「好き」とは
「好き嫌い」という表現があるように、特定の物事に対して肯定的な「好き」と否定的な「嫌い」という言葉は対義語(反対語)の関係です。
「好き」という言葉には、以下のような意味があります。
- (物事に)心がひかれること。気に入ること。また、そのさま:「好きな人、好きな食べ物」など
- 何かに偏った好み。物好き:「彼は物好きな人だ、蓼食う虫も好き好き」など
- 好色。(異性に対して)みだらな気持ちを抱くこと:「好き者、男好き」
- 自分の思うままに振る舞うこと。気ままなこと:「好きに遊ぶ、好きに行動する」など
いずれの意味も、人が何かに魅力を感じるといったポジティブな思いが背景にあります。そして、その物事を自分に引きつけたい、逆に、自分がそれに近づきたい、大事にしたいといった行動に結びつくのです。
「好き」の使い方
上記の4つの意味について、それぞれ使い方をご紹介していきます。
- 私が好きな映画は洋画のラブストーリーです。
- 今日もカレー?ホントに君はカレーが好きだね。
- 「英雄色を好む」と言うけれど、歴史上の英雄は本当に好き者が多かったらしい。
- オーナー社長はワンマンで、好き勝手に人事を決めるから優秀な人材がみんな離れていく。
「好き」という表現は、おそらく1の意味で一番よく使われているでしょう。「大好き」という言い方もよく使われますね。また、2の意味では、人気のない人や物を好んだり、好みが偏ったりしている場合に用いられます。
「好き」の類語
1.「心がひかれる。気に入る」
【愛好】(あいこう)
好きな物事を趣味などにして楽しむことです。特定の物事を愛好している人のことを「愛好家」と言い、愛好家が集まりを「愛好団体」など呼びます。1だけでなく、2(ときには3)の意味の「好き」の類語です。
【首っ丈】(くびったけ)
誰かにすっかり夢中になることを、足の先から首まではまり込む様子にたとえた表現です。おもに、恋愛について用いられます。
【目がない】
心を奪われて、思慮分別(しりょふんべつ)をなくすほど好きなことという意味を持っています。おもに、食べ物や飲み物に対して用いられる言葉です。
[例文]
- 織田信長が茶を愛好したので、当時の戦国武将はみな茶道を学んでいたそうだ。
- 彼女はアイドルのAくんにすっかり首っ丈だ。
- 父は日本酒には目がないのですが、肝臓が悪いのであまり勧めないでください。
2.「何かに偏った好み。物好き」
【酔狂】(すいきょう)
原義は酒に酔って普通ではない状態、普通ではないことを指しますが、物好きの意味でも用いられます。
【道楽】(どうらく)
「道楽」には複数の意味がありますが、「好き」に近いのは、本職以外の物事(趣味など)にふけるという意味です。
【物見高い】(ものみだかい)
何でも珍しがる様子、強い好奇心を持っているという意味です。好みが偏っているという意味はありませんが、物好きに通じます。
[例文]
- 寒中水泳とは酔狂なことだ。
- 彼は食い道楽だから、美味しいお店を沢山知っている。
- 物見高い彼女は、ついつい事故現場に足を運んでしまった。
3.「好色」
【多情】(たじょう)
「多情」には複数の意味がありますが、「好き」に通じるのは、異性に対する愛情が移ろいやすいこと、気が多いという意味です。
【鼻の下が長い】
色事を好み女性に甘いこと、そのような男性を言います。「鼻の下を伸ばす」や「鼻下長」(びかちょう)なども同義です。
[例文]
- 彼女は多情な女性だが、不思議と男性の恨みはあまり買わないようだ。
- 大御所俳優は若い女性に囲まれて、鼻の下が長くなっている。
4.「自分の思うままに振る舞うこと。気ままなこと」
【三昧】(ざんまい)
自分がやりたいことだけをやる状態を指しますが、おもに、「ギャンブル三昧」「旅行三昧」といった複合語として用いられます。
【出鱈目】(でたらめ)
振ったサイコロの「出たその目のままにする」というのが本来の意味で、「出鱈目」は当て字です。いいかげんであること、後先考えずに勝手にすることを指します。ただし、「好き」にはいいかげん、首尾一貫していないといった意味合いはありません。
【奔放】(ほんぽう)
常識や規則を逸して気ままに振る舞うという意味です。「奔」という漢字には、好き勝手にする、勢い任せに行動するといった意味があります。
[例文]
- 彼は会社経営が傾いても贅沢三昧な生活から抜け出せずにいる。
- 彼の出鱈目な行動には毎回振り回される。
- 私は娘に甘く、奔放に育てすぎたのかもしれない。
「好き」の対義語:「嫌い」
「好き」の対義語(反対語)と言えば、だれでも知っている「嫌い」です。「好き」「嫌い」は、人が比較的早い時期(幼少期)に身に着ける感情表現の一つでしょう。
[例文]
- 私は、彼の性格の中で、すぐに大声をあげるところが嫌いだ。
- 嫌いなものを聞かれたけど、たくさんありすぎて一度には答えられない。
「嫌い」は「好きの反対」という意味のほかにも次のような意味があります。
- 好ましくない傾向:「家柄を鼻にかける嫌いがある」など
- 区別。差別:「男女の嫌いなく受け入れる」など
- (名詞などのあとについて)特定のものをきらう:「人間嫌い。食わず嫌い」など