「被る」の2つの読み方
「被る」には「こうむる」と「かぶる」の2つの読み方があります。「こうむる」とは被害や恩恵を受けることです。「かぶる」は以下の通り複数の意味があります。
「被る(かぶる)」の意味
「被る(かぶる)」には以下の意味があります。
- 頭に載せる。例:「帽子を被る」など。
- 水などを頭から浴びる。
- 他人の罪や責任を引き受ける。例:「私が全てを被る」など。
- かさなる。
「かさなる」の意味の「被る(かぶる)」
上記のうち「4」の「かさなる」という意味は最近うまれた俗語とされます。「重複する」に近い意味です。また意図的に「かさねる」ものでもなく、どちらかというと「偶然にかさなる」ときに使います。意図的な場合は「被せる」が使われます。
「被る(かぶる)」の用例
ファッションなど
髪型、上着の色、その他ファッションの系統が、同じ場などにいる人と同一または類似したときなどに使われます。
- ボーダーのTシャツが「被った」。
- 2人とも白いカーディガンに黒のスカートで「被った」。
- 同じブランドのバッグが「被った」。
性格など
性格や「キャラクター性」が似ているときにも使われます。
- 私の彼氏と姉の彼氏は、2人とも草食系男子で「被って」いる。
- コスプレ会場でキャラが「被った」。
スケジュールなど
- 私の誕生日と、友人の結婚式が「被った」。
「ダブる」
「被る(かぶる)」に似た意味の俗語に「ダブる」があります。これは「ダブルになっている」つまり同じものが2重になっていることです。
留年も同じ学年に2度在籍するため「ダブる」と言われます。一方、1年間の浪人は「ダブる」は使われません。
- 発注がダブって2倍の数がが入荷した。
- 「腹痛が痛い」という表現は「痛い」という意味がダブっているので誤りだ。
- 大学で単位が足なくて卒業できずダブっている。
元が「ダブル」のため、3つ以上に重なっている場合は使われません。例えば発注を3重に行ってしまった場合は「ダブる」は使われません。
「被る」と「ダブる」
意味がほとんど同じ場合
「被る」と「ダブる」は、同じように使える場合があります。以下は両方とも「(容姿や性格などが)重なって感じる」という意味です。
- 初恋の人と君のお姉さんが「被って」感じる。
- 初恋の人と君のお姉さんが「ダブる」。
意味が異なる場合
一方、「被る」と「ダブる」で意味が異なる場合もあります。例えば以下のような場合です。
- レストランで、私と彼の注文したパスタがトマトソース系で「被った」。
- レストランで、私と彼の注文したパスタが「ダブった」。
上記の「被る」は、2人が別々にトマトソース系のパスタを注文して、それが似た種類であることを意味します。一方「ダブる」は、本来は1つでよかったものを、うっかり2つ注文してしまったことを意味します。
「被る」「ダブる」のどちらかしか使えない場合
「ダブる」は使えても「被る」は使えない場合があります。例えば「単位が足りず学年が被る」という表現は通常使われません。この場合は「ダブる」を使います。
「被る」と「ダブる」の使い分け
一概に全ての場合に当てはまるとは言い切れませんが、「被る」は異なる主体・対象がかさなっている場合に使われるように思われます。ファッションが「被る」場合は2人以上の別人のファッションがかさなっている状態です。キャラが「被る」も2人以上の別人のキャラがかさなっている状態です。
一方、「ダブる」は同じ主体・、対象がかさなっている場合に使われる傾向にあります。「学年がダブる」は、同じ人が同じ学年に2回在籍しないといけない状態です。「発注がダブる」も1つの商品についての発注がかさなってしまった場合です。
また「被る」の場合の「かさなる」は「似ている」場合にも使われやすいように思われます。「ファッションが被る」という場合、必ずしも全く同一のファッションをしている必要はなく、類似していれば「被る」を使うことができます。一方「ダブる」は「同一である、または同一に思える」場合に使われやすいように思われます。
「被る」まとめ
以上のように「被る」は「こうむる」と読む場合の意味は明白です。「かぶる」という読みでも「帽子を被る」「水を被る」「責任を被る」という場合は意味が分かりやすいです。
一方「かさなる」という意味の場合、「ダブる」との明確な違いや使い分けは難しい場合があります。「かさなって感じる」「似ている」「同じだ」という表現に置き換えて考えてみると良いかもしれません。