「貶す」とは
「貶す」の「貶」の字義には、おとす、しりぞける、そしる、へるなどがあります。人を見下すような意味や官位などを下げるような意味で使われることが多く、あまり良い意味を持たない漢字です。
「貶す」には、三つの読み方があります。一つ目は、「けな-す」で、人物や物事について、欠点をあげつらって悪く言うことです。二つ目は、「おと-す」で、「貶める(おとし-める)」という言い方で、相手を自分よりも劣っている存在だと考えて見下す、軽蔑するという意味です。
三つ目は、「へん-す」で、「貶する(へん-する)」と同義で、「貶す(けな-す)」と同じ意味のほか、官位を下げる(降格する)という意味もありますが古い用法です。
「貶す」の使い方と例文
上記のように、「貶す」には三つの読み方がありますが、ここでは現在でもよく使われる「貶す(けな-す)」について使い方と例文をご紹介します。
「貶す」は、特に悪い特徴を上げてそれを元に言うことです。相手や対象となる物事についてささいなことでもケチをつける、その物やその人に関する全てが気に入らず嫌悪感を抱く、自分が思い上がっていて周囲の人を見下して悪く言う時などに「貶す」と使う場合があります。
「貶す」を使った例文
【例文】
- 映画批評家のAさんは、B監督の映画を貶し、C監督の映画を褒めた。
- 彼女は性格が合わないDくんのことを常に貶しているため、Dくんの知り合いは非常に怒っていた。
- 彼は自分が立派だと自惚れているようで、周囲の人をやたらに貶している。
- 私は大賞を取った作品を素晴らしいと思ったが、友人は大賞を貶して、佳作の方が優れていると言っていた。
「貶す」の類語
扱き下ろす
「扱き下ろす」(こきおろす)とは、もともと、指などで強く押さえて物をしごきながら落とすさまを表しました。
また、「貶す」と同じように、欠点などをあげつらって非常に厳しく非難するという意味でも使われますが、「扱き下ろす」方が、より非難の度合いが強いです。
【例文】
- ニュースキャスターが番組内でゲストのコメントをひどく扱き下ろし、苦情が殺到したそうだ。
- 政府の対応策が後手に回り、野党の党首が扱き下ろしていた。
悪し様
「悪し様」(あしざま)とは、相手のことを実際以上に悪く言う様子を表す語です。細かい所まで欠点をあげつらう「貶す」とよく似ていて、「悪し様に言う」「悪し様にののしる」といった使い方が見られます。
【例文】
- 友人に「別れた彼氏のことを悪し様に言ったらだめだよ」と忠告した。
- 義母が私のことを「うちの嫁は…」と悪し様にののしっているそうだ。
罵詈雑言を浴びせる
「罵詈雑言を浴びせる」(ばりぞうごんをあびせる)という言い回しは、相手に対して感情的になって口汚い言葉を並べ立てて悪口を言う様子を表現しています。
「罵詈雑言」は、聞き手が不愉快になるくらいの汚い言葉で強くののしること、この場合の「浴びせる」は、感情的になって矢継ぎ早に喋り立てることです。
「罵詈雑言を浴びせる」場合は、相手に直接言う時に用いますが、「貶す」は、陰口など第三者に言う場合にも使えます。
【例文】
- Aさんは他の社員が大勢いる前で社長から罵詈雑言を浴びせられ、すぐに退社したそうだ。
- 彼女に罵詈雑言を浴びせたため、大勢の人に非難された。
「貶す」と反対に近い意味を持つ語
褒める/誉める
「褒める/誉める」(ほ-める)とは、人の行い、その人の良いところ、努力が見られた点などについて、素晴らしい、もしくは、他よりも優れていると評価して口に出して言うことです。本人に直接伝える場合にも、第三者に言う場合にも使えます。
【例文】
- 親御さんは、しっかりとおつかいを務めた小さな子どもを褒めていた。
- 素晴らしい演奏をした大賞の受賞者を、大勢の人が口々に誉めていた。
賞賛する・称賛する
「賞賛する/称賛する」(しょうさん-する)は、人の行いやその人の成果、業績などについて価値を認め、心底から感銘を受けて言葉に出して褒めることを言います。「褒める/誉める」よりも程度が甚だしく、褒めちぎっているような意味合いで使えます。
【例文】
- 教授の研究成果は、流行病の収束する効果が高いとして、世界中の研究者から賞賛(称賛)する声が上がった。
- 人命救助をした先輩は、自社だけでなく取引先の方から立派だと賞賛(称賛)されていた。