「危惧」とは
「危惧(きぐ)」とは、先々のことを不安に思って心配したり、おそれたり、疑ったりすることを意味します。つまり、冒頭の「絶滅危惧種」は、将来、絶滅するおそれがあることを懸念される種ということです。
「危」には、危険・危機・危害などの熟語があり、あぶないとかおそれるなど意味が比較的分かりやすい漢字です。しかし、「惧」は、ちょっとわかりにくい漢字ですから、次の項では、それぞれの字義をご紹介します。
「危」の字義
「危」は、音読み「キ」、訓読み「あぶ-ない。あや-うい。あや-ぶむ」と読みます。「危」は、崖を表す「厂」の上下に人のしゃがんだ姿の象形を加えたもので、危険な崖の淵で人がしゃがみこんでいるさまを表しています。
そこから、「危」は、あぶない・あやうい・あやぶむ・おそれる・あやうくする・そこなうといった意味を持っています。
「惧」の字義
「惧」は、音読み「ク」、訓読み「おそ-れる」と読みます。「惧」は、「懼(ク)」の略字で、二つの目と「隹(とり)」を合わせた「瞿」で、鳥が目をきょろきょろさせるさまを表しています。
この「瞿」に、心を表す「忄(りっしんべん)」をつけて「懼」となり、おどおどした目つきで不安な気持ちを表す漢字が生まれました。「危懼(きく)」を辞書で調べると、「危惧」と同じとか、「危惧」の漢語的表現といった説明がされています。
「危惧」の使い方
「危惧」の対義語:「安堵」
「安堵(あんど)」には、三つの意味がありますが、1の意味で「安堵」が「危惧」の対義語となります。
- 心配していることがなくなって、安心すること。
- 囲いや塀の中で安心して暮らすこと。
- 中世の武家社会で、幕府や領主が武家や寺社の領地の所有権などを保証や承認すること。
「危惧」される不安や恐れ、あるいは疑念などが取り除かれて、ほっと安心することを「安堵する」と言います。
【例文】
- メールが既読にならなくて心配していたが、娘から返信が来てやっと安堵した。
- 逆転して安堵したのも束の間、すぐにひっくり返されて、またピンチに陥った。
「危惧」の類語
「懸念」
「懸念(けねん)」は、何か気がかりなことがあって不安や心配に思うことです。「危惧される」「危惧を覚える」という表現を「懸念される」「懸念を覚える」と言い換えることができ、「危惧」の類語と言えます。
また、「懸念」には、一つのことに集中する・とらわれるという意味の仏教用語として執念や執着(しゅうじゃく)という意味もあります。
【例文】
「憂慮」
「憂慮(ゆうりょ)」は、物事の先行きをあれこれ考え、思い悩むことです。「危惧」は、漠然とした不安や疑念などを含みますが、「憂慮」は、具体的な物事が深刻な状態になることを心配し、強い危機感を抱いている場合に使われます。
【例文】
- 乱開発や二酸化炭素の増加による温暖化の進行が進み、憂慮される事態になっている。
- 不況で会社が倒産し、再就職もままならない事態を憂慮して、昔の上司が仕事を斡旋してくれた。