「いい面の皮」とは
「いい面の皮」とは、いろいろ苦労したり、努力したのにその甲斐もなく失敗したり不運な目にあった時、あるいは、予測外の思いもかけない目にあって迷惑を被ったときに、嘲りの気持ちを込めて言う慣用句で、恥さらし、迷惑この上ないといった意味を持っています。
「いい」は、「好い」と書くこともあり、形容詞「よい」の終止形あるいは連体形の口語的(会話)表現と言われています。「面の皮」は、文字通り「顔の皮」を表しています。
「いい面の皮」では、「いい=よい」が本来とは反対の意味を表すように使われ、「顔の皮」が「いい」感じになっているということを、厚かましい・恥知らずといった意味の「面の皮が厚い」と同じニュアンスで使いつつ、自分や他人を皮肉っていう言葉です。
「いい面の皮」の使い方
「いい面の皮」には二通りの使い方があります。一つは、気に入らない相手が失敗したりした時に、その相手に対して嘲りの気持ちを込めて言う場合です。もう一つは、自分が失敗したようなときに自嘲的に使う場合です。それぞれの使い方ごとに例文をご紹介します。
相手を嘲る場合
- 誰が聞いても詐欺だとわかる話だからやめておけと、あれだけ忠告したのに全財産をつぎ込むなんて、全くいい面の皮だよ。
- 遺産争いで裁判までするなんて、いい面の皮だ。墓の下で親が泣いているよ。
- 「俺に任せろ」と、大口たたいていたくせに、あっさり引き下がるなんていい面の皮だ。
自嘲的に使う場合
「いい面の皮」の類語
「立つ瀬がない」
「立つ瀬がない」とは、自分の立場がない、面目(めんぼく:体面や世間の評価)が立たないということです。「瀬」は、川の水の流れが遅く、浅いところで、人が立っていられる場所のことです。そのような「瀬」がないことを、立場がないこと、面目が立たないことに例えています。
努力したにもかかわらず、結果が悪かったり、批判されたりすると、その人の立場がなかったり、面目が立たたなかったりするので、「いい面の皮」の類語と言えるでしょう。
【例文】
- 折角、彼女の欲しがっていたアクセサリーを探してきたのに、安物なんて言われたら僕の立つ瀬がないよ。
- 取るものも取り敢えず駆け付けたのに、遅い・役立たずと言われては、彼の立つ瀬がない。
「恥さらし」
「恥さらし(はじさらし:恥曝し)」は、恥と思われるような醜態やみっともない姿を世間にさらすこと、あるいは、そのような人のことです。
「恥」は、失敗などで面目を失うことやそのことを恥じることです。その「恥」を世間にさらす(広く人目に付くようにする)ことから、「恥さらし」となります。「いい面の皮」を一言で言うと「恥さらし」ですから、類語に当たります。
【例文】
- 自分から進んで交渉役を買って出たのに、相手に丸め込まれてすごすごと帰ってくるなんて、とんだ恥さらしもいいとこだ。
- 観光地にごみが散乱したまま放置するなんて、観光立国として恥さらしだと思わないのだろうか。
「お笑い種」
「お笑い種(おわらいぐさ)」は、「お笑い草」とも書きます。笑ってしまえるほどバカバカしいことや人から笑われるような原因のことを指し、それを嘲笑する意味で使うことの多い言葉です。
自分の行為などに対して自嘲的にも使いますが、嫌っている相手の失敗などを嘲るような時にも使います。恥さらしといったニュアンスも含んでいるので、「いい面の皮」の類語と言えるでしょう。
【例文】
- 若い時分は、金さえあれば何でもできると信じていたが、とんだお笑い種だった。
- 優しいから気があるのかと勘違いして、告白したらあっさり断られた。お笑い種にもならない。