「漠然」とは?
例えば、将来に何をしたいのか、どういう自分でありたいのかなどと考える時など、ふとした瞬間に、「今何やっているんだろう」「このままで大丈夫なのだろうか」と『漠然とした不安』に襲われたことはないでしょうか?
「漠然とした不安」というのは、明確な不安ではなく、ふわっと湧き上がって来るようなもののことをいいます。
「漠然」とは、①「ぼんやりとしてはっきりしない様子」、②「気持ちや考えが、取り留めのない様子」、③「広く果てしない様子」という意味を持つ言葉です。
「漠然」:①ぼんやりとしてはっきりしない様子
「漠然」は「ぼんやりとはっきりしない様子」を表します。漢字を見ていくとその意味がイメージできるでしょう。
「漠」という字は、元々、水のない「砂漠」という意味です。その様子から広く果てしないという意味を表すようになりました。
砂漠のような広く果てしない空間をイメージすれば、ぼんやりとしたはっきりしないような、つかみ所のない感覚が捉えられるのではないでしょうか?
「漠然」のぼんやりとはっきりしない様子は、そのような感覚です。なんとなくぼんやりと考えることを「漠然と考える」といいます。
例文
- 漠然と生き方を考えているだけでは、何も変わらない。
- 彼の夢は漠然とした夢ばかりで、不安だ。
- 胸に漠然とした虚しさが押し寄せた。
「漠然」:②考え・気持ちが取り留めのない様子
「漠然」には 「考え・気持ちが取り留めのない様子」という意味もあります。「取り留め」とは要点やまとまりを指すので、「取り留めのない」は「はっきりとした要点がない」「目的がない」という意味です。
つまり、ここでの「漠然」は、具体性がないことを表していますから、「筋の通らない」「まとまりのない」「要領を得ない」など言い換えることもできるでしょう。
例えば、話がまとまっていない人の話し方について「漠然とした話で筋がとらえにくい」などと表現します。
①の意味と、この意味は大きくかけ離れてはいないので、文章によっては、意味がどちらとも取れるようなこともあります。
例文
- その質問は漠然としていて、答えようがありません。
- 彼の話は漠然としすぎていて、内容が頭に入ってこなかった。
- 誰も詳細を把握しておらず、漠然とした報告しか上がってこない。
「漠然」:③広く果てしない様子
「漠然」は、「砂漠」のイメージからもわかるように、「広く果てしない様子」を表すこともあります。
例えば「漠然たる平野」といえば、果てしなく広がる平野のことを表します。見渡す限りの平地が広がっているような情景が目に浮かびますよね。
この意味の「漠然」は、①②の意味に比べると日常会話などで出てくる頻度は、グッと下がります。書き言葉として、小説などに出てくる場合の方が多いでしょう。
例文
- 漠然たる大地の美しさに感動した。
- まるで、漠然とした宇宙空間に放り出された気分だった。
「漠然」と「曖昧」の違い
「漠然」に似た言葉として「曖昧(あいまい)」という言葉があります。「曖昧」は、「はっきりしないこと」「確かでないこと」「ぼやけていること」という意味。「曖昧な態度」「曖昧な内容」などのように用いられます。
はっきりしないという点では、かなり「漠然」の意味①②に似通っていますが、若干ニュアンスが異なります。次の例で二つの言葉を比べてみましょう。
「漠然とした返答」と「曖昧な返答」
例えば、「この作業の担当者は誰なんだ?」という問いがあったとしましょう。
【漠然とした返答】
「いや、決まってはいるはずですなんですけどね…作業自体は進んでいます。多分、Aさんあたりがうまくやってくれてるのかな」といった具合に、話がぼんやりとしてまとまっておらず、何が言いたいのか分からないような答えのことです。
【曖昧な返答】
「うーん、Aさんかもしれないし、Bさんかもしれませんけど…」のように、答えが行ったり来たりしていて、信憑性のない印象があります。