「海千山千」の意味とは?
「海千山千」(うみせんやません)とは、様々な経験を積むことで、世の中の裏も表も知り尽くしたずる賢い様子、または、そのような人物のことをいいます。
「海千山千」の由来
「海千山千」は、次のような古い言い伝えが簡略化された言葉です。
海に千年山に千年
【言い伝えの内容】
海に千年そして、山に千年も住み着いた蛇はやがて竜になる
蛇が竜になるということは、ありふれたものが立派なものに変わることを表していると考える人もいるかもしれません。しかし、四字熟語の「海千山千」は、厳しい環境に長年身を置くことで、生き抜くためのずる賢さや強かさ(したたかさ)が身についたことを表しています。
「海千山千」の使い方と例文
「海千山千」で表される人物像は、世の中の事情に通じていながらも、どこか信用ならない人です。褒め言葉として使うことはまずありません。
「海千山千」は、その人が切れ者であると認めながらも、悪知恵が働く人だと評したり、皮肉を言ったり、注意を促す場合に用いられます。
【例文】
- あの物腰の柔らかいお年寄りは、実はこの地域の顔役で、海千山千の人物だ。
- A社の経営陣は海千山千の連中だから、敵に回さない方が良い。
- 彼女は海千山千で、大立者(おおだてもの:重要人物)に取り入るのも上手い。
「海千山千」は褒め言葉ではない!
(C)
「Bさんは、何でもよく知っていらっしゃる!まさに海千山千ですね。」とお客様を褒めたら、「失敬な!」と気分を害された様子でした。何がいけなかったのでしょう…。
上のCさんのように、「海千山千」を経験豊かな人や知恵者(ちえしゃ:優れた知恵を持つ人)、百戦錬磨と同じような褒め言葉として使う人もいますが、これは誤用です。
今まで説明してきたとおり、「海千山千」はずる賢い人を指します。正しい意味を知っている人にしてみれば、こんなことを言われたら気分が悪いことでしょう。
CさんはBさんに対して、「博識(広く知っていること)ですね」「碩学(広く深く学問を修めていること)ですね」または、「まるで生きた図書館ですね」のように言うべきでした。
「海千山千」の類語
古狸
年老いた狸、つまり「古狸」(ふるだぬき)は、人や物に化けて人を騙すと言われています。転じて、「古狸」には、歳を重ね、経験を積んでずる賢くなった人という意味があるので、「海千山千」と同じように用いられます。
【例文】
- あの古狸め!まんまとだまして契約を反故(ほご)にしていきやがった。
- Dさんは古狸だからね。自分が有利になるようにのらりくらりと交渉してくるから、話がまとまるまで長くなりそうだ。
老獪
「老獪」(ろうかい)は、世間に揉まれ、様々な経験をしていくうちに悪賢くなった様子やそのような性格をいいます。「老」は年を取っている、長い経験を積んでいるなどの。「獪」はずるい、悪賢いという意味です。
【例文】
- E議員は、新聞の政治欄で老獪な政治家という評されている。
- 上司の立ち回り方は老獪で、私たち若手には真似できない。
したたか者
「したたか者(もの)」は漢字で「強か者」と表記します。もともとは非常に強く、簡単に相手に屈しない人という意味です。そこから派生して、たやすく他人の思う通りにならない手ごわい人を表すようになりました。
「したたか者」には、「海千山千」のようにずるいというネガティブな含みはありません。しかし、思い通りにならない相手に対して、煩わしさや悔しさを込めて「したたか者」と表現することはあるでしょう。
そのため、「海千山千のしたたか者」という用例は、同じような意味の言葉を重ねて強調している表現と言えます。
【例文】
- あの人は海千山千のしたたか者だ。話し合いをしても、一筋縄ではいかないね。
- 彼女はしたたか者なので、一旦クレームを出すとなかなか引き下がらないよ。