「芳しい」の読み方
「芳しい」は、訓読みでは以下の二つの読み方が可能です。なお、「芳」は音読みでは「ホウ」と読み、よいかおりという意味の「芳香(ほうこう)」などの熟語があります。
- かぐわしい
- かんばしい
また、どちらの読み方をしても「芳しい」は、「香しい」または「馨しい」とも書くことができます。
「芳しい」の意味と使い方
「芳しい」の二つの読み方には、それぞれ複数の意味が存在します。両者の言葉には、ほぼ同義のものもあれば異義のものもあるため、少しややこしいかもしれません。理解しやすいよう、意味ごとに例文を挙げて紹介します。
「芳しい(かぐわしい)」
「かぐわしい」は、「香+くわし(細し・美し=こまやかに美しい、うるわしい)」が由来とされる言葉で、大きく二つの意味があります。
1.かおりがよいさま。かおり高いさま。
- バラ園の入り口に着く前から、芳しいバラの香りが漂ってきた。
- 私のストレス解消法のひとつは、コーヒーの芳しい香りをかぐことだ。
2.美しいさま。(香気を放つような)美しさがあるさま。
- 芝生で花を摘んでいる少女たちは、芳しい乙女の姿そのものだった。
- 小説にでてくる色香がある魅力的な主人公は、芳しい女性という言葉がまさに当てはまった。
「芳しい(かんばしい)」
「かんばしい」は、「かぐわしい」から転じたものです。この言葉も、大きく二つの意味があります。
1.かおりがよいさま。においがよいさま。こうばしい。
- 歩いていたら芳しい沈丁花の香りがしてきて、春の訪れを感じた。
- 朝の散歩の楽しみの一つが、パン屋のそばを通り、パンを焼く芳しい匂いをかぐことだ。
2.好ましいさま。誉められた状態であるさま。(多くは、この言葉の後に打消しの表現をともなう)
- 運動会の日は、芳しくない天気予報で、心配である。
- テストで芳しい結果が得られなかったのは、寝不足が原因の可能性がある。
「芳しい」の関連語
「芳しい(かぐわしい・かんばしい)」には意味が複数ありますが、意味ごとの類語と英語表現は以下の通りです。また、英語表現では、文脈により使用する単語が異なりますので、その一部を紹介します。
「かおりがよいさま」の芳しい
【馥郁たる】
- 意味:よいかおりの漂うさま。香気のたちこめるさま。
- 用例:梅の名所に行くと、馥郁たる梅の香りに気分が高揚する。
【fragrant】
- 意味:よいにおいのする
- 用例:a fragrant roseかぐわしいバラ
【aromatic】
- 意味:かおりのよい
- 用例:aromatic coffeeかおり高いコーヒー
「美しいさま」の芳しい
【匂やか(におやか)】【匂いやか(においやか)】
- 意味:美しくつやつやしたさま。気品があって美しいさま。
- 用例:私の顔を見ると、椅子に座っていた彼女は匂やかにほほ笑んだ。
【cute】
- 意味:魅力的な。色気のある。(アメリカ英語において / cuteには他の意味もある)
- 用例:That French girl is very cute.あのフランス娘はとても魅力的だ。
「好ましいさま」の芳しい
【思わしい】
- 意味:好ましく思われるさま。望ましいさま。(多くは打消し後をともなう)
- 用例:努力して練習したのに、思わしい試合結果が得られなかった。
【satisfactory】
- 意味:申し分のない、満足のいくような
- 用例:The results of exam were not satisfactory to him.試験の結果は彼にとって芳しいものではなかった。
「芳しい」と「芳ばしい(こうばしい)」の区別
「芳しい」と似たような言葉に、「芳ばしい」(こうばしい)があります。「芳ばしい」は複数の意味をもちますが、主に以下の意味で使われています。
【芳ばしい(こうばしい)】
- 意味:焦げたようなにおいが、心地よくかおるさま。
- 例文:私は、煎餅を焼く芳ばしい匂いが好きで、祖母は、芳ばしいほうじ茶の香りが好きだ。
また表記としては、「芳ばしい」よりも「香ばしい」とされるのが一般的です。
「芳しい」と「芳ばしい」の相違
「芳ばしい」は、食物を焼いたり煎ったりしたときの、こんがりした良いにおいを表現する言葉です。飲食物に使用することが多く、花などには使いません。ほかに、「芳しい」と「芳ばしい」では、漢字のあとにつく送り仮名が違います。
このように、「芳しい」は「芳ばしい」に比べて汎用性が高く、使いやすい言葉といえるでしょう。
「芳しい(かぐわしい・かんばしい)」をきちんと使いこなせるよう、複数の読み方とその意味を正しく把握しておくといいですね。