「叱責」とは
「叱責(しっせき)」とは、人の過失や不正な行為を叱って、咎(とが)めることです。「叱責」は、以下で見る漢字の字義からもわかるように、同じ意味の言葉を重ねることで、かなり厳しいニュアンスを含んだ言葉と言えます。
「叱」の字義
「叱」の原字は、右側の片仮名の「ヒ」に似た部分が漢字の「七」になっている「𠮟」で、辞書の多くは「𠮟」が使われています。
しかし、常用漢字表の説明で、《「𠮟」と「叱」は本来別字とされるが、その使用実態から見て、異体の関係にある同字と認めることができる》とされていることから、「叱」が一般的に使われていることがわかります。
「𠮟」の「七」は「切」の原字で、縦横に切ることを表す「十」の象形です。そこから「𠮟」は、口(=言葉)で切るというイメージから、とがめる、せめる、しかるという意味を表しています。
「責」の字義
「責」の上の「主」に似た部分は、先のとがったとげや針を表す象形「朿(し)」の変化した形です。下の部分の「貝」は、貨幣を表します。
また、「責」の原字と言われている「債」には、負債(借金)のことで人を責めるという意味があり、そこから、「責」にせめる、とがめるという意味が生じています。
「叱責」の使い方
「叱責」は、叱る行為を表す言葉ですから、会話で使うことはほとんどなく、叱った様子を文章で表すときなどに使います。会話の場合は、第三者の立場にある人が、「○○さんが、上司に叱責されていた」というような使い方をします。
「叱責」するのは目上の人間や上位の立場にある人間です。目下や下位の人間が上の人間に対して「叱責」を使うことはなく、同格の者同士で使うこともまずありません。
また、上司と部下、先生と生徒、親子関係というような一定の責任関係がある場合に「叱責」を使うことが多いのですが、例えば、たまたま道で吸殻を捨てた人に対して厳しく注意するような場合も、注意の仕方によっては「叱責」と表現することもできます。
例文
- 新商品に対するインターネットの口コミ評価が低かったことで、担当者が上司から厳しく叱責されていた。
- 公式戦でエラーした選手を監督が大声で叱責している様子がテレビに映っていた。
- 講義中にスマホで通話している学生を教授が叱責した。
- 深夜に帰宅した姉を叱責する父の声が階下から響いていた。
「叱責」の類語
「譴責」
「譴責(けんせき)」は、失敗や不正などを厳しく咎めることです。「譴」には、とがめる、せめるという意味があります。「譴責」は、一般的に使われている言葉ではありませんが、労使関係における懲戒処分の一つに「譴責処分」があります。
「譴責処分」は、労働者に始末書を提出させて、不正行為や違法行為などに対する謝罪と反省を求めるものですが、懲戒処分の中では二番目に軽い処分です。
【例文】
- 遅刻を繰り返して、上司から厳しく譴責を受けた。
- 職務上知りえた事柄を軽々しく酒の席で口にした職員を譴責処分にすることが決まった。
「叱咤」
「叱咤(しった)」は、大声で叱ることです。また、全く反対の大声で激励するという意味もあります。後者の意味では「叱咤激励」という四字熟語がよく使われます。「叱」も「咤」も、声を上げて叱るという意味があり、互いに強調しあっている言葉です。
【例文】
- バイト中、裏口でさぼっていたら店長に見つかり、厳しく叱咤された。
- チームのモチベーションが下がっていると監督がメンバーを集めて叱咤した。
「大目玉」
「大目玉(おおめだま)」も、厳しく叱るという意味の言葉です。「大目玉を食う」という慣用句で知っている人も多いのではないでしょうか。人が激しく怒ると目の玉をむき出すような顔になるところから例えた慣用句です。
【例文】
- ノーアウト満塁のチャンスで三者連続三振に終わったため、選手たちは監督の大目玉を食らった。
- 門限を過ぎてからこっそり寮に忍び込んだ寮生を捕まえて、大目玉を食らわせた。