「枚挙」の意味
「枚挙」<まいきょ>は、いちいち数えることや一つ一つ数えることを意味する言葉です。そのまま名詞として用いられるほか、「枚挙する」の形でサ行変格活用の動詞としても用いられます。
ただ、「枚挙」は堅い印象を与えることもあるため、日常的な会話ではあまり使われません。たとえば運動会の玉入れで、「入った玉の数を枚挙しましょう」と言われたら戸惑ってしまいますよね。ですから、一般的に、物を数えるときは「数える」を用います。
「枚」の字義
「枚」は、主に平たいものを数えることばとして用いられています。紙やお皿、花びらなどを「一枚、二枚……」と数えるのは、その典型例です。しかし、もともとは、平たいものに限らず、さまざまな物を数える言葉でした。
「枚挙」の場合も、数えるものは平たいものに限りません。むしろ、「枚挙」は、物理的なものよりも抽象的なものを対象としている場合が多いでしょう。
「挙」の字義
「挙」には、広く「あげる」という意味があり、物理的にも抽象的にも、何かを上にあげる場合に幅広く使われます。
「挙」が物理的に「あげる」ことを指している言葉には「挙手(手を上げる)」があります。また、抽象的に「あげる」ことを表している語で、比較的よく使われるのは、「挙兵(兵を挙げる)」や「推挙(推し挙げる。ある人をその地位に推薦する)」などでしょう。
「枚挙」の使い方・例文
- これだけ件数が多いと、実際に枚挙していくわけにもいかないだろうな。
- 枚挙的帰納法などと言われても、数学が苦手な私にはチンプンカンプンだ。
「枚挙」は上の例文のように「枚挙する」という動詞の形でも使われますが、多くの場合は、「枚挙にいとまがない」という慣用句で用いられます。次はこの慣用句の意味をご紹介します。
「枚挙にいとまがない」の意味
「枚挙にいとまがない」とは、数え上げるときりがないという意味の慣用句です。また、それほどまでに数が多いことを示すのにも用います。
「枚挙」は数えるという意味ですが、では「いとま」はどういう意味なのでしょうか。これは、何かをするのに必要な時間のゆとりを意味します。
つまり、「枚挙にいとまがない」とは、数える時間のゆとりがないというのがもともとの意味です。「いとま」を漢字で表記する場合は、「暇」や「遑」と書きます。
「枚挙にいとまがない」の 使い方・例文
- 偉大な作家である彼の影響を受けている若手は、枚挙にいとまがないだろう。
- 彼が校則に違反した例は、それこそ枚挙にいとまがありませんよ。
- 彼とは付き合いが長いから、彼についてのエピソードは枚挙にいとまがない。
「枚挙にいとまがない」は良いことに対しても、悪いことに対しても使われます。また、とくに善悪の区別がなく、単純に数が多いことを表すときにも用いられる表現です。
「枚挙」の関連語
「列挙」
「列挙」<れっきょ>は、ある観点を満たす要素を一つ一つ数えて並べることという意味の言葉です。名詞ですが、おもに、「列挙する」という動詞の形で用いられます。
【例文】
職場の改善すべき問題点を列挙していくと、ハード面よりソフト面に問題が多いことがわかった。
「毛挙」
「毛挙」<もうきょ>という語は、あまり聞きなれないかもしれませんね。非常に細かいことまで取り立てることを指し、多く、「毛挙する」の形で用いられる言葉です。
【例文】
だれも気にしないような部分まで毛挙する必要はあるのでしょうか。
「数え上げる」
「数え上げる」は「枚挙する」と同じく、一つ一つ数えるという意味の動詞です。「枚挙」に比べて柔らかい印象ですね。数える対象となるのは同じ種類のもので、数が少なくない場合に使われます。
【例文】
子どものころはビー玉が宝物で、たくさんのビー玉を数え上げては喜んでいたものです。
「数え立てる」
「数え立てる」は一つ一つとり立てて数えることという意味です。特に強調したいことについて、指折り数えるときに使われます。注意が必要なことや、ネガティブな事柄に使われることが多いようです。
【例文】
そんなにむきになって私の欠点を数え立てなくてもいいじゃないか。
「枚挙」の英語表現
「枚挙」の英語表現にはいくつかあります。代表的なところでは、名詞の'enumeration'や動詞の'enumerate'で表しますが、もっと平易な言葉、'count'(数えること・数える)と訳すことも可能です。
また、「枚挙にいとまがない」は次のように意訳します。
- 'too numerous to count'(数えるには多すぎる→枚挙にいとまがない)
- 'too numerous to mention'(言及するには多すぎる→枚挙にいとまがない)