「所為」とは
「所為(しょい/せい)」とは、次のような意味がある名詞です。当て字で「所意(しょい)」と書く場合もあります。
「所為」は、漢文に由来し、「為せる所=したこと」から、しわざ、態度といった意味で使われるようになりました。漢文由来なので元は「しょい」と読まれていましたが、やがて、「せい」と読むようになり、現代ではもっぱら「せい」と読むのが一般的です。
「所為」の使い方
1の意味の「所為」
1の意味では、人の態度や行為について使われますので、行為する主体を表す言葉(主に「人」)が「所為」の前に置かれます。しかし、「所為(しょい)」自体、最近はあまり使われることがありません。
【例文】
2の意味の「所為」
2の意味では、「誰かの所為(せい)で」「なにかの所為(せい)で」と言った表現で、理由や原因をいう場合に使われています。この使い方の場合は、ひらがな表記することが一般的です。
【例文】
- 寝ぼけていた所為(せい)で、目覚ましアラームとインターフォンの音を聞き違えた。
- アクセルとブレーキを踏み間違えた所為(せい)で、家のガレージを壊してしまった。
- 電車が遅れた所為(せい)で、遅刻した。
- 台風の暴風の所為(せい)で、街路樹が倒れてしまった。
3の意味の「所為」
法律用語の「所為」の1例を挙げると、明治15年に施行された旧刑法の「所為」があります。同刑法では、24か所に「所為」という言葉が使われています。
例えば、旧刑法77条1項には「罪ヲ犯ス意ナキノ所為ハ其罪ヲ論セスーーー以下省略---」とあり、それを引き継いだ現行刑法38条1項では「罪を犯す意思がない行為は、罰しない--以下省略---」と規定されています。つまり、「行為」のことを「所為」と言っていたわけです。
そして、「所為=行為」は、作為と不作為の両方を含みます。法律上の作為は、積極的な行為、不作為は、するべきことをしないことです。具体的には、殺人・窃盗などが作為で、乳児に授乳しないで餓死させるような場合が不作為です。これらは、いずれも犯罪行為となります。
「所為」の類語
「振る舞い」
「振る舞い(ふるまい)」は、人の動作や態度のことで、「所為」の1の意味の類語です。ほかに、もてなしや接待という意味もあります。
【例文】
「挙動」
「挙動(きょどう)」も、人の動作や行為、様子などのことです。「振る舞い」と同じ意味とも言えますが、「挙動不審」などというように、いい意味で使われることはあまりありません。「挙動」も「所為」の1の意味の類語と言えるでしょう。
【例文】
- 閑静な住宅街に見知らぬ挙動不審の男がうろついていると警察に通報があった。
- 最近、夫の挙動がおかしいので、探偵を雇って調べてもらった。
「所以」
「所以(ゆえん)」は、理由、わけ、根拠、いわれという意味です。「所以」は、「以て○○する所」と読み下すところを、「○○するゆゑん」という読み方が慣習化し、そこから「ゆえん」になったと言われています。
中国語の辞書を見ると「所以」は、ゆえに、だからと説明されています。ここからも上記「所以」の意味とほぼ同じことが分かります。これらのことから「所以」は、2の意味の類語と言えます。
【例文】
- 値切って粗悪な材料を使ったことが、地震でこの家が倒壊した所以です。
- 彼が周りから嫌われる所以は、あの横暴さにある。
「わけ」
「わけ(訳)」には、物事の道理や事情、理由、意味、経緯(いきさつ)といった意味があります。事情や経緯という意味では、「訳あり」などという言葉をよく見聞きするのではないでしょうか。「わけ」も「所為」の2の意味の類語と言えるでしょう。
【例文】