「お笑い草」とは?
「お笑い草」(おわらいぐさ)とは、「笑いを誘う材料(物事・原因)」、「物笑いのたね」という意味の表現です。
「笑い草」に丁寧語の「お(御)」をつけた表現であり、敢えて丁寧に表現することにより、笑われる対象への皮肉をこめています。「笑い草」単独でも意味そのものは変わりません。
後ほど詳しくご紹介しますが、「お笑い草」という表現はもともとは「お笑い種」でした。しかし「草」の字を使う表記もある程度世間に浸透しているとみられるため、一般に使う分には「お笑い草」でも問題ないでしょう。
「お笑い草」の使い方・例文
「お笑い草」という言葉は、「お笑い草にもほどがある」「とんだお笑い草だ」といった形で、「笑いを誘われる事柄(がある)」という様子を指して使います。
主に「笑いを禁じ得ない」「あまりに可笑しい」というニュアンスで使用しますが、当然ながら「笑いもの」にされる対象が人間(やその人の振る舞い)である場合は不快感を与えてしまう場合もあるため、TPOはわきまえましょう。
単純に「人を楽しく笑わせる話のたね(いわゆる「ネタ」)」の意味で使用することもできますので、一概に「あざけり馬鹿にする」という意味でないことにはご注意ください。
例文
- 先日、ペットの行方不明をうっかり子どもの誘拐事件と勘違いして大騒ぎを起こした俺は、すっかり局内のお笑い草だ。
- ほとんどの偉大な発明は、実際に成功して世間に認められるまでは、荒唐無稽なお笑い草だったに違いない。
- 小説家の友人からの見舞いの手紙に、短編小説が同封されていた。「どうせ毎日退屈だろうから、拙作をお笑い草にしてくれたまえ」だそうだ。
「お笑い草」の語源
本来は「お笑い種」
最初にご紹介した通り、「お笑い草」という表現は、本来は「お笑い種」です。「種」と書いて「くさ」と読みます。
「種」を「たね」と読む場合も「物事の発生するもと、原因」の意味がありますが、「くさ」と読む場合も同様です。特に、動詞の連用形に続いて「~ぐさ」と濁る形でその物事の「材料、もと」を指す意味があり、「お笑い種」もこの例です。
「お笑い種」の他に、「遊び種」(あそびぐさ:遊びのたね、遊び相手)、「言い種」(いいぐさ:話のたね、言い方、口実、言いがかり)といった言葉もこの「種(くさ)」の使い方に該当します。
なぜ「種」が「草」に?
「種」の字が「草」と変化した理由について定説はありませんが、「くさ」という読みが「草」に通じたと考えるのが妥当ではないかと推測されます。現代語では、「種」を「くさ」と読むことはあまり一般的ではないことも一因でしょう。
さらに、「草」は「生える」「成長する」「繁茂(はんも)する」ものですから、笑いの感情が生き生きと成長し、生い茂るイメージも手伝ったのかもしれません。加えて、「草」も元をたどれば「種」ですから、両者は縁遠い言葉とも言えません。
なお、ネット用語における「草」とはさすがに本源が異なると考えられますが、どちらも「笑い」の感情を表す点は、興味深い一致と言えます(詳細はリンク先をご参照ください)。
「お笑い草」の英語表現
「お笑い草」を英語で言いたい場合は、単純に「laugh」(笑い、笑いもの)や「joke」(ジョーク、冗談)とするか、あるいは「笑いのストック(=蓄え、収蔵品)」という意味で「laughingstock」がよいでしょう。
例文
- It's a joke now, but when I was a kid, I seriously believed that the earth was flat.(今じゃお笑い草だけど、子どもの頃は地球が平面だと本気で信じていたんだ)
- I'd rather be dead than be a laughingstock to you guys.(お前たちのお笑い草になるくらいなら、死んだほうがマシさ)