「時分」の意味と使用例
「時分」は二つの意味で使われます。
- およそのとき。おり。当時。
- ちょうど都合の良い時。時機。好機。
- 今は昼時分だろう。
- 去年の今時分は引っ越しの準備で大わらわだった。
- 若い時分はずいぶん無茶をした。
- 正午の時分に来客があった。
(このころの稽古はどれもどれも、容易である)
世阿弥『風姿花伝』より
次は、2の意味で使われる例です。
- 時分を見計らっておいとましよう。
- もう寝る時分だ。
- 彼はもう来る時分だ。
- 秋は農家のかきいれ時分だ。
- いい時分に教えてあげよう。
「時分」を含む言葉の意味と使用例
「時分柄(じぶんがら)」
その時節にふさわしいさま。時節柄。
- 『餅屋(もちや)は時分柄にひまを惜しみ/日本永代蔵』(餅屋は時節柄、暇を惜しんで)
能楽で、役者の若さからくる一時的な芸の美しさ・魅力。
- 『この花はまことの花にはあらず。ただ時分の花なり。/風姿花伝』(この少年期の芸の魅力は真実の芸の魅力ではない。単に若さからくる一時的な芸の魅力である)
「時分触れ(じぶんぶれ)」
食事や集まりなどの時刻を触れ知らせること。また、その役。
- 『時分触れ戻りに辛味(からみ)さげて来る/柳多留』
ちょうどよい時分。特に食事どき。
- 『時分どきに物を食はぬと、体の毒でござる/歌舞伎・五大力恋緘』
- 『時分時だのにちつとも気が付きませんで/吾輩は猫である』
「時分」の英語表現
- The cars are crowded at this time of day.(今時分は電車が込み合う)
- about this time yesterday(昨日の今時分)
- It must be about noon.(もう昼時分だろう)
- It is time to go to bed.(もう寝る時分だ)
- Now is the time.(時分は良し)
「時分」まとめ
「時分」は、時間的に少し幅を持たせた言葉で、およその時間をあらわします。「とき」「折り」「頃」のほうが今はよく使われているようですが、昔からある「時分」も廃らせたくない言葉です。