「いたれりつくせり」とは
「いたれりつくせり」は、「至れり尽くせり」と書き、動詞「至る」「尽くす」の命令形に完了の助動詞「り」がついた言葉の連語となっています。「至る」には、行き着く、達する、すみずみまで行き渡るという意味があり、「尽くす」には、極める、出し切るという意味があります。
この連語で、物事が行き着くところに達し、すべてを出し切ってこれ以上のものはないこと、つまり、「いたれりつくせり」は、相手に対する心遣いや配慮が隅々にまで行き届いて、何も言うことがないほど素晴らしいということを表す慣用句です。
「いたれりつくせり」の使い方
宿泊したホテルや旅館、あるいは、レストランでの食事や友人の家に招かれて歓待された時などに、店の従業員や家人の客に対するサービスや配慮、心遣いが隅々にまでなされていて、それが予想以上に素晴らしいものであった時などに「いたれりつくせり」と表現します。
また、仕事や人間関係で十分な配慮や気遣いを感じたりした時にも、「いたれりつくせり」と表現することがあります。
「例文」
【例文】
- 結婚30年のお祝いに息子たちがプレゼントしてくれた老舗旅館のおもてなしがいたれりつくせりでとてもいい思い出ができた。
- 妻が出産のために入院した病院は、高級ホテル並みの部屋とサービス、日替わりのフレンチや中華、イタリアン、和食など、いたれりつくせりだったので、二人目もここで生みたいと言っていた。
- 庶務のAさんに出張の手配を頼んだら、チケットやホテルの予約だけでなく、現地のグルメガイドやクーポンも集めてくれて、いたれりつくせりだった。
- 私の夫は、仕事が忙しいにもかかわらず、家事や子育てを積極的にしてくれるし、誕生日や記念日には必ずプレゼントを欠かさないいたれりつくせりの夫で、とても幸せです。
- 先日は、突然の訪問にもかかわらず、いたれりつくせりのおもてなしをしていただき、誠にありがとうございます。
「いたれりつくせり」の語源
「いたれりつくせり」の語源は、中国の古代哲学書『荘子(そうじ、そうし)』第二編「斉物論(せいぶつろん)」と言われています。『荘子』では、人間の認識におけるこの世のあらゆるものは実在せず、「無」の思想(無の境地)が最高の思想であると主張しています。
そして、『荘子』では、この最高の境地(無の境地)のことを、「至れり尽くせり(それ以上のものは存在せず、あらゆるもの尽くしている)」と説いているのです。ここから転じて、「いたれりつくせり」が、慣用句として使われています。
「いたれりつくせり」の類語
「心尽くし」
「心尽くし(こころづくし)」は、相手のためにいろいろな配慮をして、細々(こまごま)と気を使うこと、または、そのような配慮をして準備したもののことです。「心尽くしの手料理」などが代表的な表現です。
【例文】
「微に入り細を穿つ」
「微に入り細を穿つ(びにいりさいをうがつ)」は、きわめて細かいところまで漏らすことなく、気を配り、行き届いていることという慣用句です。
「微」は、きわめてこまかく小さいこと、「細」は、こまかい、くわしいという意味です。また、「穿つ」は、穴をあける、貫くといった意味があります。
これらの組み合わせで「微に入り細を穿つ」は、上記のような意味となっています。なお、「微に入り細にわたる」という表現を見聞きすることもありますが、これは、「微(微細)にわたる」という表現と混同したもので、正しくは「微に入り細を穿つ」です。
【例文】