「鑑」の読み方と意味
「鑑」は、訓読みで「かがみ」、音読みで「カン」です。読み方に応じて意味がありますので、それぞれ紹介します。
【訓読み:かがみ】
- 深鉢状の金属のたらい
- 水面に姿を映して見る「水かがみ」
- 人の手本や模範となる存在
【音読み:カン】
- 模範となるもの
- 資料を集めた手本とする書物
- 良し悪しを見分ける
- 照らし合わせる
「鑑」のもともとの字義
「鑑」は、形声文字で、金属を表す「金」と「カン」という音を表す「監」から成り立っています。字義は、金属製の大きな口径の鉢です。
「鑑」は、古代中国で使われた青銅で作られた水を入れる大きな器を指すようになり、体を清める際のたらいを表すようになりました。また、その器に水を張って水面に姿を映して鏡のように使ったことから、「水かがみ」という意味も派生しています。
「鑑」:「かがみ」と読む場合の使い方
「鑑」を「かがみ」と読む場合、現在では「手本や模範となる存在」を表す意味で使われます。「器やたらい」「かがみ」という意味ではあまり使われていません。
手本・模範となる存在
「かがみ」と読む場合には、ある分野において規範となる存在の人や、生きていく上でお手本としてふさわしい人物を表せます。名詞の後に付けて「~の鑑」といった形で使う例もあります。
【例文】
「鑑」:「カン」と読む場合の使い方
「鑑」を「カン」と読む場合は、他の漢字と結びついて熟語の形で用いられます。それぞれの意味に分けて使い方を紹介します。
模範となるもの
「鑑」を模範となるものという場合、良い意味でも使えますし、あまり良くない意味を持つ漢字と組み合わせて、「過去の教訓を活かすための失敗例」を表すこともできます。
【亀鑑】(きかん)
人の行いの手本、判断の基準となる物事のこと。「亀」は、亀の甲羅で、焼いて吉凶を占うのに使われました。
- 優秀な彼女は、学生の亀鑑となる人物だ。
- 過去の偉人を亀鑑として、前例に習うべきだね。
【殷鑑】(いんかん)
戒めとなる失敗例・見せしめとなるもののこと。「殷」は、古代の中国の王朝名で、「酒池肉林」の故事で悪名を馳せた「紂王」(ちゅうおう)が滅ぼされたことから来ています。
見せしめとなる悪い例は、遠い所に求めなくてもすぐ近くにあることを表す「殷鑑遠からず」「殷鑑近きにあり」という慣用句もあります。
- 私の失敗は殷鑑として、社内で語り継がれることになるだろうな…。
- 殷鑑遠からずの通り、人は性懲りもなくすぐにヘマをするものだね。
資料を集めた手本となる書物
この場合の「鑑」は、物事を調べる際に使う、イラストや画像、説明などの資料が豊富に記載された書籍を指します。
【使用例】
- 図鑑(ずかん)…イラストや写真など実際の形に近い物を載せ、説明したもの
- 年鑑(ねんかん)…ある物事の1年間の動向や展望、調査や統計などをまとめて記録したもの
- 名鑑(めいかん)…人物や団体の呼称を特定の順に並べて、データや連絡先などを載せたもの
【例文】
- スワローズ以外は詳しくないから、選手名鑑を見て他チームの野球選手を確認している。
- この花言葉図鑑には、詳しい花の特徴と色別の花言葉が載っていてわかりやすい。
良し悪しを見分ける
「鑑」は、物事の良し悪しを見極める、詳しく点検する意味でも使えます。
【使用例】
- 鑑賞(かんしょう)…芸術作品を見聞きしたり、読んだりすることで良さを見極めて、深く感じ取ること
- 鑑査(かんさ)・鑑定(かんてい)…ある物事を調べて優劣や適否、真贋などをしっかりと見定めること
【例文】
- 今、美術館で印象派の絵画を展示しているから、しっかり本物の絵画を鑑賞してください。
- この壺が本当に著名な作家の作った物なのかどうか、鑑定してほしい。
照らし合わせる
「鑑」は、そのような資格や身分を持っているか、正当なものであるのかを照らし合わせるという意味でも使います。
【印鑑】(いんかん)
あらかじめ地方自治体の役所に届けておき、真偽を照合する実印の印影。
- 家を新築するのにローンを組むので、金融機関に印鑑証明の書類を持っていった。
【鑑札】(かんさつ)
行政庁が正式に、営業などを許可したことを表す札のこと。現在では、鑑札の代わりに免許証や許可証が交付されます。
- 昔は中古品を売買する場合に、鑑札が必要だったということだ。