「役に立つ」とは
「役に立つ(やくにたつ)」とは、知識や教養、あるいは、道具や手段・方法などが、物事の用をなすのに適していて、その用を果たすだけの能力や値打ちがある、使える、間に合うといった意味の慣用句です。
「役に立つ」は、よく使われる慣用句ですが、以下の「役」と「立つ」の字義から、上記の意味がなるほどと思えるのではないでしょうか。
「役」の字義
「役」の、「彳(ぎょうにんべん)」は、中国最古の漢字字書『説文解字』によると、十字路の象形「行」の左半分を用いたもので、遠くに行くことを表しています。
一方、「殳」は、手で杖、あるいは、武器のほこ(矛)を持ったさまを表す象形です。この「彳」と「殳」で成り立つ「役」は、武器を持って遠くへ行く、へき地を守るために出かけるということを表すと言われています。
このような成り立ちから、「役」は、いくさ(戦)、つかう、つかわれる、労役、仕事、つとめ、役職などの意味を持つようになりました。
「立つ」とは
「立」は、地面の上に人がまっすぐに立っているさまの象形で、両手両足をそろえて安定していることも表しています。そこから、「立つ」にはたくさんの意味が生まれ、幅広く使われています。
具体的には、席を立つ・腹が立つ・煙が立つ・噂が立つ・目処が立つ・霜柱が立つ・人の上に立つ・顔が立つなど、たくさんあります。
「役に立つ」の「立つ」は、ある物事の目的を達成するように、いい結果に導いたりするような意味を表す場合の用法です。「顔が立つ」や「言い訳が立つ」なども同じです。
「役に立つ」の使い方
上記のように「役に立つ」は、仕事や役割を始めとして様々な物事のいい結果を出したり、目的を果たすために使う値打ちや能力がある、つまり、使える・使えないといったことを表す場合に使います。
【例文】
「役に立つ」の類語
「有用」
「有用(ゆうよう)」は、目的を果たす能力がある、使える、つまり、「役に立つ」と同義と言ってもいい言葉です。「役に立つ」と比べるとややかたい感じがします。
【例文】
- 自動運転技術は交通事故の軽減という観点から非常に有用な技術だ。
- あの会社は、学歴にこだわらない有用な人材を積極的に採用している。
「便利」
「便利(べんり)」は、目的などを果たすのに具合がいいことです。物の性能や使い勝手、状態などが都合の良い時に使い、「役に立つ」の類語と言うことができます。また、道具ではありませんが、便利屋という役に立つ職業もありますね。
【例文】
- 昔の便利な家電の代表は、テレビ・洗濯機・冷蔵庫(三種の神器)だったが、最近では、ロボット掃除機・全自動洗濯乾燥機・食器洗い機(新・三種の神器)らしい。
- 我が家は徒歩圏に、商店街・学校・病院・役所・電車の駅があり、生活に便利な立地にある。
「重宝」
「実用的」
「実用的(じつようてき)」は、実際の用に適しているということ、つまり、役に立つことです。洗練されたデザインで多機能でも、あまり使わない機能があったり、デザインが逆に使い勝手を悪くしているものもあります。
そのような商品や道具に対して、シンプルなデザインや少ない機能でも、目的とすることに十分役に立つものを、「実用的」と言います。
【例文】
- このエコバッグは、丈夫で広げると大きいが、畳むとコンパクトでポシェットにも入る実用的なものだ。
- 僕の研究テーマは実用的でないとして、来年度研究費が削られることになった。