「本望」とは
「本望(ほんもう)」には、以下のように二つの意味があります。
- 本来の望み。もともと持っている志。
- 望みを達成して喜び、満足すること。
「本」という漢字は「木」の根っこの太い部分に印「-」をつけて、太い根を表します。そこから転じて、物事の中心という意味を持ち、さらに、もと、はじめ、もともと、ほんとうの、それそのものといった意味を表します。
一方の「望」の原字は「朢」です。この漢字は、目を表す「臣」と人が背伸びした姿の象形「壬」で、人が背伸びして遠くの月(満月)を待ち望む様子を表すところから、のぞむ、まちのぞむ、ねがうという意味を持つようになりました。
「本望」の使い方
上記のような字義の漢字でできた「本望」は、ずっと心に抱き続けた願望や夢そのものを表したり、それが叶ったときの喜びや満足を表現するときに使います。長い間持ち続けた望みが叶うのですから、「本望」で表される気持ちは、大きなものと言えるでしょう。
1の意味の「例文」
- 忠臣蔵で有名な赤穂浪士たちは、本望であった主君の仇討ちを見事成し遂げた。
- 小説家になる夢を実現するために会社を辞め、苦節10年、40歳にして大きな文学賞を受賞して作家デビューし、本望を果たした。
- 幸せな結婚生活を送り、子供を育て、孫を抱くのが私の本望でした。
2の意味の「例文」
- たとえ貧乏な暮らしでも、大好きな人と一緒になれるのなら本望です。
- 命がけで逮捕した無差別殺人犯の死刑判決がようやく確定して、殉職(じゅんしょく)した彼も本望だろう。
- 子供が小さく、家のローンも残る身としては、小さな会社とは言え、同じ業界で再就職できたことは本望だ。
「本望」の類語
「本懐」
「本懐(ほんかい)」は、本来の願い、もともと持っている希望という意味で、「本望」と同じです。「懐」という漢字には、おもう、胸に抱く、懐(ふところ)に抱えるという意味があることから、以前から心の中に抱いていた願い・希望ということになるわけです。
作家城山三郎氏の小説に『男子の本懐』という作品があります。第一次世界大戦後の慢性的な通貨不安を克服するために軍部の圧力と闘いながら、軍縮と金本位制の復活に命がけで取り組んだ当時の首相・浜口雄幸と大蔵大臣・井上準之助が描かれています。
「本望」も「本懐」も、人生を賭けたり、生命を賭(と)して取り組むような願望などに使うことの多い言葉と言えるでしょう。
【例文】
- 鎮痛剤を打ちながら怪我の痛みに耐え、ようやく金メダルを獲得して本懐を遂げた。
- 渡米してハリウッドで映画俳優として独り立ちし、本懐を遂げて日本に帰ってきた。
「本意」
「本意(ほんい)」は、①本来の気持ち、②本当の気持ち、本心のことです。このうち、①の本来の気持ちは、もともと持っていた願いという「本望」と同じような意味ですが、「本意」には、願い以外の気持ちも含んでいるという違いがあります。
①の意味でも、②の意味でも「本意」を否定的に使う場合には、不本意とか本意ではないという表現がよく使われています。
【例文】
- 両親の強い勧めでお見合いをすることにしたが、本意ではないから気が重い。
- この前の模擬試験は不本意な成績だった。
- 今回ことで図らずも有名になってしまいましたが、これは私の本意ではありません。
「念願」
「念願(ねんがん)」は、ずっと前からの願い、強く望んできた願いのことです。これは「本望」の2の意味と同義です。命を懸けるほどという強さこそないものの、心に深く念じるという「念願」のほうが、「本望」よりも身近で使いやすいと言えるのではないでしょうか。
【例文】
- 妻と二人、一生懸命働いて、念願のマイホームを手に入れた。
- 選手やファンの念願がかなって、応援していたサッカーチームが昇格した。