「事情」とは
「事情(じじょう)」とは、物事がある状態になった理由や原因、それまでの細かい経緯のことです。物事にはすべて「事情」があるといっても過言ではありませんから、「事情」は、とても幅広い言葉ということができます。
「事情」の使い方
「事情」は、物事の原因や経緯、理由、あるいは現在の状況などについて詳細を伝えることなく、一言「事情」という言葉で済ませることができる場合も多いため、いろいろな物事に使うことができます。
新聞やニュースなどで、交通事情、住宅事情、食料事情などはよく見聞きしますし、個人の問題などでは、家庭の事情や個人的な事情などと使います。その他、諸般の事情、相手の事情などもあり、「事情」の対象となっている物事を前につけて使います。
「事情通(じじょうつう)」という言葉もあります。事情に通じているという意味ですが、内部事情や裏事情のように、人に知られていない詳しい事情を知っている人のことを「事情通」または「消息通」と言います。
「例文」
- 不祥事の謝罪会見で、責任者が事情を説明している映像がネットで流れていた。
- 前評判の高かった新製品の発売がやむを得ない事情で延期になったらしい。
- 今後の会合は、先方の事情で前倒しすることになった。
- 彼女は成績優秀だったが、家庭の事情で進学せず、就職することになった。
- Aさんは、社内の事情通だから、わからないことがあったらなんでも聞いてみるといい。
「事情」の類語
「理由」
「理由」には、以下の三つの意味があります。
- 物事がそのようになったすじ道。そのように判断したり、扱った根拠。
- 言い訳。口実。
- (哲学用語)論理的理由を「前提」、実在的理由を「原因」と呼ぶ。
いずれの意味でも「事情」の類語ですが、理由も含めたその時の状況を説明するような場合でも、「住宅事情」のように「住宅理由」といった使い方はできません。
【例文】
- 土地価格と建築資材の高騰を理由に新築住宅の受注が落ち込んでいる。
- 彼は、何かと理由をつけて仕事をさぼろうとしている。
「経緯」
「経緯(けいい/いきさつ)」は、織物のたて糸とよこ糸、あるいは、地球の緯度と経度のことですが、それが転じて、物事の入り組んだ内容や経過、いきさつといったことを意味しています。
ただし、「経緯」は、あくまで経過なので、「事情」や「理由」のような原因といった意味で使われることはありません。
【例文】
- 九州出身の僕が、北海道で酪農を営むようになった経緯を話すと、朝までかかるよ。
- この町が長く発展してきた歴史的経緯はこの本に詳しく書かれている。
「顚末/顛末」
「顚末/顛末(てんまつ)」は、物事の初めから終わりまでの成り行き、一部始終という意味です。「顚/顛」という字には、①いただき、てっぺん、②はじまり、はじめ、③たおれる、ころぶという意味があります。
②の意味と「末」で上記のような「顚末/顛末」の意味となります。なお、③の意味では「転倒」のように「転」に置き換えられることもあります。
【例文】
- 契約直前でキャンセルなんて一体どういうことだ。事の顚末をちゃんと説明してくれ。
- 今度、私がキャリアを捨てて独立し、現在の成功までの顚末を書いた本を出版することになりました。
「事情判決」とは
裁判所の判決の一つに「事情判決」というものがあります。これは行政処分の取り消しを求める裁判で、その処分が違法ではあるが、あらゆる事情を考慮して、「その処分を取り消すことが公共の利益を著しく損なう」と裁判所が判断した場合に請求を棄却できるというものです。
これは、行政事件訴訟法31条1項に規定されていますが、この規定が適用された事例の一つに、2012年の衆議院選挙における「一票の格差」訴訟で、「格差は違憲状態だが、選挙は有効」と最高裁判所が判断したものがあります。
判決には詳細な事情が述べられていますが、総括的に「あらゆる事情」と一言で括るような使い方がここにも表れています。