「不躾」とは
「不躾(ぶしつけ)」とは、礼儀を欠いていて失礼なこと、唐突で礼儀を欠いていることを意味します。「無躾」や「不仕付け」とも書きますが、これらの表記はあまり使われていません。
「不躾」は、「躾(しつけ)」を「不」で打ち消している言葉ですが、「躾」とはどういう意味なのでしょうか。最初に「躾」について意味を見ていきます。
「躾」とは
「躾」は、礼儀作法や技芸などを教えて身につけさせることを意味する「しつける」の連用形「しつけ」が名詞化した言葉です。「躾」という漢字は、身(からだ)を美しく飾るという意味で、「しつけ」を表すものとして作られました。
また、「躾」には、ほかに以下のような意味もあります。
- 裁縫における仮縫いのこと。(「仕付け」とも書きます)
- 田畑に作物を植え付けること。
- ものを作りつけて置いておくこと。
【例文】
- 昔は、子供の躾を妻に任せきりにしていた夫が多かった。
- 母から和裁を習っていて、今は仕付け(躾)の練習中です。
- 雷警報が出ているから、苗の仕付け(躾)は休みにしよう。
- 引っ越したマンションの洗面所に棚を仕付ける(躾ける)ことにした。
「不躾」の使い方
上記で見た「躾」がない、できていないところから、「不躾」となるわけですね。「不躾」は、自分が相手に対して接する時、または、他人が自分に対して接する時、失礼な態度や振る舞いがあった時に使います。
例えば、年齢や立場をわきまえない傲慢な態度や相手の感情を逆なでするような物言いなどに対して「不躾」と言います。また、前置きや断りの言葉もなしに本題に入ったり、初対面や面識が少ない相手に踏み込んだ話をするような場合にも「不躾」と言われることがあります。
さらに、相手に伝えにくいような内容を言わなければならないような時に、無礼を承知で敢えて言いますという意味の前置きとして「不躾」を使う場合もあります。
「例文」
- 娘が初めて家に連れてきた恋人は、初対面なのに家具や食器の値段を尋ねる不躾な男だった。
- 昨日来た営業担当者の不躾な態度に部長がカンカンに怒ってる。
- 初対面の方に大変不躾なお願いですが、身元を明らかにするものをご提示いただけないでしょうか。
- 到着されたばかりで誠に不躾で申し訳ありませんが、前の方が渋滞で遅れておりますので、先生から先にお話しいただけないでしょうか。
- 突然、このような不躾な手紙を差し上げる無礼をお許しください。
「不躾」の類語
「無礼」
「無礼(ぶれい)」は、礼儀をわきまえないこと、礼儀を欠くこと、ぶしつけなことです。時代劇などで武士が町人に「無礼者。手打ちに致してくれる」といったセリフがありますが、身分制度が厳格な武家社会で「無礼」は命がけの行為だったのかもしれません。
現代社会でも、無礼な態度や物言いは、相手を不快にしたり、怒らせたりして、自分の立場が悪くなることが往々にしてあります。そういうことを避けるためにも、「不躾」と同じように、言いにくいことを言う場合の前置きとしても使えます。
【例文】
- さっき社長に無礼な口をきいていた男は何者ですか。
- 無礼なことを承知で申し上げますが、あなたのその考え方は間違っています。
「失敬」
「不躾」の類語としての「失敬(しっけい)」には、相手に対して、敬意を欠いている、礼を失っているという意味があります。最近ではあまり使われないちょっと古風な言い方ですが、小説などでは見かけることがあります。
また、「失敬」には、ほかに下記のような意味もあります。
- 人と別れるときや詫びるとき。「これで失敬する」「先日は先に帰ってしまい、失敬しました」
- 無断でものを持って帰ること。盗むこと。「ちょっと庭の柿を失敬してきたよ」
【例文】
- なんだあいつは。挨拶もなしに失敬な奴だ。
- 夕べはちょっとはしゃぎすぎて、大変失敬しました。
「単刀直入」
「単刀直入(たんとうちょくにゅう)」は、一人で刀を持って敵陣に切り込むことですが、そこから転じて、あいさつや前置きを省いて、すぐに本題に入ることを意味しています。「不躾」と同じように、話の前置き代わりに「単刀直入に申し上げますが」といった形で使います。
【例文】
- 単刀直入に聞くけど、君は本当に僕と結婚する気があるのかい。
- もっと時間をかけて説得しようかとも思ったけど、君の言う通り、単刀直入に問題点をぶつけて良かったよ。先方から、いい返事が返ってきた。