「貸与」とは?
「貸与」とは、金や物を貸し与えること、返却を条件としたうえで金品の使用を許可することを意味する言葉です。貸し与えるというのは、紛らわしい表現とも言えますが、貸すかたちで暫定的に与えるという意味であり、完全に与える(=相手のものにする)ということではありません。
「貸与」は、(たいよ)と読みます。「貸」は、「たい。か-す」と読み、「貸与」のほか、「賃貸」(ちんたい)、「貸借」(たいしゃく)、「貸家」(かしや)、「貸衣装」(かしいしょう)などがあります。
一方、「与」は、「よ。あた-える」と読み、「貸与」のほかには、「贈与」(ぞうよ)、「給与」(きゅうよ)、「賞与」(しょうよ)などの言葉があります。
「貸与」の対象とは?
「貸与」の辞書上の定義においては、その対象に「金品」も含まれていますが、実際は物品に対して使われることがほとんどです。金銭においては、「奨学金の貸与」などの例があるものの、「貸付」「融資」が一般的です。
物品の「貸与」対象は、枚挙にいとまがありません。代表例では、職場のユニフォームやパソコンなどの事務機器、社用車などが挙げられます。高額な貸与物品の場合は、貸し手と借り手の間で貸与の契約書を交わすこともあります。
小さなものでは、事務に必要な文具類なども対象となります。これらは消耗品として返却することなく廃棄するケースも多くなりますが、たとえボールペンであれ、私物化して何本も家に持ち帰るなどは違反行為です。
「与」の字の意味
「与」には、「あたえる=やる。相手のものにする」という意味があるため、「貸与」も貸与品をもらえると誤解されることがあるかもしれません。「与」が使われているのは、貸与される物品の性質や取り扱いなどに起因していると言えます。
ビジネスにおける「貸与」を例に考察してみましょう。企業や雇い主などが、職種の必要に応じた物品を労働者に貸し出すのが「貸与」であり、貸与された側は、退職や担当の業務が終わるまでその物品を自らが独占的に使用できるものとして使います。
一時的、短期的な場合は少なく、制服などは自分のサイズのものを貸与され、自分専用で着続けます。パソコンであれば自分のデータを保存します。このように、使用期間が長いこと、独占的に使用できることから、「与」が使われているのではないでしょうか。
「貸与」の使い方
「貸与」は、上述したように基本的にビジネスで用いることの多い言葉であるため、意味上は可能ですが、通常、私的な貸し借りにはまず使いません。
業務上での「貸与」は、雇用契約や人材募集の条件の中で多く見聞きします。「制服貸与」などのように個々の物品を記載するか、「貸与品」のように項目を設けて羅列するなど状況に応じて使い分けます。
名詞として「~貸与」などと用いる以外では、「~を貸与する」「~を貸与される」という形で使うことが一般的です。
「貸与」の例文
- 制服とデータ管理用のパソコンは貸与しますが、紛失および過失による破損の場合は弁償して頂きます。
- 学生時代に親が失業したが、奨学金の貸与を受けて、大学は卒業できた。
- レストラン出店候補の場所で土地貸与の条件から検討したが、あまりに高額なのであきらめた。
「貸与」の類語
「貸出」
「貸出(貸し出し)」は、(かしだし)と読みます。金銭、物品などを貸すことを意味しますが、基本的に私的な貸し借りには使いません。図書館の本や、いわゆるレンタル業の業務も「貸出」に当たります。
貸与と異なる点は、「貸出」の多くは、期間が明確に定められていること、貸出条件などの合意や場合によっては契約書などを交わすケースが多いことなどが挙げられます。
物品の場合、「貸与」は、返却の際に貸与時の原状に戻す義務のないことがほとんどですが、「貸出」は、それそのものがビジネスとなっていることが多いため、返却時の原状回復が条件となっていることが多いようです。
「貸付」
「貸付」(かしつけ/たいふ)は、金銭、権利、土地、建物などを貸す場合の言葉です。扱う対象が大きいだけに、期間や金額、金銭であれば利率、担保などの詳細な条件を契約書にて取り交わすことが基本です。
金融業、不動産業などの特定の職種において用いられる言葉であり、一般的な貸し借りに使うものではありません。