「与る」とは?意味や使い方を分かりやすく解説

「恩恵に与る」「お褒めに与る」といった表現を最近耳にすることは少なくなりましたか?もしかすると、この「与る」という言葉そのものを初めて目にする方もいらっしゃるかもしれません。現代ではあまり使われなくなったこの言葉には、実は深い文化的な背景と豊かなニュアンスが込められています。

与るとは?与るの意味

目上の人からの好意や恩恵を受けること、または重要な物事に関わることを意味する動詞

与るの説明

「与る(あずかる)」という言葉は、漢字「与」の持つ多様な意味合いから成り立っています。まず「与える」という行為から転じて、主に目上の方からいただく好意や支援を受けるという意味を持ちます。また、重要な事業やプロジェクトに参加し、その一端を担うという関与の意味も含まれています。この言葉が使われる場面は、格式ばったビジネスシーンや伝統的な人間関係が重視される状況が多く、現代のカジュアルな会話ではあまり見かけなくなった理由もここにあります。しかし、丁寧な表現を求められる場面では、今でもその価値を発揮する美しい日本語の一つと言えるでしょう。

昔ながらの丁寧な表現を学ぶことで、日本語の豊かさを再発見できますね!

与るの由来・語源

「与る」の語源は漢字「与」に由来します。この漢字は元々「與」と書き、二人の人間が両手を使って口(話)を合わせて助け合う様子を表しています。上部中央の「牙」はかみ合った歯の象形で「口」を意味し、周囲の部分は持ち上げる手と引き上げる手を表現しています。この象形から、「力を合わせる」「仲間になる」「与える」という複数の意味が生まれ、日本語では「あずかる」という受け身的な意味に発展しました。もともとは相互扶助の概念を表す漢字が、日本で独自の意味合いを獲得した興味深い例です。

一つの言葉に歴史と文化が凝縮されているんですね!

与るの豆知識

「与る」は現代ではあまり使われなくなりましたが、かつては格式ばった場面でよく用いられていました。面白いことに、この言葉は「関与する」という能動的な意味と「恩恵を受ける」という受動的な意味の両方を持っています。また、「与って力がある」という慣用句は、物事の成功に重要な役割を果たしたことを称える表現として、現在でもビジネスシーンなどで使われることがあります。さらに、地域によっては「与る」を「預かる」と同じ意味で使う方言も存在し、言葉の地域差を感じさせる一面もあります。

与るのエピソード・逸話

作家の夏目漱石は『こころ』の中で「先生」が遺書を書く場面で「お嬢さんが私に与るようなことがあってはならない」という表現を使用しています。また、戦国武将の豊臣秀吉は、部下に対して「わしの成功はお前たちの力に与るところが大きい」と語ったという記録が残っています。現代では、ある著名な企業の社長が株主総会で「今回の業績向上は、従業員一同の努力に与るところが大きい」と発言し、謙虚な姿勢を示したエピソードが話題となりました。

与るの言葉の成り立ち

言語学的に見ると、「与る」は日本語における授受表現の複雑さを示す好例です。同じ漢字「与」が「与える」(やる・あげる)と「与る」(もらう・受ける)という正反対の意味を持つのは、日本語の授受表現が話し手を中心とした相対的な立場を重視するためです。また、この言葉は敬語体系とも深く関わっており、目上の人から何かを受ける場合に使用されることから、日本語の上下関係を反映した表現と言えます。歴史的には、室町時代から江戸時代にかけて使用頻度が高まり、明治時代の文語文でもよく用いられましたが、現代口語では使用頻度が減少しています。

