「きな臭い」の意味とは
「きな臭い」(きなくさい)の意味は、以下の3つです。
- 焦げたような臭いがする
- 戦乱・大きな事件が起きそうな雰囲気がする
- どことなく危険で怪しげな感じがする
「きな臭い」のもともとの意味は1です。1の「焦げたような臭い」が火薬や硝煙(しょうえん:火薬の爆発により立ち上った煙)の不快な臭いを想像させて、2の戦乱や大きな事件を予感させることを表すようになりました。
また、2で戦争などの大きな事件を想起させることから、3のように危険で怪しげな感じがする物事を指す意味合いも派生しています。
「きな臭い」の語源
「きな臭い」の語源にはいくつかの説があります。それぞれを紹介します。和菓子につきものの「きな粉(きなこ)」とは全く関係がありません。
衣服の臭い(有力な説)
「きな臭い」の語源のうち最も有力な説は、「衣臭い(きぬくさい)」です。「きな」を「衣(きぬ:服地のこと)」の音が変化した言葉と考えられています。この場合の「臭い」は、不快な臭いや好ましくない臭いを指します。
「きな臭い」で「衣服から臭いがする」、もしくは「服地が焦げたような臭い」から来ているのではないかと言われています。
木や香木の臭い
他には、「きな臭い」は「木のにおい」の音が変化して、木からする臭いを表すことが由来という説があります。「きな」は「香(こう)」を表し、香木を焚きしめて衣服に移った時の臭いが語源となったと言われています。
こちらの語源の場合は、特に「嫌な臭い」かどうかは分かりません。単に「木やお香などの香りがする」ことを表しているのかもしれませんね。
危険な薬
こちらの語源はあまり有力な説ではありません。この場合の「きな臭い」の「きな(漢字表記:規那)」はキナの木から取れる薬で「キニーネ(オランダ語:kinine)」のことです。
「きな臭い」は、危険な薬、劇薬のきなということを表すところから来ているということです。こちらの語源での「臭い」は、においを感じるのではなく、疑わしい様子や怪しいさま、危険なことを表しています。
「キナ」はアカネ科のキナの木の皮を切り、乾燥させて作る薬です。解熱剤や胃薬、マラリア熱の薬としても使われます。しかし、摂りすぎると体に悪い影響を及ぼすこともあり、取り扱いには注意が必要だと言われています。
「きな臭い」の使い方
1.焦げたような臭いがする
「きな臭い」は物が焦げたような嫌な臭いを表します。肉や野菜などの加熱調理で発生する焦げた臭いで使うことはありません。どちらかというと、木や布などが焦げた臭い、火災の後などの臭いに対して使われます。
【例文】
- 近所の火災はボヤで済んだが、2~3日くらいきな臭い感じが鼻に残った。
- 焚き火中にきな臭い感じがして足元を見たら、パンツの裾が少し焦げていた。
- 焼却炉周辺から、きな臭い空気が漂ってきている。
2.戦乱・大規模な事件が起きそうな雰囲気
火薬の臭いを象徴しているところから、「きな臭い」で武器を使う地域同士の紛争、国をまたぐような戦争などの規模の大きな事件などを予感させる時に使われることが多いです。個人同士のけんかや、小競り合い(こぜりあい)などにはあまり使われません。
【例文】
- 宗教問題をきっかけにして、大国同士がきな臭い雰囲気になってきた。
- 国境周辺で武力衝突が起こり、一気にきな臭いことになりそうだ。
- 大企業の書類の偽装から、国家を揺るがすようなきな臭い事件に発展しそうだ。
3.危険で怪しげな感じがする
3の意味で使う場合、「きな臭い」は、人の様子や物事、その時の状況に対して使えます。何となく信用できないように思えたり、良からぬ印象に映ったりするさまを表現できます。
【例文】
- 彼は好青年だと評判だが、詐欺師のようなきな臭い人物だと感じた。
- A社との取引はきな臭い雰囲気が漂う。いったん保留しよう。
- 何となくきな臭い会社だ。ブラック企業のように思えるので、内定は辞退するつもり。