「思い出」の意味
「思い出」(おもいで)の意味は以下の2つです。
- 過去に体験した物事が心の中に浮かぶこと
- 昔のことが心に蘇(よみがえ)るきっかけになる物事
「思い出」は、一般的によく見られますが、「想い出」と表記する例もあります。「想い出」が使われる例は、文学や歌などのタイトル、作品中の文章や歌詞の表現などです。
「思」の字義は、頭や心で考えるということです。「想」は、思い巡らす、心の中に描くといったことで、ある物事について具体的に思いをはせていることがうかがえます。どちらを使うべきか悩んだら、多く使われている「思い出」を用いるとよいでしょう。
「思い出」の使い方
「思い出」は、過去の不愉快な出来事が思い出された場合にも使われますが、どちらかと言えば好ましい出来事を懐かしく思う時に使うことが多いです。
例えば、仲の良かった友人たちとの出来事が自然に頭の中に浮かんだり、自分に良くしてくれた亡き人のことを偲(しの)んだりということが挙げられます。二度と取り戻せない昔に心が惹(ひ)かれる気持ちを表すこともあります。
心の中に「思い出」が蘇るきっかけになるという意味で使う場合、思い出のもととなった品物、関連する出来事を修飾する形で使われます。
「思い出」を使った例文
【好ましい出来事を懐かしく思う】
- 3年前に亡くなった祖父には、小さい頃から可愛がられた思い出しかない。
- 学生時代、友人たちと恋愛話で盛り上がった思い出がある。
【嫌なことが心に浮かぶ】
- 予防接種の注射が痛くて、学校で泣いたのは苦い思い出だ。
- 他の人は違うだろうけど、中学と高校の部活なんて苦しくて辛い思い出だけだよ。
【思い浮かぶきっかけになる】
- 修学旅行の思い出となる写真をアルバムに保存している。
- 最優秀賞のトロフィーと賞状は、大切な思い出の品です。
心の中に浮かぶ意味での類語
類語①追憶・追想
「追憶」(ついおく)は、過去に遡(さかのぼ)って思いをはせること、懐かしく思うこと、亡くなった人を偲ぶことです。「追想」(ついそう)も同様の意味です。「思い出」と同じように使えますが、嫌な過去のことにはあまり用いません。
【例文】
- Aさんはいつでも古き良き時代を追憶して、現在に目を背けている。
- Bさんは追想にふけり、黙り込んでしまった。
類語②瞼に浮かぶ
「瞼に浮かぶ」(まぶたにうかぶ)は、ある過去の物事が思い浮かぶことを表す言い回しです。過去の物事の良し悪しに関係なく使えます。
目を閉じると目の裏にまざまざと光景が浮かび上がる様子を思い出すことにたとえ、不意に鮮明な映像が浮かび上がるニュアンスで使われます。
【例文】
- 子供のおもちゃを手にして、自分の幼少時代の部屋の様子が瞼に浮かんだ。
- あなたの歌声を聞くと、イタリアでの生活が瞼に浮かびます。
思い出すきっかけになる物事という意味での類語
昔のことを思い出すきっかけになる物事という意味での類語に「記念」(きねん)があります。「記念」は、思い出となるように物を残しておくことです。「記念品」などの形で使われます。他に、過去の事物や昔の人物を思い出し、新たな気持ちで物事に臨む様子も表します。
【例文】
- 卒業の記念として、日当たりの良い一角に花壇を設営した。
- 全国大会の記念品としてTシャツを頂いた。
タイトルに使われる「思い出」
バイオリンとピアノのための小品「思い出」
「思い出」のタイトルは文学などの作品でも使われますが、クラシック音楽にも『バイオリンとピアノのための小品「思い出」』(原題:Souvenir for Violin&Piano)という楽曲があります。
「思い出」は、モラヴィア(現在のチェコ共和国)出身のバイオリニスト、フランティシェク・アロイス・ドルドラ(František Alois Drdla)が作曲しました。
3分ほどの短い曲で、バイオリンの優美な旋律とピアノの分散和音の響きが印象的です。初めから終わりまで優しく甘い雰囲気が漂っています。昔を懐かしく思う様子を表現しているのでしょう。