「不要」とは?
「不要(ふよう)」とは、「必要でないこと、またそのさま」を表す名詞・形容動詞です。熟語としての成り立ちは、「要」という漢字を「不」で打ち消す形になっています。
「要」は、「ヨウ」という音読みと「い-る」「かなめ」という訓読みを持つ漢字です。以下に挙げるような意味を持ちます。
- かなめ。大切なところ。(要所、要点、重要)
- いる。入り用である。もとめる。(要求、必要)
- まとめる。あらまし。(要旨、概要)
- まちぶせする。(要撃)
「不要」という熟語の中で、「要」は2番目の「入り用である」という意味で用いられています。「入り用でない」=「必要でない」ということですね。
「不要」の使い方
「不要」という言葉を使った例文を挙げてみます。2020年のコロナ禍で、急に目にする機会が増えた言葉の1つですね。
- 家計の引き締めを図るために、家計簿をつけて不要の出費を減らすことにした。
- このような情勢下では、不要不急の外出は厳に慎むべきだ。
「不用」とは?
「不用」という単語も、「不要」と同様に名詞または形容動詞として用いられます。以下に挙げるような複数の意味を持ちますが、現代においては後半2つの意味で用いられることは極めて稀です。
- 使わないこと。必要がないこと。また、そのさま。不要。
- 役に立たないこと。また、そのさま。無用。
- 怠惰であること。
- 性質や行いが悪くて、世間で用いられないこと。
1の意味にあるように、「不用」はしばしば「不要」の同義語としても用いられる言葉です。辞書によっては、「不用」の項目を設けずに、「不要」の表記の1つとして扱っているものもあります。
「不要」と「不用」を使い分けることを意識する場合、「不用」の最も一般的な用いられ方は、2番の意味での用法です。3番目や4番目の意味で「不用」が見られるのは、主に古典作品の中においてのこととなります。
「不用」の字義
「不用」という熟語は、「用」を「不」で打ち消す構成になっています。「用」は、「ヨウ」を音読みに、「もち-いる」「はたら-き」「もっ-て」を訓読みに持つ漢字です。この漢字は、以下のような意味を持ちます。
- もちいる。使う。役立てる。(用意、使用)
- はたらき。ききめ。(作用、効用)
- しなければならない仕事。(用件、所用)
- 必要な金銭や品物。(用度、費用)
- 使いみち。使われる目的。(薬用、浴用)
- 大小便をする。(用便)
- もって。…によって。
「不用」の使い方
「不用」をという言葉を用いた例文を紹介しましょう。1~4の番号は、それぞれ前段の「不用」の意味の番号に対応しています。
- オフィスを掃除して、不用な(不要な)書類を処分することにした。
- そこまで専門的な道具をそろえても、素人には不用なものだろうに。
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心も不用になり、学問をも怠りなんず。(義経記・一より)
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余りに不用に候ひしかば、幼少より西国の方へ追ひ下して候ふが(古活字本保元・上より)
「不要」と「不用」の使い分け
意味を考えると、「不要」と「不用」はかなりの部分が重なる言葉です。前述の通り、辞書によっては「表記上の問題」と解釈されているものもあります。
とは言え、「不要不急の外出」とは書きますが、「不用不急の外出」という表記はあまりされません。また、「不要品」と「不用品」が異なったニュアンスを持つと感じる人も多いです。
両者の違いを敢えて際立たせるならば、「不要」は「余計なもの」「必要でないもの」を表す場面で、「不用」は「使わないもの」「役に立たないもの」を表す場面で多く使われると言えます。
「不要」は「使わない」、「不用」は「使えない」と表現するとわかりやすいかも知れませんね。冒頭の例文を漢字に直すなら、「不要になった椅子を不用品として大型ごみに出すことにした」が適切でしょう。