「視点」とは?
「視点」という単語は、(してん)と読みます。大きく分けて以下の3つの意味を持つ言葉です。
- 視線の注がれるところ。(実際に目でものを見るとき、)目の焦点が合う場所、見ている方向のこと。
- 物事を観察し、考えたりする立場のこと。観点。
- 遠近図法において、視線(投射線)が集まる画面上の特定の一点。対象を眺める、目の位置のこと。
3の意味は専門的な分野(美術)での用語です。一般的な定義としては、1や2の意味となります。少々堅苦しい説明となっていますが、簡単に言えば、1は「どこを見ているか」であり、2は「どこから見ているか」ということです。
「視」「点」の字義
前述の3つの意味のうちで、最も使われる頻度が高いのは、2番目の意味、「物の見方」に関わる意味です。「視点」の漢字、わけても「視」の字義を知ることで、なぜこの言葉が「観点」と同じような意味をもつのかという理解が深まります。
「視」は、「しめすへん」に「見」で成り立つ漢字です。指で一点を示して見る、ということを表し、みなす、思う、という意味につながります。漠然と見るのではなく、集中して観察し、考えるという流れが浮かんでくる文字ですね。
「点」は、多義的な字ですが、「視点」の意味1においては特定の場所や位置、意味2においては、ある部分や事柄、を示します。
「視点」の使い方
1の意味、目の焦点が合う場所という意味での「視点」の使い方はシンプルです。よって、この項目では2の意味での「視点」の使い方を考えます。
「視点」は、「思考」を行う存在が主体となる言葉であることを理解しましょう。ほとんどの場合「人間」に対して用いられる言葉ですが、「思考」を伴った行動をとる高等動物についても、使うことは可能です。
比喩的な意味で用いる場合を除いて、「魚の視点」「虫の視点」には無理があります。また。人間であっても「新生児の視点」は不自然です。基本的には、「ものの見方」などの知的な考察というニュアンスで用いる言葉です。
生物以外が主体の「視点」
「視点」は、(~氏の視点)のような個人的な使い方、(若者の視点)のような集団をくくっての使い方がありますが、時には生物以外を主体として使う場合があります。
「癒しの視点をもつリゾート施設」はその一例です。リゾート施設は目をもたず、思考もしないのに「視点」をもつとは不自然です。このような場合は、必ずその主体を人間が作り上げています。つまり、間接的に「人間」が主体となっています。
「顧客ファーストの視点をもつ社訓」なども、「社訓」を設定した「人間の視点」を反映して用いられているケースです。主体が人間であれ、人間がかかわる物であれ、具体的なものを対象とすることにも留意しましょう。
「視点」の文例
- 上流家庭、しかも幼少期をパリで育った田中君の視点が、一般のそれとは異なるのは理解できる。
- 女性の視点から見て居心地のよい部屋をご提供しています。
- 環境問題は、さまざまな視点から論じられるべきである。
- A案にこだわらず、一度視点を変えて検討し直してほしい。
「視点」の類語・関連語
「観点」
「観点」(かんてん)とは、物事を考えたり、見たり、判断する際の立場を意味する言葉です。「視点」の意味2の類語で、ほぼ同じ意味をもちますが、「視点」の主体は具象が多く、「観点」は抽象的なものへの見方が多いといえます。
「哲学的観点」「道徳的観点」「平和主義の観点」など、「視点」で置き換えることも可能ですが、「観点」がより馴染む表現です。「観」が、見渡す、眺める、という字義をもつことからも、広い分野や、ものを考える立場そのものを指すと理解しましょう。
文例①:温暖化についてはグローバルな観点から論議することが不可欠だ。
文例②:この仕事には、君の偏った観点をがらりと変えて取り組んでほしい。
「見地」
「見地」(けんち)とは、物事を考え論じる場合や観察のよりどころとなる立場・観点のことです。この言葉も、「視点」意味2と似た意味の言葉として用いられます。
文例:人間の平等という見地に立つ政治がなされることを、多くの人が望んでいる。