「耽溺」とは?意味や使い方を類語も含めてご紹介

明治42年に発表された岩野泡鳴(いわのほうめい)の『耽溺』という小説があります。初期自然主義文学の代表作と言われ、愛欲におぼれる主人公の生活を描いた作品です。ここから「耽溺」の意味は推測できそうですが、この記事では「耽溺」の意味や使い方などをご紹介します。

目次

  1. 「耽溺」の意味とは
  2. 「耽溺」の使い方
  3. 「耽溺」の字義
  4. 「耽溺」の類語

「耽溺」の意味とは

「耽溺(たんでき)」とは、特定の物事に夢中になって他の物事を顧みないことです。多くの場合、酒やギャンブル、色事、薬物などに溺れることを言いますが、最近では、スマホやゲームなどに耽る(ふける)ことも「耽溺」という言葉で表現する例も見られます。

また、医療の分野では、「narcotic addiction(麻薬中毒)」などの「addiction(中毒)」ことを「耽溺」と表現することがあります。

「耽溺」の使い方

「耽溺」という言葉は、普段の会話などではあまり使われることがなく、論文のような専門性の高い文章や文芸作品などで使われることの多い言葉です。会話などでは、「中毒」や「依存」などに置き換えられて使われることが一般的でしょう。

他を顧みないほど集中するという意味があるものの、度を越さないように節度を保って、趣味や嗜好楽しむことができる人もいます。そのような人でも、他の人と比べて集中度が高い場合には「耽溺」と言うことができるでしょう。

「例文」

  • 通勤や電話応対の煩わしさから解放されるテレワークは、やるべき仕事スムーズに済ませれば、好きな読書に耽溺できるのでありがたい。
  • 大学時代の友人が、違法薬物に耽溺して中毒になり、職も失って、入退院を繰り返していると噂に聞いた。
  • 堅物だった兄は、就職して接待に明け暮れているうちに、酒色に耽溺するようになってしまった。
  • 子供の起立性障害は、スマホやゲームに耽溺するのが原因だと言う人がいる。

「耽溺」の字義

上記のように「耽溺」は、物事に「耽る(ふける)」「溺れる(おぼれる)」ということです。ここでは、それぞれの漢字の字義について見ていきます。

」は、人が枕に頭を沈めるさまを表す「冘」に「耳」をつけて、耳が垂れ下がるという原義から、物事に集中して深く沈む、のめり込むという意味の「ふける」の借字となっています。

また、「」は、たわんだ弓と柔らかい毛の象形「弱」が「水」に濡れてぐったりとなったさまから、溺れるという意味を持つ漢字です。このような成り立ちから、物事に耽って溺れるという「耽溺」が生まれています。

「耽溺」の類語

先に挙げた「中毒」や「依存」は、「耽溺」と置き換えて使うことができる類語ですが、ここではその他の類語をご紹介します。

「熱中」

「熱中(ねっちゅう)」は、他のことが目に入らないほど何かに夢中になることです。しかし、「耽溺」のように、溺れて深みにはまり、中毒になってしまうようなレベルの夢中ではありません。

【例文】

  • 小学生の息子は、今、将棋に熱中していて、宿題に身が入りません。
  • 電車でスマホゲームに熱中していたら、駅を乗り過ごしてしまった。

「没頭」

「没頭(ぼっとう)」も、他のことが目に入らないほど何かに夢中になることです。「没」には、打ち込む、はまり込むという意味があり、頭、つまり、意識が何かにはまり込んでしまうことを表した熟語と言えるでしょう。

【例文】

  • 実験に没頭していたら、朝になっていた。
  • 仕事に没頭し、家庭を顧みない夫とは喧嘩が絶えない。

「放蕩」

「放蕩(ほうとう)」は、好き勝手にふるまうことで、特に、酒色やギャンブルなどに耽ること、そのために仕事などのやるべきことを疎かにし、顧みないことです。

「放蕩息子」や「放蕩の末に先祖代々の財産を失う」といった言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。「耽溺」は、時に財産や健康を失いますが、「放蕩」は、どちらかというと財産を失うという結果を招くことが多いでしょう。

「蕩」は、「くさかんむり」と「湯」の組み合わせで、草が水の中で揺れ動くさまを表し、ほしいままにするという意味の「放」との熟語で上記のような意味を持ちます、「蕩」の「湯」は、水のことを表しています。

【例文】

  • 祖父の起こした家業を二代目の父が放蕩の末に倒産に危機に陥れ、三代目の私がどうにか立て直した。
  • ボーナスを一晩で放蕩した夫に愛想をつかし、離婚することにした。


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