「与る」とは
「与る(あずかる)」の「与」は、与えるの「与」でもあり、以下のようにいろいろな意味があります。
- やる。あたえる。
- つながりを持つ。
- 一緒に何かをする。仲間になる。くみする。
「与る」は、「与」の1の意味から、(主に目上の人からの)好意や情け、力添えなどを受けること、2や3の意味から、何かの物事に関わることを意味しています。ここから、「与る」を「関る」と書くこともありますが、多くはありません。
以下では、まず、「与」の成り立ちや字義を見た上で、「与る」の使い方を二つの意味別にご紹介します。
「与」の成り立ちと字義
「与」は、常用漢字で「與」の省略形ですが、常用漢字表には、「與」も括弧書きで「与」と併記されています。「與」の上段中央部は、かみ合った歯の象形「牙」で「口」を表し、それ以外の部分は持ち上げる手と引き上げる手の象形です。
そこから、「與」は、二人の人間が両手を使い、口(話)を合わせて助け合うことを表し、力を合わせる、くみする(仲間になる)、あたえるという意味を持ちました。ここから、「与る」は、上記のような意味を持つ言葉となっています。
「与る」の使い方
「好意などを受ける」
人に物を「あたえる(与える)」という言葉の語感は、現代風に言うと上から目線的な感じも受けるかもしれません。好意などを受けるという意味の「与る」には、逆の立場、つまり、与えられる者の視点で、与えられたものを受ける、受け取るという意味で使います。
実際、この意味で「与る」を使う場合は、目上・格上の立場にある人や国などの組織、あるいは、景気などの社会情勢などから、何かしらの利益を受ける時です。また、商売上の社交辞令にも使われることがあります。
【例文】
「物事に関わる」
物事に関わるという意味で「与る」を使うのは、大きなプロジェクトや法律の制定などに関わる場合です。この場合、「与って力がある」という慣用句もよく使われます。
「与って力がある」とは、ある物事の結果を導いたことに、重要な役割を果たしているということで、特に、いい結果が出た時などに使います。
【例文】
- この度、内閣法制局に出向し、民法改正法案の審査業務に与ることになりました。
- 社運を賭けたプロジェクトに与ることになり、とても光栄です。
- 今回のM&A(企業・事業の合併や買収の総称)では、ヘッドハンティングしたA君を中心としたチームが与って力があったと言えるだろう。
「与る」の類語
「関与」
「関与(かんよ)」は、物事にかかわりを持つことです。「関」は、「關」の教育漢字で、両開きの門に閂(=丱:かんぬき)を通して二つの扉をつなぐさまを表し、そこから、「つなぐ・つながる=かかわる」という意味を持っています。
「与る」は、人の関わりなどを表しますが、「関与」は、人以外の物事についても関係の有無を表す場合に使います。
【例文】
- 今回の不祥事ついては、私は何も知らず、一切関与していません。
- A医大の研究チームが、がん発生のメカニズムに関与する遺伝子を発見した。
「携わる」
「携わる(たずさわる)」も、物事にかかわりを持つことです。「携」は「攜」の略字で、「扌(てへん=手)」に、「雟(けい:つばめ)」をさげて持つところから、身に着ける、たずさえる、関連するといった意味を持っています。
【例文】
「頂戴する」
「頂戴(ちょうだい)する」は、ものや飲食物をもらうことです。「頂戴」は、こどもが、親に「お菓子頂戴」とか、買い物で店の人に「これ頂戴」と言って品物を示す時などに使います。
もう一つ、「頂戴」の使い方として、相手に対してへりくだっていう時に「頂戴する」と言います。酒席などで、「お流れ頂戴します」「もう十分頂戴しました」という場面がありますね。これが、「与る」の「好意などを受ける」という意味の類語となります。
【例文】
- この度は結構なものを頂戴いたしまして、ありがとうございます。
- 昨夜の不手際のことで、今日は朝から師匠にさんざんお小言を頂戴しました。