「不安」の意味
「不安」(ふあん)とは、「安心できないこと。気がかりなさま。心配」という意味の言葉です。「安」の字は「家の中に女がすわっているさま」を表し、ここから「静かにとどまる」「やすらか」などの意味を表します。「安全」「安定」などの熟語でおなじみですね。
その「安」が「不」で打ち消されているわけですから、「不安」は、家に落ち着いていられないほどの忙(せわ)しなさや、家にいても静かに座っていられないほどの心の動揺を表すと解釈できますね。
「不安」の使い方
「不安」は、生命の危険に関する大きな危機感から、明日雨が降るかもしれないといった日常的な心配事まで、幅広く当てはめて使うことができます。
多くの「不安」には原因があり、それを取り除くことで「不安の解消」=「安心」を目指せると言えます。しかし逆に言えば、それが簡単にはいかないからこそ人は「不安」になるとも言えるでしょう。
「不安」の原因の客観的な評価はどうあれ、その心情そのものを制御することは容易ではありません。「不安」な気持ちが高じれば、不安障害やうつ病といった精神障害を抱えてしまうこともあるかもしれません。
例文
- 台風がきて大雨警報が鳴り響く中、一家は不安な夜を過ごした。
- 繊細な彼は、いつか親友に愛想をつかされるのではないかという不安を抱えていた。
- 若いうちにある程度お金を稼いでおかないと、老後が不安だ。
- 人生のすべてが順調でも、形のない、言葉にできない不安に襲われることがある。
「不安」の類語
「不安」の類語としては、これまで解説に使ってきた「心配」「気がかり(気掛かり/気懸かり)」がもっともメジャーであり、また一般に浸透していて使いやすいでしょう。
そのほかには、「心がかり」「気遣(きづか)わしい」「心もとない(心許ない)」「憂(うれ)わしい」「心細い」「頼りない」「はらはら」といった言葉が「不安」の類語足りえます。
もし、「不安で気持ちが落ち着かない様子」や「不安による恐怖」も「不安」のうちに含めるとすれば、「もどかしい」「じれったい」「怖い」「恐ろしい」「気味が悪い」「どきどき」なども類語として使用できるでしょう。
「不安」を感じるしくみ
「不安」は生きるための「予測」
人が「不安」を感じるのはなぜでしょうか?一説には、「不安」は「未来で起こりうる悪い出来事に対する拒否のシグナル」であると考えられています。
人間をはじめとして生物の至上命題は「生きる」ことです。生きるためには、自分にとって脅威となるもの(例えば、捕食者など)を「恐怖」や「嫌悪」によって遠ざけることが重要な戦略です。ここまでは多くの動物も持っている本能です。
人間の発達した脳は、これに加えて「この先ありえるかもしれない可能性としての脅威」を予測できるようになりました。「あの藪(やぶ)に入ったら、捕食者に食べられてしまうかもしれない」…と予測して心がざわつく、これが「不安」の正体です。
「不安」は今ここにはない「恐怖」
「不安」は、いわば未来に起こり得るかもしれない「恐怖」への備えであり、「生きる」状態をできるだけ長く安定的に存続させるために備わった脳のシグナルと言えます。
その一方、「不安」は、未だ起こっていない(起こるかどうかわからない)脅威に基づく心情ですから、未来が完全には予測できない以上、本来その必要はないのにいたずらに心を痛めて振り回されるだけ、という側面もないわけではありません。
不明確・不確実な脅威に基づく「不安」は、絶えず漠然とした「不安」を読み込み、現実とは無関係に、心の中だけでその気持ちが増大してしまうようなことも起こり得るのです。
「不安」との付き合い方
上手な付き合い方の一例は、現実の「いま・ここ」の自分を見つめなおし、その地点から予測して対処できる脅威と、予測してもどうにもならない脅威(「明日、地球が崩壊するかも」など)に分けて、後者への対応を後回しにすることです。
準備できることは準備する。考えてもどうにもならないことはあとで考える。単純なようですが、現時点からひとつひとつ予測を現実と突き合わせていくことが、「不安」とうまく付き合う上でのポイントです。