「他愛もない」の読み方
「他愛もない」の読み方は「たわいもない」か「たあいもない」です。元々は「たわいもない」だったのですが、後に「たあいもない」とも読まれるようになりました。
アクセントも2種類あり、「たわいもない」「たわいもない」のどちらでもよいようです。
「他愛もない」の意味・使い方
「他愛もない」の意味は大きく3種類。「しまりがない」「考えが浅い」「張り合いがない」です。
一つ一つの意味を、その使い方とともに説明していきましょう。
しまりがない
まず「他愛もない」には、しまりがないという意味があります。態度や振る舞いがだらしないことです。話し方が理路整然(りろせいぜん)としていなかったり、正気ではないような状態を指して使います。
わかりやすい例が、お酒に酔っている状態です。ほろ酔い程度ならまだしも、深酒で酩酊している時は正気ではなく、だらしなく倒れていたり、ちらかしたりすることもありますね。
お酒以外では、寝ている様子にも使います。よだれをたらして寝ている様子は、誰が見てもだらしがなく、「しまりがない」でしょう。
【使い方】
- お酒に弱い伯父さんたちは、畳の上で他愛もなく眠りこけている。
考えが浅い
次に、考えが浅いさまも「他愛もない」の意味のひとつです。幼く未熟な考え方や、根拠に乏しく論理的ではない思想、まとまりを欠いた話などのことです。
子供の話や行動などの幼稚さを批判した言葉と言えるでしょう。もちろん、たとえ大人であっても年甲斐もない、子供じみた考えには使えます。熟慮や熟考、クリティカルシンキングとは真逆の意味と言えますね。
【使い方】
- 孫たちの他愛もないいたずらに振り回された一日だった。
張り合いがない
「他愛もない」の最後の意味が、張り合いがないことです。実力に差がありすぎて、まるで手ごたえがない、格下過ぎてつまらないという気持ちを表します。
スポーツや将棋などの競技で考えるとわかりやすいでしょう。実力差がありすぎるとどちらも楽しくないでしょう。コールドゲームの強者の感覚が「他愛もない」です。
最近はゲームやアニメの敵役が口にすることが多いようです。圧倒的な強さを見せつけた後で、「他愛もない」と軽口をたたく姿はイメージしやすいのでは?
【使い方】
- もっと強いと思っていたのだが、この程度だったとはな。他愛もない。
「他愛もない」の由来
最初は「たわいない」
今でこそ「他愛もない」と言いますが、本来の形は「たわいない」です。辞書や辞典でもこの形で載っているものが多いです。
「たわい」とはしっかりした考えや思慮分別、理性や正気といった意味の名詞です。手ごたえや張り合いという意味もあります。
「たわいない」は、「たわい」がないことなので、幼く揺らぎやすい考えやしまりがなくてだらしないという意味になりますね。
当て字で「たわい」が「他愛」に
この「たわいない」に漢字が当てられます。それが「他愛ない」です。当て字ですので、「他愛」という字そのものに意味はありません。
「他愛」はそのまま読めば「たあい」です。そのためでしょうか、今では「たあいない」という読み方も正しいとされています。
なお、「他愛ない」とは無関係な「他愛」(たあい)という言葉もあります。その意味は、自分よりも他の人の幸福を優先すること。利他主義とも言えますね。
なぜか「も」が増えた
現在では、「他愛ない」がさらに変化して「他愛もない」となっています。「も」が増えました。「他愛ない」や「たあいない」までは辞書でも正しいとされています。しかし、「他愛もない」は間違いであると言われています。
なぜ、「も」が増えてしまったのでしょうか。理由はいくつか考えられますが、正確なことはわかっていません。
一説には、他の形容詞の影響が考えられます。「にべもない」や「しょうもない」の影響で「~もない」という語尾になってしまったという説です。また、使用される状況からすると、「口ほどにもない」や「造作もない」がまざったという可能性もあります。