「情け」の読み方と意味
「情け」は「なさけ」と読みます。この言葉は複数の意味を持っていますが、共通している点は、「人間の感情」を表すことです。
1つ目の意味は、他人を労わる心、人間としての情、思いやりや哀れみの感情のことです。「良識」とは細部が異なるも、近いニュアンスです。
2つ目の意味は、男女間の愛情や、恋心、色事のことです。こちらは「恋慕」と細部が異なるも、似ています。
3つ目の意味は、風流の心や、風情、おもむきのことです。こちらは「風景を見ての感動」のようなニュアンスを含みます。
「情け」の使い方と慣用句
複数の意味を持っている「情け」ですが、上述の通りこの言葉は、自分や他人の感情、または色事を表す際に用いられます。
そして慣用句として使うことで、ある程度、意味を限定できます。とはいえ非常に紛らわしく、多くは状況や会話の流れから、意味するところを汲み取る必要があります。
「情けを掛ける」
「情けを掛ける」は主に1つ目の意味であり、哀れみを掛ける、哀れみの感情から親切にする、ということを表します。噛み砕いて言えば、「可哀想だから優しくしよう」といった意味です。
また「義理的に」というニュアンスを含む場合もあり、たとえば窮地に陥った親族に対し、「親族だし仕方がない、助けよう」といったときにも、「情けを掛ける」が使われます。単なる可哀想では同情心が強いですが、義理的な場合、義務感が強いです。
「情けを売る」
「情けを売る」は主に2つ目の意味であり、男女間の色事を売ることを表します。噛み砕いて言えば、「私の身体を売ります、色事を買いませんか」といった意味です。
時代小説などでは「お情けが欲しく思います」という台詞を見かけますが、これは「色事をしてください」といった意味です。また単に損得を考慮し、同情心も義務感もなく「情けを掛ける」ことを、「情けを売る」とも表します。
「情け深い」
3つ目の意味としての「情け深い」は、おもむきが深い、情緒が深いことを表します。噛み砕いて言えば、「この風景には感じ入るものが強い」といった意味です。
ただし「情け深い」は1つ目の意味として、単純に「情けの心が強い」といったニュアンスでも使われるので、注意が必要です。人を指す場合は1つ目の意味、風景などを指す場合は3つ目の意味と、状況によって変化します。
「情けない」について
重ねて紛らわしくも、「情けない」と使う場合、主に1つ目と3つ目の意味を持ちますが、異なる意味も持っています。
思いやりがない、人間としての情がないことを表す「情けない」、あるいは「情け容赦ない」の場合、1つ目の意味に通じます。これはそのまま「情け、容赦が足りない」と言い換えられます。
同情の余地がない、嘆かわしいことを表す「情けない」の場合も、1つ目の意味に通じます。こちらは「情けを掛ける必要がない」と言い換えられます。
風情がない場合にも「情けない」が使われ、これは3つ目の意味に通じます。こちらは「感じ入るもの、おもむきがない」と言い換えられます。
そして「情けない」には、「見るに忍びない、惨めだ」といった意味もあります。こちらは他人に使う場合、「情けを掛けたくなるくらい、見るに忍びない」と言い換えれば、1つ目の意味に通じます。
一方で「情けない」は自分を指しても使われ、その場合は「自分が惨めだ」といった意味です。感情という部分は共通していますが、他の使い方とは大きく異なります。
「情け」を含むことわざ
「情け」を含むことわざとしては、「情けは人の為ならず」が挙げられます。
「情けは人の為ならず」について
「情けは人の為ならず」とは、「他人に情けを掛けることは、その人の為になるだけではなく、巡り巡って自分に返ってくる」という意味です。この言葉には、他人には親切にするべきという教えが込められています。
近年では「情けを掛けることは、その人の為にならない」という意味でよく使われていますが、本来は誤用です。しかしながら誤用を「時代による言葉の変化」と捉える一面もあり、使われている場面に応じ、意味を汲み取る必要があります。