「人後に落ちない」とは?
「人後に落ちない」は(じんごにおちない)と読みます。人のうしろに落ちない、として考えてみると、だいたいの意味が推察できるのではないでしょうか。
誰かが人のうしろに落ちない状態とは、他人よりも後ろにならない、前には誰もいないということですね。すなわち「人後に落ちない」は、他者に先を越されない、他者に負けない、引けを取らない、という意味です。
他者と比較しても劣らないということを遠回しに表現しているわけですね。「人後に落ちることはない」も意味は同じです。なお、他者に劣ることを「人後に落ちる」とは言いません。
「人後に落ちない」の由来
「人後に落ちない」はどこから生まれた言葉でしょう。出典は、中国の唐の著名な詩人、李白による詩の一文です。
すでに詩の才を花開かせていた李白は、冤罪によって地方への流刑に処されました。その身の辛さを詠った詩の中の、「気岸遥凌豪士前 風流肯落他人後」という部分に「人後に落ちない」が含まれています。
この一文は、「心意気はさかんで勇ましい豪士を遥かにしのぎ、風流のたしなみも他人の後に落ちることはないのに」という意味です。ここから、「人後に落ちない」は他者をしのぐという意味で使われるようになりました。
「人後に落ちない」の使い方
一般的に、日本人は自分を人前でアピールするのが苦手と言われています。「自分が一番だ。誰にも引けを取らない」と言うよりは、「人後に落ちない」という婉曲表現の方が使いやすいかもしれませんね。
使うときには、「文学の素養にかけては人後に落ちない」「人後に落ちない美食家」のように、比較する分野を挙げるようにします。
「人後に落ちない」の例文
- 美しく花を飾ることにかけては人後に落ちないつもりだ。
- 部下のモチベーションを高める指導において、課長は人後に落ちない。
- なにかひとつだけでも「人後に落ちない」と言い切れるものを持ちたいものだ。
「人後に落ちない」の類語
無双
「無双」(むそう・ぶそう)は読み方が二つありますが、多くの場合、(むそう)と読みます。複数の意味を持ちますが、「人後に落ちない」に類するのは、並ぶ人がないくらい優れていることです。「天下無双」ならば、天下に並ぶものがいないほど優れていることを表します。
最近では、「無双」はネット用語や若者言葉としてもよく登場します。誰かがなにかできわめて強い力を発揮したときに、その人の名前と合わせて「○○無双」「○○の無双状態」のように使います。
【例文】
- 彼は部員の中でも無双の大食いだ。
- (多人数の対戦型ゲームなどで、高得点を出している鈴木さんに対して)今回の対戦は鈴木無双だな。
- ことビリヤードとなると、彼女はまったくの無双状態だよね。
「右に出る者はいない」
「右に出る者はいない/右に出る者はない」は、実力においてその人より優れた人がいないことを表す言い回しです。
なぜ左ではなくて右なのかといえば、古代中国のある時代において、皇帝など立場が上の人から見て右側が上席だったからです。その人が一番右側にいるということは、その人が一番だということになりますね。
ちなみに、降格を表す「左遷」という言葉がありますが、これは、上席から左の席への移動が「降格」を意味することに由来します。
【例文】
- ここ半年以上、営業部の契約数は彼がトップだ。今のところ右に出る者はいない。
- カエルのグッズ蒐集で彼女の右に出る者はない。