「慟哭」の読み方
「慟哭」という言葉を初めて見たとき、正しく読めましたか?「慟哭」は「どうこく」と読みます。アクセントは後半の「こく」にあります。
「慟哭」の意味
「慟哭」の意味は悲しみのあまり声を上げて泣くことです。ここでいう悲しみとは一般的な悲しみや痛みではなく、肉親や配偶者、友人などの「死」に対する悲しみを指します。死別以外の事柄に使われることはあまりありません。
「慟」の字は心や感情を司るりっしんべんに「動く」と書きます。あまりの悲しみゆえに心と体が震える様子や、身を震わせるほど強く悲しんでいることを表します。「慟哭」以外では「慟泣(どうきゅう)」という言葉があります。
「哭」の字は「口」が2つに「犬」が加えられた字です。「犬」は人の死に対しささげられた生贄です。2つの「口」は複数の人を表します。合わせると多くの人が大声で泣いている意味になります。「卒哭忌(そっこくき)」や「鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう)」などに使われます。
「慟哭」の使い方
「慟哭」は重複表現や誤用の多い言葉です。使う際には以下の3点に気を付けるとよいでしょう。
- (特に死別による)悲しみを理由に泣いている。
- 泣く、悲しいなどの単語はいらない(重複表現になる)。
- 大声、あるいは震えや動きを伴う。
例文
- 父の訃報に接して慟哭する。
- 夫の亡骸に縋り付いて慟哭した彼女の姿が目に焼き付いて離れない。
- 慟哭する声に、彼がどれだけ愛されていたのかと偲ばれる。
NG例
- 敬愛する職人と会えたうれしさのあまり、彼は慟哭した。
- 友人をなくした悲しみから、慟哭するように泣いた。
- 声も上げず、身じろぎもせず、静かに慟哭する。
「慟哭」は悲しみから声を上げて泣く様子を表す言葉です。そのため、1のようにうれしさや喜びから泣く様子には使えません。この場合は「号泣する」や「涙する」が妥当でしょう。
また、2は文中に「悲しみ」や「泣いた」とあるので重複表現となっています。より正しくは「悲しみから泣いた」となります。
最後に3ですが、「慟哭」は声を出さず、かつ動きもない落涙にはあまり使われません。こちらも「涙を流す」が適切です。
「慟哭」の類義語
号泣
「慟哭」に似た言葉に「号泣」があります。「号泣」は大声で泣くという意味です。「慟哭」との違いは、喜びやうれしさなど悲しみ以外の感情にも使うことができるという点です。また、体の動きや震えとも無関係です。震えていてもいなくても構いません。
「号」の字は大きな声を、「泣」の字は涙を流すという意味をそれぞれ表します。ただ、大きな声で泣いていることだけを表す言葉です。
落涙
ただ涙を流している様子であれば「落涙(らくるい)」という表現もできます。文字通り涙を流している、あるいは流れていく涙という意味です。
「慟哭」の英語表現
wail
「慟哭」に近い意味の英単語に「wail」があります。「wail」は悲しみや痛みから嘆き悲しむという意味です。
必ずしも死別によるものではなく、もっと日常的な悲しみにも使われます。「wail」には他にも、大声で泣く、甲高い声で泣く、不満を口にするといった意味もあります。
lament
「慟哭」の英訳にはもう一つ、「lament」という単語もあります。こちらは強い悲しみや落胆を表現する単語です。日本語では嘆く、悼む、残念に感じると訳されます。
「wail」と同じく、こちらにも不満を述べるという意味があります。「lament」は「wail」よりもフォーマルな単語です。