「奪う」とは
「奪う」には、以下のような意味があります。
- 他人の所有物を本人の意思に反して無理に取り上げる。
- 人が持っているものやそこにあるべきものを失わせたり、取り去る。
- 人の注意や関心などを強く引きつける。夢中にさせる。
- スポーツ競技や勝負事で得点したり、地位などを獲得する。
1と2の意味は、人の権利を侵害したり、物理的に物を失わせるような行為や状況を意味します。特に、1は、犯罪行為と密接に関係しています。3は、スポーツ選手のファインプレー、映画や演劇での俳優の迫真の演技などに夢中になったりすることです。
「奪」の字義
「奪」という漢字は、人を表す「大」+鳥を表す「隹」+手を表す「寸」からなり、人がわきに挟んで持っていた鳥を手で抜き取る(あるいは、鳥が逃げ出す)というさまの象形と言われています。そこから、力ずくで取る、失う、なくすという意味が生じました。
「奪う」の使い方
次に、「奪う」の使い方を意味ごとにご紹介しますが、1と2の意味は混同しやすい部分もあり、辞書によっても扱いが異なる場合があります。そのため紹介する例文には、1と2を入れ替えても間違いとは言えないものもあります。
1の意味での使い方
他人の物を無理やり取り上げるという1の意味で思い浮かぶのは、強盗や恐喝といった犯罪行為ではないでしょうか。しかし、それ以外でも本人の意思に反して取り上げる場面はたくさんあります。
【例文】
2の意味での使い方
2の意味で最たるものは、命を奪うことでしょう。命を奪うことは本人の意思に反することですが、命は所有物ではなく、本人から取り上げても、取り上げた者の所有物になるわけではないので2の意味で説明しています。しかし、1の意味で説明している辞書もあります。
【例文】
3の意味での使い方
世の中には人を魅了し、夢中にさせたり、引き付ける物事はいろいろあります。そういう時に「奪う」を使います。
【例文】
- 若手スケート選手の見事な4回転ジャンプが世界中の観戦者の目を奪った。
- アラスカで見たオーロラの美しさに心を奪われた。
4の意味での使い方
スポーツに限らず、対戦型の競技やゲームでは相手より多くの得点を獲得することを「奪う」と言いますし、いろいろなタイトルを手にした時にも「奪う」を使います。その他、選挙で議席を争って当選した場合も、「議席を奪う」と言います。
【例文】
- 史上最年少棋士が、破竹の勢いで棋界の二つのタイトルを奪った。
- 最終回、ツーアウト満塁の場面で4番打者から三振を奪い、勝利投手になった。
「奪う」の類語
「略奪」
「略奪(りゃくだつ)」は、「掠奪」とも書き、暴力的に取り上げることです。「略」と「掠」は、どちらにも、かすめ取る、奪い取るという意味があり、1の意味の類語です。
【例文】
- 戦国時代、戦に敗れた武士たちが野武士となり、付近の村で略奪の限りを働いた。
- 昔、白バイ警官に化けて3億円を略奪した犯人はまだ捕まっていない。
「奪取」
「奪取(だっしゅ)」も、力づくで奪い取るという意味です。「略奪」と同じように武力や暴力などで奪い取る場合にも使いますが、それ以外の実力などでタイトルや地位を手に入れることも「奪取」と言っています。1、2及び4の意味の類語です。
【例文】
- ボクシングのタイトルマッチで激しい打ち合いの末、挑戦者がチャンピオンを倒してタイトルを奪取した。
- 激戦の結果、選挙で大勝し、与党から政権を奪取した。
「ひったくる」
「ひったくる」は、無理やり奪い取ることです。引っ張って奪い取るという意味の「ひきたくる」が変化したもので、「引っ手繰る」と漢字表記します。これも1の類語です。
【例文】
- 原付に乗った二人組に財布の入ったエコバッグをひったくられた。
- 絵を描いていると、突然、弟がクレヨンをひったくって、ぼくの絵に線を書いた。