「香ばしい」とは?
「香ばしい(こうばしい)」とは、「食物を煎(い)ったり焼いたりしたときの(多くは)よい香り」を意味する言葉です。
古語では、「見た目や印象が素晴らしい、立派である」や「望ましく思う。心惹かれる」という意味で用いられることもありますが、現代語ではこれらの意味で使われることはありません。
他に「馨しい」「芳ばしい・芳しい」と表記されることもありますが、ごくまれです。特に「芳しい」は「かんばしい」とも読ますので、読み間違いに注意しましょう。
「香ばしい」の使い方
「香ばしい」という言葉を使った例文をいくつか挙げておきます。現代語では見られない、古文での使い方もふたつ紹介しておきましょう。
- 角を曲がると、お茶を焙じる香ばしい香りが漂ってきた。
- 昔ながらの手焼き煎餅は、やはり香ばしさが違うね。
- 薄色の衣のいみじうかうばしきをとらせたりければ…(『宇治拾遺物語』より)
- 姿、みめありさま、かうばしくなつかしきこと限りなし(『宇治拾遺物語』より)
食べ物を煎ったり焼いたりしたときの、ほんのりこげたような良い香り、が「香ばしい」の一般的な解釈です。
3つ目の例文では「すばらしい」、最後の例文では「望ましく思う」の意味で「かうばしき」が使われています。
「香ばしい」の英語表現
fragrant
'fragrant'は、「(花やごちそうなどが)よい香りである。かぐわしい。」という意味を持つ形容詞です。転じて、「(思い出などが)甘い。快い。」といった意味も持ちます。
「香ばしい」の英訳として用いるならば、「どのような香りなのか」の説明をつけるとより親切でしょう。
【例文】:The air was fragrant with cookies hot from the oven.(あたりには、焼き立てクッキーの香ばしい香りが充満していた)
savory
'savory'という単語には、「味や香りのよい。風味のある。食欲をそそる」という意味があります。「(食べ物・料理が)塩や胡椒などでピリッとする」という意味でも使われる形容詞です。
【例文】:"The savory smell of spicy curry!!" He ran into the kitchen.(「わあ、香ばしいカレーのにおいだ!」彼は台所に駆け込んだ)
ネットスラング「香ばしい」
インターネット上の一部では、「香ばしい」という言葉が人を形容するために用いられています。この用法での「香ばしい」の意味は、元のポジティブなものとはかけはなれたものです。
ネットスラング「香ばしい」の意味
ネットスラングの「香ばしい」は、「人の性質」を形容するのに使われる言葉です。「痛々しい人」「頭がおかしい人」を表す隠語として用いられます。
【使用例】
- 掲示板でずいぶんと香ばしい書き込みをしている人がいる。
- SNS上で何気なく呟いたことについて、やたら絡んでくる香ばしい人がいる。粘着質でちょっと怖い。
ネットスラング「香ばしい」の由来
ネットスラングとしての「香ばしい」が使われだしたのは、2000年代の初期です。由来については下に挙げるようないくつかの説があって定かではありません。
ネットスラング「香ばしい」の類語
残念ながら、ネット上ではさまざまな形で人を揶揄するような表現が飛び交っているのも事実です。そのため、「おかしな人」という意味の「香ばしい」の類語的スラングも複数存在します。
- 電波…通り魔などの衝動的な犯罪を犯した人が、「頭の中に電波が入ってきて命令された」などと言うことから、「頭のおかしい人」の隠語として用いられます。
- 厨房…「中坊」=中学生の誤変換から。子どもっぽい言動などを揶揄する言葉から、すぐにムキになるような「痛々しい人」を表現する言葉です。
- DQN(ドキュン)…非常識な人、「足りない」人を揶揄する隠語です。テレビ朝日系の番組『目撃!ドキュン』が語源です。