「敷居が高い」とは
「敷居(しきい)が高い」とは、不義理をしたり、体面を汚したりして迷惑をかけた相手の家を訪問しにくいことを意味する慣用句(または、ことわざ)で、敷居が高いと跨(また)ぎにくいこと、つまり、入りにくい気持ちを表す比喩的な言葉です。
「敷居」は、日本家屋で門の内と外との仕切りとして敷く横木、または、部屋の引き戸や障子・ふすまを開閉するために溝をつけた横木のことです。「敷居が高い」の「敷居」は、家を訪問しにくいという意味ですから、門の敷居のことです。
「敷居が高い」の新しい意味
文化庁の平成20年度「国語に関する世論調査」によると、「敷居が高い」は、上記の本来の意味に加えて、特に30代以下の世代では、「高級過ぎたり、上品過ぎたりして、入りにくい」という意味で使う人が多くなっているという結果が出ています。
ただ、この調査時点では、辞書によって解釈が異なっています。「近寄りにくい」「気軽に経験できない」という意味を載せているものもあれば、程度や難度が高いという意味(高級や上品など)で使うのは誤用と説明しているものもあるのです。
しかし、最近の辞書には、「高級だったり格が高かったり思えて、その家・お店に入りにくい」という意味が加えられたものも登場し、新しい意味として認知されつつあると言うことができるのではないでしょうか。
「敷居が高い」の使い方
「敷居が高い」の本来の意味は、相手に世話になったり、面倒を見てもらったのにも関わらず、迷惑をかけたために、申し訳がなく、顔を合わせられないという気持ちがある場合に使います。
一方、新しい意味では、自分の経済力やステータスと比較して、ちょっと引け目を感じるような場合に使われているようです。
【例文】
- 就職活動で随分お世話になったのに、半年で退職したため、恩師の家は敷居が高くて行きにくい。
- 借金の肩代わりをしてもらった叔父さんの家は、敷居が高い。
- 結婚式の二次会で最高級ホテルのラウンジを貸し切りで使おうと思ったが、婚約者から敷居が高いと反対された。
- お茶会に誘われたけれど、敷居が高いので遠慮した。
「敷居が高い」の誤用
上記のように辞書に掲載されるようになった新しい意味とは別に、「敷居が高い」という意味で「ハードルが高い」や「レベルが高い」を使うのは誤用とされます。
「高級すぎる」や「上品すぎる」は、「ハードル」や「レベル」と同じように使うことができます。しかし、「敷居が高い」には、能力や実力が及ばない・難しい・困難という意味がないため、「ハードル」や「レベル」に置き換えることができないのです。
例えば、「自分の学力では、あの超難関校は敷居が高い」とか「こんな難しい文章は敷居が高い」といった使い方はできないということです。
「敷居が高い」の対義語は?
「敷居が高い」の対義語というと、「敷居が低い」が思い浮かぶのではないでしょうか。しかし、ある調査によると「敷居が低い」という言葉は1970年以前には使われていなかった新しい表現で、一般的にあまり浸透しておらず、慣用表現ということもできないようです。
そもそも、「不義理や迷惑をかけていないから入りやすい」ということ自体を考えたり、言葉にすることが稀なことでしょうし、「敷居が低い」と言い換えた用例も見当たりません。一方、安くてリーズナブルな店で入りやすいという意味では、「敷居が低い」という用例が見られます。
ただ、いずれにしても、「敷居が低い」の意味が限定的であること、認知度や使用例・使用場面が限られており、言葉自体が一般化していないことを考えると「敷居が高い」の対義語とは言い難いでしょう。
「敷居が高い」の類語
「頭が上がらない」
「敷居が高い」の「不義理」の意味での類語としては、「頭が上がらない」という慣用句があります。意味は、相手に対して負い目や引け目、あるいは弱みがあって、対等な立場で向き合うことができないというものです。
不義理をしたり、迷惑をかけるは、負い目や引け目、あるいは弱みと言えますから、類語と言うことができます。
【例文】
- あの人は僕のことを小さい時分から知っているから、大人になっても頭が上がらない。
- 先輩には昔、仕事の失敗をカバーしてもらったので、今でも頭が上がらない。
「分不相応」
「分不相応(ぶんふそうおう)」は、地位や能力にふさわしいことを意味する「分相応」を否定した言葉で、地位や能力にふさわしくないということです。特に収入や立場に釣り合わない贅沢なことに対して使われていますから、「敷居が高い」の新しい意味の類語と言えるでしょう。
【例文】
- 安月給のサラリーマンが高級外車を乗り回すなんで分不相応だと親に叱られた。
- 自分へのご褒美にブランドバッグを買おうと思ったけど、分不相応だと思いなおしてやめた。