「音を上げる」の正しい意味と使い方|よくある間違い「根を上げる」との違いも解説

「根を上げる」という表現を使ったことはありませんか?実はこれ、よくある間違いなんです。正しくは「音を上げる」という慣用句。読み方が同じなので混同しがちですが、意味や使い方をしっかり理解しておくと、会話や文章で恥をかかずに済みますよ。今回はこの言葉の正しい意味や使い方、類語まで詳しく解説していきます。

音を上げるとは?音を上げるの意味

苦しさや困難に耐えきれずに弱音を吐くこと、または降参することを意味します。

音を上げるの説明

「音を上げる」の「音」は「ね」と読み、ここでは「弱音」や「声」を指します。一方、「上げる」は声を大きくする、または発するという意味合いを持ちます。つまり、苦しい状況で思わず出てしまう弱音や悲鳴を表現しているわけですね。よくある間違いの「根を上げる」は、根性や忍耐力を意味する「根」を使っているため、本来の意味とは異なってしまいます。この表現は、仕事やスポーツ、日常生活など、さまざまな場面で使われることが多く、例えば「厳しいトレーニングに音を上げる」や「長時間の作業に音を上げる」といった使い方をします。

言葉の響きが似ているために起きる間違いは多いものですね。正しい表現を覚えて、スマートな会話を心がけたいものです。

音を上げるの由来・語源

「音を上げる」の語源は、中世の拷問や尋問の場面にまで遡ります。当時、苦痛に耐えきれずに発する悲鳴やうめき声を「音」と呼んでいました。特に戦国時代には、捕虜や敵兵が拷問に耐えかねて弱音を吐くことを「音を上げる」と表現したのが始まりとされています。江戸時代になると、この表現は一般にも広がり、相撲や武道の世界で苦しさに耐えきれずに声を出すことを指すようになりました。現代では物理的な苦痛だけでなく、精神的・心理的な苦境に立たされた時にも使われるようになり、言葉の意味が拡大してきた歴史を持っています。

言葉の由来を知ると、日常使う表現にも深い歴史が隠されているのがわかりますね。

音を上げるの豆知識

面白いことに、「音を上げる」と似た表現に「音を吐く」がありますが、こちらは逆に本音や本心を語るという意味で使われます。また、この言葉がよく誤用される「根を上げる」は、根気や忍耐力が尽きるという意味で使われ始めた比較的新しい表現です。さらに、英語では「throw in the towel」(タオルを投げ入れる)というボクシング用語が似た意味で使われ、言語を超えて「降参」を表す表現にスポーツ由来の言葉が使われる共通点が見られます。

音を上げるのエピソード・逸話

有名な逸話として、プロ野球の長嶋茂雄元監督が現役時代に語ったエピソードがあります。1958年のシーズン中、連続試合出場と過密日程で体力的に限界を感じていた長嶋選手は、当時の水原円裕監督に「もう音を上げそうです」と本音を漏らしたそうです。しかし水原監督は「お前が音を上げるなら、誰がこのチームを引っ張るんだ」と励まし、結局そのシーズンは規定打席に到達。このエピソードは、強者でも限界を感じることがあるという人間味と、それを乗り越える精神力の重要性を物語っています。

音を上げるの言葉の成り立ち

言語学的に見ると、「音を上げる」は「音」が目的語で「上げる」が動詞という構造を持ちます。ここでの「音」は単なる物理的な音響ではなく、心理的な苦痛の表出としての「声」を意味する転義表現です。また、この表現は「自動詞的他動詞」の特徴を持ち、主体の内的状態の変化を他動詞形式で表現する日本語独特の構文パターンを示しています。歴史的には、中世日本語から近世日本語への移行期に、具体的な行為から抽象的な心理状態を表す表現へと意味が拡張された好例であり、日本語の意味変化のプロセスを研究する上で重要な語彙の一つと言えます。

