「損耗」の意味
「損耗」(そんもう)とは、「へること」や「へらすこと」という意味の言葉です。もともとは「そんこう」という読みでしたが、慣用的に「そんもう」と読まれるようになりました。
「損」と「耗」の字
「損」は、「そこなう」という意味が知られていますが、ここでは「へらす」という意です。「減損」(げんそん:へること)などの言葉も同じです。
一方の「耗」も、「へること」や「へってなくなること」の意です。「心神耗弱」(しんしんこうじゃく:意思能力はあるが、精神機能の障害のためその結果を認識しえないおそれがあること)の「耗」です。
以上のことから、「損耗」は、同じ「へる」という意味をふたつ重ねた言葉であるといえます。
「損耗」の使い方
「損耗」は、どちらかといえば専門用語的に使われることが多く、幅広く物が(使用や経年や消費など)必然的な作用によってへること、へっていくこと、およびその結果として、なくなること、失われることも含めて表します。
例えば、車などの動的部品が多い機械は、使い続けることで部分的にも全体的にもどうしても「損耗」していきます。また、建物など、頑丈で不動の物体なども、経年によって必ず「損耗」すると考えることができます。
また、軍隊などのように、あらゆる資源が数量的に徹底管理される業界では、戦闘などによって兵士の命が失われ、あるいは戦闘員として数えられなくなることも「兵士の損耗」や「部隊・チームの損耗が激しい」と表す場合があります。
「損耗率」について
ある物が何らかの作用の中でどれだけ「損耗」したかを率で表す指標を「損耗率」(そんもうりつ)と言います。概念そのものは難しくありませんが、業界によってはこの指標が重要なものとして扱われます。
例えば、野菜などに含まれるビタミン類は、熱処理すると成分が「損耗」します。この時、その損耗率を何パーセントかと想定することで、一日にどれだけの野菜・ビタミン類を摂取すればよいのか、具体的な量を考えやすくなるでしょう。
このように「必ず何パーセントかが損耗する」と想定される物については、その率をできるだけ正確に測定・想定することで、どれだけの物を用意すれば良いか・必要かといった点を具体化したり、物の投入量を正しく検証したりすることにつながります。
例文
- 備品はどうしても損耗していくものだから、定期的な補充とメンテナンスが欠かせない。
- 残業を強いて成果を求めるのは、社員らの長期的な心身の損耗を考えれば、得策とは言えない。
- 連続24時間、電源を入れっぱなしの性能試験を行った結果、新しいシリンダーには一切の損耗が認められず、強度の面では合格とされた。
- 古い施設を利用して学校が作られる予定だったが、思いのほか建物の損耗状態が激しく、安全上の理由から校舎は新しく新造すべしとの判断が下った。
- この戦闘機部隊は戦地にて昼も夜も繰り替し出撃し、幾度も戦闘を行ったため、終戦までに機体やパイロットの損耗率は40%にのぼった。
「損耗」と似た言葉
摩耗
ある物が「すり減ること」を「摩耗」(まもう)と言います。「摩擦」(まさつ)の「摩」ですから、ある面が他の面で擦られることで減っていく様子をイメージすれば良いでしょう。
「損耗」との違いは「擦る」意の有無です。他の物とこすったり、触れ合ったりすることが重なって「へっていく」場合には「摩耗」でも良いでしょう。
消耗
「消耗」(しょうもう)も「損耗」と似た言葉ですが、「消耗」は「使ってへらす」または「使い果たす」という意であり、「使う、消費する」という意に重点が置かれています。
「損耗」も「使ってへらす」意に使えますが、「消耗」はより狭い、具体化した意味で使えると捉えれば良いでしょう。