「根を上げる」は誤り
まず、「根を上げる」(ねをあげる)という言葉は誤用であり、正しくは「音を上げる」です。
読みがまったく同じですので、うっかり「根」の字を使ってしまっている方がいるかもしれませんが、間違えないようにこの機会にしっかり覚えておきましょう。
「音を上げる」の意味
「音を上げる」とは、「苦しさに耐えられず声を立てる。弱音をはく」または、「降参する」という意味です。
困難や苦難に当たって吐いてしまう弱音が「音」(ね)ですから、「根」の字を使うのは誤りであることがわかりますね。
「根」が「根性」などのように「物事に耐えうる気力」という意味をもっていることも、「根を上げる」という誤用が広がっている原因ではないかと推測されます。
「音」の意味
「音」は読み方によって意味が変わりますが、大きく分けると次の通りです。
- 「おん」と読む場合…おと、音楽のふし、便りなど。(音響、音符、音声)
- 「いん」と読む場合…おと、音楽など。(余韻、知音、母音)
- 「おと」と読む場合…物の響き、人や虫などの声。(足音、雨音)
- 「ね」と読む場合…人や虫などの声。(弱音、初音)
「音を上げる」の「音」に相当するのは、4の意味です。
「上げる」の意味
「上げる」の意味はたくさんありますが、主なものを挙げると次の通り。
- 低い方から高い方へ動かすこと。(幕を上げる、すだれを上げるなど)
- 所有者や高位の者の手元に収めること。(収益を上げるなど)
- 程度を高めること。(声を上げる、家賃を上げるなど)
「音を上げる」の「上げる」に相当するのは、3の意味です。
「音を上げる」の使い方
- 新しい監督が着た後、練習の厳しさに音を上げてしまった。
- 景気低迷により経営状況がひっ迫し音を上げざるを得ない。
- 彼は我慢も限界となり音を上げるばかりであった。
- ゴールまであとわずかであるが、苦しさに思わず音を上げた。
- この価格競争はどちらかが音を上げるまで続くだろう。
「音を上げる」の類語
「挫折する」
「挫折する」とは、「事業や計画などが中途で失敗して、だめにになること。また、そのために、気力や意欲をなくすこと」という意味です。「気力などを失い降参するさま」が、「音を上げる」と類似しています。
[例文]
- 天候の影響によりこの事業は挫折してしまった。
- 挫折するようなことばかり考えていては前に進めない。
「放棄する」
「放棄する」とは、「投げ捨ててかえりみないこと。権利・資格などをすてて行使しないこと」という意味です。「降参してあきらめてしまう」部分が「音を上げる」と類似しているといえるでしょう。
[例文]
- 彼は責任を放棄して逃げてしまった。
- 今回は権利を放棄して選挙には行きません。