬」の読み方
「齟齬」という言葉は、非常に難しい二つの漢字で成り立っている熟語です。しかもよく似た字同士ですので、一瞬「おやっ」と思われるかもしれません。
ただ漢字の「つくり」は一般的にその字の音を示しますので、「齟齬」もそれぞれの字のつくりである「且」と「吾」に着目すれば発音が想像できます。「齟」は「祖」「粗」などと同様「そ」、「齬」は「語」「悟」などと同じく「ご」と読みます。すなわち「齟齬」の読み方は「そご」となります。
「齟齬」の意味
「齟齬」の「齟」という漢字は、「かむ」ことや「かみ砕く」ことを表します。この字は「何度も歯を合わせること」を指し、「よくかむ」ことを表す「咀嚼」(そしゃく)の「咀」と同系統の字です。一方の「齬」は、「食いちがう」といった意味や「かみ合わない」という趣旨を示します。「互いに食い違う」といった意味合いであり、「互」と同系統の漢字とされます。
つまり「齟齬」は、そもそもは「何度もかみ合わせても、食い違ってしまってしっくりいかない」といった意味を持ちます。
「齟齬」の使い方
「齟齬」という言葉は、その字の成り立ちからすると「本来であれば一致するのが望ましいものが、なかなかかみ合わないという」状態を表します。単に外見上「違っている二つのものや状態がある」というだけではなく、「理想の形、意図した姿とは異なり、物事が食い違ってしまっている」、あるいは「その食い違いの状態」というニュアンスがあります。
このため「齟齬がある」と文章上で使う場合は、「AとBが違う」という意味だけではなく、「合致すべきもの同士なのに、違っているとは困ったことだ」といった趣旨を含むという点がポイントです。
例えば「はじめから方向も内容も異なっている二つのこと」を表すのであれば、「相違」「差異」といった言葉を用いるのが適切です。「齟齬」を使う際は、「合致するのがよいのに、どうもかみ合わず、ずれている」といった状況を表すとき、と考えると使い分けやすいでしょう。
「齟齬」という言葉は、名詞として「齟齬をきたす」「両者の齟齬について」などと使うほか、「両者の報道が齟齬している」と動詞のようも用いる場合もあります。
「齟齬」の例文
- 提出された計画案に齟齬が大きいことから、実施は当面見送られることになった。
- 双方の見解に齟齬があるのは、そもそも基本的認識にズレがあるためだ。
- 後で齟齬が生じないように、今のうちに十分すり合わせておくとよい。
- 同じ事件の報道なのに、メディアによって内容に齟齬があるのは解せない。
「齟齬」の類語と対義語
「齟齬」の類語
- 矛盾(むじゅん)…ほことたて。両者が違いつじつまが合わないこと。
- 背馳(はいち)…行き違うこと、離れること。
- 撞着(どうちゃく)…つじつまが合わないこと。つきあたること。
- 背反(はいはん)…相容れないこと、食い違うこと。
- 軋轢(あつれき)…仲が悪くなること。
- 不協和音(ふきょうわおん)…不調和な和音。不調和な関係の例え。
- 摩擦(まさつ)…物と物がこすれ合うこと。不一致、軋轢。
「齟齬」の対義語
- 符合(ふごう)…割り符が合うこと、両者がぴったり一致すること。
- 合致(がっち)…ぴったりと合うこと。
- 鳩合(きゅうごう)…ある同じ目的の下に人を集め、まとめること。
- 暗合(あんごう)…偶然に、思いがけなく物事が一致すること。
- 吻合(ふんごう)…神経や血管などをつなぐこと。物事がしっくりと合うこと。
- 一致(いっち)…二つ以上のものが食い違いなく同じなこと。
「齟齬」のまとめ
両者の食い違いを示す「齟齬」という言葉ですが、その語感の堅さとともに、文例をみるとやや相手や言葉の対象を非難するような、ネガティブな印象も含んでいるといえそうです。ビジネスシーンや公の場所などで、顧客や目上の人などに向けて使用する際には「若干違いがあるようです」「ご意見はごもっともです」などと、表現を選ぶ必要もあるでしょう。
似たような意味の言葉同士であっても、それぞれの言葉が含むニュアンスにも十分配慮することが、正しい日本語表現には大事なことだといえます。