「慣用句」の意味とは?
「慣用句」とは、二つ以上の言葉がひとまとまりとなり、ある特別な意味を表すようになったものです。
たとえば、「油を売る」という慣用句は「時間をつぶしてなまける」という意味ですが、そこにはすでに本来の「油」や「売る」の意味はありません。
いわば、「油を売る」というのは一種の「たとえ」だと言えるでしょう。したがって、本来の意味や用法を正しく理解していなければ、文意がまったく伝わらなくなる危険性もあります。
「慣用」の意味とは?
では、「慣用句」の「慣用」とはどういう意味なのでしょうか。「慣用」とは、使いなれて習慣のようになっていることを指す言葉です。
たとえば、先ほどの「油を売る」の「油」を「飴(あめ)」に変えてはいけないのでしょうか。たしかに、飴に変えてもたいして意味は変わりません。しかし、民衆が使い慣れているとはとうてい言えません。
したがって、「油」を「飴」に変えることはできないのです。もちろん、何百年後かの未来には飴に変わっている可能性はゼロではありません。
「慣用句」の特徴とは?
慣用句は使いならされてきた言葉であるため、身近な動物や食品など人々に親しみのある言葉が組み合わされているのが特徴です。
中でも、体の一部を表す言葉が組み合わされていることが特に多く「歯が立たない」「腕を上げる」など枚挙に暇がありません。
逆説的に言えば、親しみのある言葉であるからこそ、慣用句としてこの時代まで生き残ることができたのではないでしょうか。
体の一部を用いた慣用句の例
- 顔が広い(=知り合いが多い)
- 目を光らせる(=よく見張る)
- 肩を落とす(=気落ちする)
- 腕が立つ(=優れた技量を持つ)
- 腰を折る(=勢いをそぐ)
いずれの慣用句も、特に意識することなく日常的に使っているものばかりだと言えそうです。
その他の慣用句の例
- 猫の額(=非常に狭いこと)
- 犬死に(=無駄死に)
- 鯖(さば)を読む(=数をごまかす)
- 峠を越す(=盛んな時期を過ぎる)
- ピリオドを打つ(=物事を終わりにする)
最後の「ピリオド」のように外来語が慣用句を構成している例があるのも、興味深い点ではないでしょうか。
「慣用句」の類語とは?
「慣用句」と似たような意味で使われていることばには、次のようなものがあります。
- 成句
- 成語
- 熟語
- イディオム(idiom)
いずれも二語以上のことばが結びついて一つの意味を表しているのが特徴です。この中でも、熟語は二つ以上の漢字を組み合わせたものを指します。
また、イディオムは英語をはじめとした外国語の学習で耳にすることの多いことばです。たとえば、"a piece of cake(=楽勝)"などが、これにあたります。
「ことわざ」「故事成語」との違いとは?
国語の時間に「慣用句」と並んで教わることも多いのが、「ことわざ」や「故事成語」です。では、これらは慣用句と何がどう異なるのでしょうか。
「ことわざ」とは?
「ことわざ」とは、教訓や生活の知恵を短く表したことばです。古くから使いならされてきたという点は、「慣用句」と似ていると言えます。
たとえば、「三人寄れば文殊(もんじゅ)の知恵」ということわざを例にとってみましょう。このことわざは、「特に頭が良くなくても三人集まって相談すれば、文殊様(=知恵をつかさどる菩薩)のような良い知恵が浮かぶ」という意味です。
つまり、一人であれやこれやと思い悩むよりも、何人か集まって相談しながら物事を進めるのがよいという教訓が、ここには含まれているのです。
「故事成語」とは?
「故事成語」とは主に中国の古典に由来するもので、他の二つと同様に古くから日本で使い慣らされてきました。「故事成句」も同じ意味のことばです。
中でも「完璧(かんぺき)」のようにすっかり日本に定着してしまい、その由来を知らずに使っているものも多数あります。
「完璧」の「璧」は「宝石」を表すことばで、「欠けたところのない宝石」が本来の意味です。このことを知らないがゆえに、「璧」を「壁(かべ)」と書き間違える人が後を絶ちません。