「緊張」とは
「緊張(きんちょう」とは、人間の精神状態やからだの状態を表す言葉の一つで、心理学や生理学の概念でもあり、以下のような意味を持つ言葉です。
- 神経が張り詰めて、からだが固く引き締まること。
- 相手との関係が悪化して、トラブルが起こりそうな状態。
- (生理学)筋肉や腱(けん) が一定の収縮状態を持続していること。
- (心理学)何かの行動に対する心の準備や、将来起こることに対して待ち受ける心の状態。
3や4の意味の反応の表れとして、1の意味の心身の状態があります。人前で話をしたり、面接や入試、冒頭の写真のように舞台に出る直前の緊張など、多くの人が、何らかの「緊張」を経験しているのではないでしょうか。
また、社会心理学では、「緊張」を衝突への傾向としてとらえています。「緊張」が高まることによって、家族や民族、国家や社会体制などの内部や相互間に好ましくない雰囲気が生まれることで、これが2の意味の「緊張」です。
「緊張」の使い方
「緊張」には、上記の4つの意味がありますが、そのうち、1と2の意味について使い方をご紹介します。
1の意味の「緊張」
1の意味の「緊張」は、複雑な感情の重なり合った状態なので、一つの原因から起こることはないようです。一般的には、成功や失敗に対する強い自意識、周囲の人々の視線に対する過敏な感情や不安感などが複雑に絡み合った感情コンプレックスであると考えられています。
上記で述べたように、公私いずれの場面においても「緊張」することはありますから、いくつかの場面について例文をご紹介します。
【例文】
- エレベーターに乗り込もうとしたら社長が乗っていたので、思わず緊張でからだが硬直してしまった。
- 弁論大会の演壇に向かう途中、ガチガチに緊張して歩き方がぎこちなかった。
- リラックスしようと考えれば考えるほど緊張してしまう。
- 夕べから突然降りだした雪で真っ白になった道を滑らないように歩こうとすると、肩や足の筋肉が緊張してしまった。
2の意味の「緊張」
よくニュースなどで国際関係の「緊張」という言葉を聞くことがあります。また、人と人との間でも「緊張」を感じることがありますが、「緊張感」と言ったりします。高まった「緊張」がはじけた時には争いごとに発展することもあります。
【例文】
- 第二次世界大戦後、西側諸国と東側諸国の東西冷戦(または、米ソ冷戦)と呼ばれる緊張関係が長く続いた。
- 首相のスキャンダルをめぐって与党と野党の緊張が強まった。
- 飲み会の帰り、同僚が酔っ払いと口論になり、二人の周りに緊張感が漂っていたが、警察官が通りかかったので、二人とも何事もなかったかのように立ち去った。
「緊張」の類語
「緊迫」
「緊迫(きんぱく)」は、状況が緊張して、一触即発のような差し迫った様子のことです。国際関係にも人間関係にも使う言葉で、「緊張」の2の意味の類語です。
【例文】
- 討論会場で野次が飛び交い、緊迫した雰囲気に包まれている。
- 外国で、両国の軍隊が対峙する緊迫した様子がニュースで報道された。
- 柱の陰でヒソヒソ話をしている二人の顔に緊迫した色が見て取れた。
「あがる」
「あがる」は、人や物が物理的に高い所へ移動する、商品の価格が高くなる、地位や立場が上のレベルになることなどを言いますが、「緊張」の1の意味の類語としては、頭に血が上るということから、のぼせて、舞い上がり、平常な心持ちでないことを「あがる」と言います。
おそらく、多くの人は、強度の緊張のあまりに心臓がバクバクしたり、冷や汗をかいたりして「あがる」ことがあるのではないでしょうか。「あがり症」と言われる人もありますが、あがりやすいこと自体は病気ではありません。
しかし、極度の「あがり症」の場合は、社会不安障害(SAD:Social Anxiety Disorder;「対人恐怖症・赤面恐怖症・吃音(きつおん)恐怖症など)として、心療内科などを受診したほうがいいケースもあるようです。
【例文】
- 初めて主役を演じることになって、開演直前舞台裏であがってしまってなかなか足が踏み出せなかった。
- 彼女は、あがると顔が真っ赤になって、ぶるぶると震えだす。