「所以」とは?意味や使い方をご紹介

「人の人たる所以は、人と人との結合にある」などというときの「所以」をどう読むかご存知ですか?これで「ゆえん」と読みます。「由縁」と同じ読み方ですね。今回は「所以」の意味や使い方について、「由縁」との違いなども含めて解説します。

目次

  1. 「所以」とは
  2. 「所以」の使い方
  3. 「所以」と「由縁」
  4. 「所以」の類語

「所以」とは

「所以」の意味

「所以(ゆえん/ゆゑん)」は、「いわれ」「わけ」「理由」を意味する言葉です。また、現代ではほとんど用いられないようですが、「あることを行うやり方」「方法」という意味もあります。

「所以」の由来

「所以」を「ゆえん」と読むのは、漢文の訓読に由来しており、これには二通りの説があります。

ひとつは、「ゆえになり」→「ゆえんなり」→「ゆえん」のように、撥音便化したところから生じたとする説。

もうひとつは、「ゆえなり」→「ゆえんなり」→「ゆえん」のように、撥音が加わったところから生じたという説です。

「所以」の使い方

「所以」は、「○○の所以」のように行動などを指す名詞と組み合わせて「○○の理由」を表したり、「〜する(される)所以」のように動詞と組み合わせて「〜する(される)わけ」を表すのに用いられます。

また「△△たる所以」とすると堅い言い回しとなり、芝居がかった演出、派手に強調するニュアンスが生まれます。

「所以」を使った例文

  • この基金設立の所以は、彼が愛娘を難病で失ったことだ。
  • 彼が一流と言われる所以は、常に研究を怠たらないことにある。
  • 彼の王たる所以は、その勇猛さにあった。

「所以」の用例:ギールケの言葉

人の人たる所以は、人と人との結合にある。

ードイツの法学者オット・フォン・ギールケの言葉ー

ギールケが『ドイツ団体法論』の中で述べた言葉で、引用される文脈によって、「人と結びつきによって、人は人として生きていける」「人は一人で生きていくことはできず、社会の中で生きていかざるを得ない」などと解釈されます。

「所以」の用例:『煙管』/芥川龍之介

彼はそう云う煙管を日常口にし得る彼自身の勢力が、他の諸侯に比して、優越な所以を悦んだのである。

ー芥川龍之介『煙管』よりー

『煙管』は、金沢城の城主・前田斉広が持つ金無垢の煙管にまつわる物語。その煙管は皆の羨望の的でしたが、斉広は煙管自体には興味が薄く、煙管が象徴する名声や富、権力を自慢にしていたのです。

引用中の「優越な所以(勝っている理由)」とは「加賀百万石」を指しています。

「所以」の用例:『剣の四君子 高橋泥舟』/吉川英治

唯、そんな家庭にも絶えずな(さかんな)物音がある所以は、元気な男の子二人のためだった。

ー吉川英治『剣の四君子 高橋泥舟』よりー

高橋泥舟は幕末の鎗の達人で、山岡鉄舟の義兄でもあります。引用は、泥舟の子供時代を描いた箇所。

旗本といえども庭の手入れや障子の張替えもままならぬ貧しい家でしたが、そんな中にあっても、紀一郎・謙三郎(泥舟の幼名)が活気をもたらしていた様子を表しています。

「所以」と「由縁」

「由縁(ゆえん)」は「関係・因縁・ゆかり」という意味ですが、「由来・わけ・由緒」という意味もあります。後者の意味は、「由縁」が「所以」と同音であるところから転じたともいわれています。

「所以」には「理由」という意味しかありませんが、由縁」には「理由」という意味のほかに「関係」という意味もあるという点で異なっています。

次の2つの例文を、所以や由縁で言い換えることができるか見てみましょう。

例文①理由

「宿題で地元の神社建立の理由を調べることになった。」

  • ○所以:宿題で地元の神社建立の所以を調べることになった。
  • ○由縁:宿題で地元の神社建立の由縁を調べることになった。

所以にも由縁にも理由という意味がありますから、どちらでも言い換えることができます。

例文②関係

「彼とはなんの関係もない他人同士だ。」

  • ×所以
  • ○由縁:彼とはなんの由縁もない他人同士だ。

所以には関係という意味はないので、言い換えることはできません。

「所以」の類語

「根拠」

「根拠(こんきょ)」には、「判断などを成り立たせるよりどころ」「行動などの正当性を支える事実」という意味と、「重要な拠点・根城(ねじろ)」という意味があります。前者の意味は「所以」に近いといえます。

「故(ゆえ)」

「故(ゆえ/ゆゑ)」にはたくさんの意味がありますが、「理由」や「原因」という意味においては、「所以」を言い換える言葉として用いることができます。

「故」が持つ他の意味には、「由緒・来歴」「趣・風情」「縁故・ゆかり」「故障・事故」などがあり、また、「若さ故の過ち」のように用いられることもあります。


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