「迷惑」とは?
「迷惑」は、(めいわく)と読みます。世代や立場にかかわらず、広く一般的に使われる言葉ですが、特にビジネスシーンで使う場合は、使い方を間違えないよう注意が必要です。
「迷惑」は、次の2つの意味をもつ言葉です。
- 人のある行為によって、他者が不快を感じたり、困ったり、不利益を受けたりすること、また、そのさま。
- どうしてよいか迷うこと、困ること。
2の意味は、古典などでみられるものですが、現代日本語では使われませんので、今回は1の意味について詳しくみていきます。
「迷」「惑」の字義
「迷」と「惑」という漢字だけを見ると、「困る」「不快な思いをする」という意味はイメージしづらいかもしれません。それぞれの字義を追ってみましょう。
「迷」は、音読みが(メイ)、訓読みが(まよ・う、まど・う)で、意味は以下の通りです。
- 迷う、惑う、道がわからない。
- 困る、明白でない。
- 筋が通らない。
「惑」は、音読みが(ワク)、訓読みが(まど・う)です。惑う、惑わす、などの意味があり、心に思い迷うようなイメージです。
どちらも似たようなことを表す漢字で、「迷惑」の2の意味に反映されていますね。また、「迷」は「困る」ということも指しています。広くニュアンスをとらえることで、現在の意味に発展したと考えられます。
「迷惑」の使い方
「迷惑」だと感じたとき
1の意味は、他者の行動などによって嫌な思いを感じたときに使います。とはいえ、強い非難を表す言葉ですから、当事者に対して、はっきりと「迷惑」だと伝えることはあまりないかもしれません。親しい間柄の人と「迷惑な人がいるね」と話すことはあるでしょう。
また、「電車内での迷惑行為」「迷惑防止条例」などのように、特定の行為を具体的に示していることもあります。「迷惑防止条例」で禁じられているものには、ストーカー行為・盗撮行為・ダフヤ行為などが挙げられます。
実際に相手に対して用いたい場合は、使うべきかを慎重に見極める必要があるでしょう。まずは、「迷惑」以外の表現で伝えるのもよいかもしれません。やんわりと伝えてもやめてくれない、あるいは引き下がってもらえないなど、やむを得ないときに用いるイメージですね。
ビジネスで使う「ご迷惑」
ビジネスシーンでよく見聞きするのが、「ご迷惑」という言葉です。「ご(御)」をつけて丁寧な表現とし、おもに謝罪の場面で用います。
今まさに相手を困らせているような場合は、お詫びの言葉をともなって「(このたびは・今般は)多大なるご迷惑をおかけしております」などと使います。
過去のことに対する謝罪の場合は、その事柄を述べた後に、「多大なるご迷惑をおかけいたしましたことを、心より(平に)お詫び申し上げます」などのように続けます。
また、何かをお願いするために、「ご迷惑をおかけいたしますが、何卒よろしくお願いいたします」という表現もしばしば見られます。しかし、相手によっては「迷惑を承知でお願いするなんて」と不快に感じることもあるため、積極的に用いることは避けたほうがよいでしょう。
「迷惑」の文例
- 電車内で、大声で通話をしている人がいてとても迷惑だ。
- A先輩は何かにつけアドバイスをくれるけど、正直ありがた迷惑だ。
- 君の勝手な行動で、これ以上彼女に迷惑をかけてはいけないよ。
- このたびは、当方の配送ミスにより、多大なるご迷惑をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます。
「迷惑」の類語
「手数」
「手数」(てすう・てかず)は、あることを為すのに必要な労力や手間のことです。「お手数」の場合は、「お」という丁寧語をつけることで、相手が自分のために尽力してくれること、を表しています。
自分が他者から被る「迷惑」の類語にはなりませんが、ビジネスにおいては、「ご迷惑」と置き換えて使っても問題ないでしょう。また、何かを依頼するときにも用いることができます。
【文例】
- お手数ですが、こちらの欄に氏名をご記入ください。
- お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
- このたびは、大変なお手数をおかけしてしまい、心よりお詫び申し上げます。
「面倒」
「面倒」(めんどう)は、多義的な言葉ですが、「迷惑」の類語としての意味は、手間がかかったりしてわずらわしいこと、また、そのさま。
「わずらわしくて」という意味合いの強い言葉ですから、「迷惑行為」にそのまま置き換えるとやや違和感があるかもしれません。一方で、ビジネスでの「ご面倒」は、「ご迷惑」と似た感じで使うことができます。
【文例】
- 君からこんな面倒なことを押し付けられるとは思わなかったよ。
- このたびは、こちらのミスで多大なるご面倒をおかけし、申し訳ございませんでした。