音を上げるの例文

  • 1 年末の大掃除で押し入れを整理していたら、思い出の品が次々出てきて、整理するのに音を上げそうになりました。
  • 2 新しいスマホの設定が複雑すぎて、説明書を読みながらもついに音を上げて友達に助けを求めた。
  • 3 子供の夏休みの自由研究、毎日一緒に頑張ってたけど、最終日前日に親の私が先に音を上げてしまった。
  • 4 ダイエットで糖質制限を始めたのはいいけど、3日目にして甘いものが食べたくて音を上げそうになった。
  • 5 オンライン会議が連続で5時間も続き、集中力が切れてさすがに音を上げて休憩をお願いした。

「音を上げる」と類似表現の使い分け

「音を上げる」にはいくつか類似した表現がありますが、それぞれ微妙にニュアンスが異なります。適切な場面で使い分けることで、より正確な意思疎通が可能になります。

表現意味使用場面
音を上げる苦しさに耐えきれず弱音を吐く長期間の忍耐後の限界表明
ギブアップする完全に諦めて放棄するスポーツやゲームなどでの降参
観念するやむを得ないと悟る避けられない結果を受け入れる時
白旗を揚げる明確に降伏する戦いや競争での明確な敗北宣言

「音を上げる」は、あくまで「弱音を吐く」段階であり、完全な諦めや降伏を意味するわけではない点が特徴です。

現代における使用上の注意点

「音を上げる」は日常的に使われる表現ですが、使用する場面や相手によっては注意が必要です。

  • ビジネス上の重要な交渉や公式な場面では、より直接的な表現を使う方が適切
  • 目上の人に対して使う場合は、事前にある程度努力したことを伝えてから使用する
  • 他人が「音を上げる」と言った時は、ねぎらいの言葉を添えるのがマナー
  • 自分自身の弱さを認める表現なので、使い過ぎるとネガティブな印象を与える可能性あり

苦しみに耐えることは美徳だが、時には音を上げる勇気も必要だ

— 吉野源三郎

関連用語と表現のバリエーション

「音を上げる」に関連する表現や、状況に応じて使えるバリエーションを覚えておくと、表現の幅が広がります。

  • 「音を上げそう」:限界が近いがまだ耐えている状態
  • 「音も上げず」:一切弱音を吐かずに耐え抜くこと
  • 「ここまで音を上げずに」:これまでの忍耐を称える表現
  • 「ついに音を上げて」:長い忍耐の末の限界表明

また、「音を上げる」と組み合わせて使える表現として、「心が折れる」「根性が尽きる」「忍耐の限界」などがあります。これらの表現を状況に応じて使い分けることで、より豊かな表現が可能になります。

よくある質問(FAQ)

「音を上げる」と「根を上げる」、どちらが正しい表現ですか?

正しい表現は「音を上げる」です。「根を上げる」は誤用で、よくある間違いの一つです。読み方が同じ「ねをあげる」であるため混同されやすいですが、苦しさに耐えきれず声を出すという本来の意味から考えると「音」が正しい漢字になります。

「音を上げる」はどんな場面で使えばいいですか?

主に困難な状況や苦しい場面で、それまで耐えていたが限界が来て弱音を吐くときや降参するときに使います。例えば、厳しい仕事のノルマ、難しい課題、長期間の我慢が必要な状況などで、心が折れそうになったときの表現として適切です。

ビジネスシーンで使っても大丈夫ですか?

カジュアルな会話では問題ありませんが、フォーマルなビジネスシーンでは「困難に直面する」「限界を感じる」「降参する」など、より直接的な表現を使う方が適切です。同僚との雑談などでは使えますが、上司への報告や公式な場面では避けた方が無難でしょう。

「音を上げる」の類語にはどんなものがありますか?

「挫折する」「諦める」「屈服する」「白旗を揚げる」「ギブアップする」「投了する」「観念する」などが類語として挙げられます。状況に応じてこれらの表現を使い分けることで、より豊かな表現が可能になります。

この表現を使うときの注意点はありますか?

他人が「音を上げる」と言った場合、その人の苦労や努力をねぎらう気持ちで受け止めることが大切です。また、自分が使うときも、単なる弱音ではなく、ある程度努力した上での限界表明として使うと、より適切な使い方になります。