「思わしくない」とは
「思わしくない」とは、望み通りではないこと、いい状態でないことといった意味です。「思わしくない」は、形容詞の「思わしい」の連用形「思わしく」に打消しの助動詞「ない」が付いた形の表現です。
この「思わしい」は、好ましい、気に入る、思い通りという状態を表す言葉ですが、主として打消し表現で使われる言葉で、それが「思わしくない」という表現になります。
なお、「思わしい」には、~と思われる、~と見られるといった意味や好ましく思う、愛着を感じるという意味もあります。
「思わしくない」の使い方
「思わしくない」は、体調がよくない場合や物事の状態・進捗状況などが、予定や期待したとおりになっていないような時に使います。また、「思わしい状況ではない」といった形で使う場合もあります。
さらに期待通りでないことやよくないことを伝えるときに、伝える相手や状況によっては、「よくありません」と言うよりも、「思わしくありません」と婉曲的(えんきょくてき)に伝えることがいい場合もあります。
【例文】
- リゾート開発プロジェクトの用地買収交渉が思わしくないため、本社から交渉経過の詳細な報告を求められている。
- がん病巣の摘出手術を行ったが、予後が思わしくないことから、面会謝絶状態が続いている。
- 定期健康診断で血圧の状態が思わしくなかったので、食事指導を受けることになった。
- 新規開店で大々的にキャンペーンを打ち出したが、売り上げが思わしくないので株主から業務見直しの声が挙がっている。
- 今シーズン、打撃成績が思わしくなかった4番打者の大幅な減俸が噂されている。
「思わしくない」の類語
「好ましくない」
「好ましくない」は、「思わしくない」と同様に、「好ましい」という形容詞の連用形「好ましく」に打消しの助動詞「ない」が付いた形です。
「好ましい」は、好みだ、好きだ、感じがいい、好色なのほかに、そうなってほしいと望んだ状態、満足な状態といった意味があります。「好ましくない」は、後者の意味を打ち消して、あまりいいことではない、望ましいことではないという状態を表しています。
【例文】
「芳しくない」
「芳(かんば)しくない」も、「思わしくない」と同様、「芳しい」という形容詞の連用形「芳しく」に打消しの助動詞「ない」が付いた形です。「芳しい」には、良い香りがする、香ばしいという意味のほかに、好ましい、期待通り、よいといった意味があります。
この「芳しい」の後者の意味を打ち消したものが「芳しくない」で、良くないとか悪いといった状態を表しています。
【例文】
- 進学校に進んだ息子の成績がどうも芳しくなくて、何か悩みでもあるのかと心配しています。
- 近頃、刑事ドラマが目白押しで、視聴者の目も肥えてきているので、新シリーズの視聴率が芳しくない。
「不都合」
「不都合(ふつごう)」には、都合が悪いこと、経済的に苦しいことのほかに、道理に外れていること、許されないことという意味があります。後者の意味で、「思わしくない」と同じように、よくない、悪いというニュアンスがあり、類語と言えるでしょう。
【例文】
- 今度来る部長とうちの課長は、犬猿の仲らしい。うちの課にとって不都合なことが起きなければいいけど。
- いじめの隠蔽(いんぺい)だけでなく、教師が不祥事を起こして裁判沙汰になるなんて、当校にとって不都合極まりない事態になってしまった。