「観点」の意味
「観点」(かんてん)とは、「観察や考察を行うときの立場・目の付けどころ」という意味の言葉です。
「観点」の「観」(カン、み-る)の字は、「見」の字と同義であり、幅広く「何かを見る」「調査する」「判断する」「鑑定する」「取り扱う」などの意味です。
一方の「点」は、ここでは「ある考察を行う場合の(極小の)範囲、立場」という意です。すなわち「観点」は、「観」を行う「点」、「何らかの考察を行うひとつの点(立場など)」を言い表す言葉であると解釈できますね。
「観点」の必要性とその機能
なぜ「観点」なる言葉が必要とされるのでしょうか。それは、この世の物事で一義的なもの(たったひとつの意味しか持たないもの)はほぼ皆無と言ってよく、「どこに目を置くか」によって常に考え方が変わってくるからです。
例えば、「日本語とは何か?」について考える場合、文法の観点、発音の観点、語源・歴史の観点、漢字研究の観点、修得難易度の観点、古語の観点、方言の観点、文化学的な観点、他言語との比較の観点などなど、実に多様な観点が存在します。
学問的な領域ではもちろん、日常的な会話の中でさえ、どの観点で「それ(対象物)」を観察したのかという論点は(意識しない場合であっても)自然に導入されています。観点を排除して物事に言及することは不可能といってもよいでしょう。
「観点」は、物事には多様な側面があるという客観性を認めつつ、どのような切り口から対象をとらえたのか、明確化するための言葉であるといえます。
「観点」の使い方
「〇〇の観点では~」
「観点」という言葉は、基本的には「〇〇の観点では、(□□は)△△である」という形で、「ある立場から見たときの(ある主題についての)考察・結論など」を言い表すために使用します。
「〇〇の観点では~」と言う場合、実質的に「他の観点では別の結論が導かれる可能性」を許容しています。
このような言い方は、「絶対正しい(間違った)意見」がどこかに存在することを前提とせず、物事は多様な側面を持ちうることを認める科学的な態度といえるでしょう。
「さまざまな観点で~」
「観点」の使い方として、「〇〇の観点」といった形で観点のありかを固定せずとも、「さまざまな観点で」や「別の観点で」のように、多様な観点が存在することに言及したり、別の観点への思考のシフト(移行)を言い表すこともできます。
特に、「災害の復興計画」のように、考えるべき観点(経済復興の観点、人道支援の観点、家財保障の観点、防災対策の観点など)が複数存在する場合には、どのような観点を議論に盛り込むべきか自体が議論されることがあります。
例文
- 死んだ動物を放置するのも、穴を掘って埋めて弔ってやるのも、生物学的な観点では特に違いがない。しかし倫理的・文化的な観点では有意な違いが認められる。
- 私はひとまず「友人の言うことは正しい」という観点に立って、事件の真相を探すつもりだ。
- 首相は、「あらゆる観点から、テロの被害者の救済にあたる」と約束した。
- 敵国にも一定の正しさがあり、絶対的な正義も絶対的な悪も存在しないという観点を人類が獲得したのは、ごくごく最近の話である。
「観点」の類語
「観点」の類語としては、以下のような表現が挙げられます。
- 見地
- 視点
- 立場/ポジション
- 角度
- 次元
これらの言葉はおおむね「観点」とそのまま置換が可能ですが、「次元」のみ、「立場の基準となるもの」に言及するため、ややメタ的な言葉です。
「観点」を英語で言うと?
「観点」を英語で言いたい場合には、以下のような表現が良いでしょう。
- viewpoint(見地、立場)
- standpoint(立場)
- point of view(考え方、視点、立場)
- perspective(客観的な見方)
例文
- From a historical viewpoint[standpoint], this book is very valuable.(歴史的な観点からいって、この書物はとても貴重だ)
- Let's think about the issue from a different perspective.(その問題は違う観点から考えましょう)