与るの例文

  • 1 先輩が残業してくれたおかげで、私も早く帰宅できて本当に助かった。こんな風に気遣いに与ることができる職場はありがたいな。
  • 2 たまたま通りかかった部長にプレゼンのアドバイスをもらったんだ。まさかあの忙しい部長の指導に与れるなんて思わなかったよ。
  • 3 取引先のパーティーで、社長自ら紹介してくれて有名企業の重役と知り合いになれた。社長の計らいに与ることができてラッキーだった。
  • 4 先月のプロジェクト成功で、部長から直接ねぎらいの言葉をいただいた。こんな風に褒めに与るとは思っていなかったから、すごく嬉しかった。
  • 5 先輩が自分のコネを使って、あの有名講師のセミナーに無料で参加させてくれた。先輩の厚意に与ることができて本当に感謝している。

「与る」の使い分けと注意点

「与る」を使う際には、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。まず、この言葉は基本的に目上の人や組織から何かを受ける場合に使用します。自分から能動的に行動する場合には適しません。

  • 恩恵や好意を受ける対象が明確であること
  • 格式ばった場面や改まった文章で使用すること
  • 謙虚な姿勢を示したい時に効果的
  • 日常会話ではやや堅苦しく感じられる可能性あり

間違いやすいポイントとして、「与る」を「預かる」と混同しないように注意が必要です。また、過度に使用すると慇懃無礼な印象を与える可能性もあるため、適切な場面での使用が求められます。

関連用語と類語のニュアンスの違い

用語意味使用場面ニュアンス
与る恩恵を受ける、関与する格式ばった場面謙虚で丁寧
頂戴する受け取る、いただくややカジュアル感謝の気持ち
関与する関係を持つ、参加するビジネス全般中立的・客観的
携わる従事する、関係する職業・活動能動的参加

これらの類語は似ているようで、それぞれ微妙なニュアンスの違いがあります。「与る」は特に、受動的でありながらも名誉なこととして受け止める場合に適しており、日本語の敬語体系の複雑さをよく表しています。

歴史的変遷と現代における位置づけ

「与る」は平安時代から使われていた古い言葉ですが、特に江戸時代から明治時代にかけて盛んに使用されました。当時は武家社会や格式を重んじる場面で頻繁に用いられ、日本語の丁寧表現の重要な一部を形成していました。

「与る」という言葉は、日本語の謙譲語の発達過程において、上下関係を円滑にするための重要な役割を果たしてきた。

— 国語学者 金田一春彦

現代では使用頻度が減少しましたが、それでも冠婚葬祭や格式のあるビジネスシーンでは生き残っています。特に伝統を重んじる業界や、年配の方との会話では、今でも自然に使われることがあります。

よくある質問(FAQ)

「与る」と「預かる」の違いは何ですか?

「与る」は主に目上の人からの好意や恩恵を受ける意味で、一方「預かる」は物や責任を一時的に引き受ける意味です。例えば「お褒めに与る」は正しいですが、「お褒めを預かる」とは言いません。読み方は同じ「あずかる」ですが、使い分けに注意が必要です。

「与る」はビジネスシーンで使っても失礼になりませんか?

むしろ丁寧な表現として適しています。目上の方からの好意を受けた際に「ご配慮に与り」などと使うことで、謙虚な姿勢を示せます。ただし、あまり頻繁に使うと堅苦しく感じられる場合もあるので、適度な使用がおすすめです。

「与って力がある」とはどういう意味ですか?

ある物事の成功に重要な役割を果たしたことを意味する慣用句です。特に良い結果が出た時に、その貢献度が大きかったことを称える表現として使われます。例えば「今回のプロジェクト成功には、彼のアイデアが与って力があった」のように使います。

「与る」の反対語は何ですか?

直接的の反対語はありませんが、反対の概念を表すなら「与える」が近いです。ただし「与る」が受動的・恩恵的なニュアンスを持つに対し、「与える」は能動的・提供側の立場を表す点が異なります。文脈によっては「施す」「提供する」なども反対の意味合いで使えます。

日常会話で「与る」を使うのは不自然ですか?

現代のカジュアルな日常会話ではあまり使われず、少し古風または格式ばった印象を与えるかもしれません。ただし、改まった場面やビジネスシーンでは、丁寧で教養のある印象を与えることができるので、状況に応じて使い分けると良いでしょう。