「稜線」の意味
「稜線」(りょうせん)とは、「山の峰(みね)から峰へと続く線」のことです。「尾根」(おね)とも呼びます。
山は、ひとつだけぽつんと立っていることは珍しく、多くの場合は「山脈」状の地形を形成します。それを遠くから眺めたとき、いくつかの山の頂(いただき)(=峰)が線状に連なって、空との境界線を成して見えます。これが「稜線」です。
言い換えれば、山を含めた風景を二次元的な図像として捉えたときに、山(山々)とその背景としての空との境界線が「稜線」に当たります。視点を変えて、上空から見たときの「山の背(の中心線、背骨のイメージ)」も「稜線」と呼べます。
「稜」の字について
「稜」(リョウ)の字は元は「のぎへん」ではなく「木」へんを使った「棱」という字でした。「夌」の字には「けわしい丘を苦労して登る」という意味があり、「棱」とすると、「(角木材などの)かど」を意味しました。
けわしい丘に喩えられるほどの「棱」=「かど(角)」は、「尖っていて目立った人」「(神々などの)威光」にも通じます。そして「棱」の字が「稜」に変じて、威光を感じるほどのけわしい丘のラインを「稜線」と呼ぶようになったのではないかと考えられます。
「稜」を使った熟語には、以下のようなものがあります。(「凌」や「陵」の字とも関連があります)
- 稜威(りょうい)…天子の威光。
- 稜角(りょうかく)…とがったかど。
- 稜岸(りょうがん)…態度・外見が立派でたくましい。
「稜線」の使い方
「稜線」は、多くは「山の稜線」という形で使いますが、「山のように盛り上がって、稜線を作る地形」であれば、「丘の稜線」のような使い方も可能です。
「稜線」の性質としては、基本的には緩いカーブを伴って盛り上がり、頂点へ至ってまた盛り下がっていくイメージですが、山の形は千差万別ですから、こうあらねばならないという決まった形はありません。
また、原則としては「山のような自然物のライン(を遠くの視点から捉える)」というイメージですので、人工物に「稜線」と言ったり、崖や川などの地形を「稜線」という言葉で形容する例は稀です。
独立峰でも「稜線」?
「稜線」は、辞書的意味の上では「峰から峰へと続く線」のことです。よって、峰がひとつしかないような独立峰(どくりつほう)の場合、「稜線」という言葉は適用できないのでは、考えた方もいるかもしれません。
例えば、代表的な独立峰である「富士山」はどうでしょうか。霊峰たる富士山の輪郭が空に描く美しい末広がりのラインは「稜線」とは呼べないのでしょうか。結論から言えば、独立峰でも「稜線」と呼んで差し支えありません。
捉え方にもよりますが、山の頂点付近を基準として、その周辺の輪郭が「空との境界線」であると考えれば「稜線」。「地上へ広がっていく線」と捉えれば「裾野」(すその)という言葉を当てはめればよいでしょう。
例文
- 夕日が山の向こうへと沈んでいく時、連なる山々の稜線が赤く輝いて見えた。
- 山の稜線は、時に国境線や県境として扱われる。例えばモンブランの稜線は、イタリアとフランスの国境だ。
- 稜線上に築かれた登山道からは、壮観な眺めを楽しめた。
- 敵の砲弾は、丘の稜線の向こうから弾道軌道を描いて飛んでくる。ここからでは視認できない。
- 多くの高層ビルが、空に切り立った稜線を刻んでいる。
「稜線」の関連語
「稜線」を少しクローズアップして、その詳細な地形によった呼び方をご紹介します。
「岩稜」
「稜線」のうち、岩が露出しているなどして険しく急な道を「岩稜」(がんりょう)と呼びます。登山者から見ると、「稜線」は複数の峰を踏破する際の代表的なルートであるため、ここが険しい場合には難易度の高い行程となります。
「鞍部」
「稜線」のうち、他よりも低くくぼんだ部分を「鞍部」(あんぶ)または「コル」と言います。日常的には「峠」と呼ばれることもありますが、「峠」は多義語であるため、山の部位の名称として登山者などは「鞍部」という用語を用います。
「鞍部」は、稜線のへこみを馬の鞍(くら)に見立てた名称であり、馬の背に沿うためにゆるやかにくぼんでいることが命名の由来です。