「碩学」とは?
「碩学(せきがく)」は、修めた学問が、さまざまに幅広く、深いこと。また、そのような人のことを意味する言葉です。ポイントは、ひとつの学問においてではなく、複数の学問それぞれを深く修めている、というところにあります。
代表的な人物として、イタリアのルネサンス期に活躍したレオナルド・ダ・ヴィンチを挙げることができます。名画を数多く残した芸術家ですが、解剖学、数学、建築学、天文学、力学、幾何学など、数多くの学問や分野に秀で、優れた業績をあげた天才です。
また、ノルマン朝の第3代イングランド王であるヘンリー1世は、政治経済のみならず、さまざまな文化や学問に造詣が深く、「碩学王」と呼ばれました。
漢字からたどる「碩学」
「碩学」の「碩」は、日ごろ目にすることが少ない漢字であり、読み方も意味も分かりづらいですね。漢字から「碩学」の意味を想像しづらいことも、現代でこの言葉が用いられる頻度が減った原因かもしれません。
「碩」の音読みは「せき」、訓読みは「おおきい」「おう」「ゆたか」。意味は、「大きい」「がっちりとしている」「内容が充実し、優れている」「立派である」などです。
したがって、「碩学」は、そのように学問を修めていること、そのような人、という意味になるのです。
「碩学」の使い方
「碩学」の使い方①状態を表す場合
修めた学問が幅広く奥深いという状態を指す場合の「碩学」は、次のように用いられます。
- 当大学で碩学な教授といえば、経済学部の鈴木太郎教授が挙げられる。経済学のみならず、小説を書き、気象予報士としての資格もあるのだから。
- 碩学の叔父は、会社経営をしつつも、語学や文学への造詣も深く、昨年は翻訳書が出版された。
「碩学」の使い方②人を表す場合
「碩学」の使い方で難しい点は、この二文字で「様々な学問を深く修めた人」そのものも表す部分ではないでしょうか。
一般的に、人間を表す場合は、学者、飛行士、医師、歌人など、「人」を表す漢字が付随しますが、「碩学」は「碩学者」とはなりません。違和感を覚えるかもしれませんが、人間そのものを表す「碩学」の使い方も理解しましょう。
- 本セミナーにおいては、碩学、山田博士を講師に招き、生物学だけではなく、社会学、文化芸術への知識も絡めながら、人間の在り方を語って頂く予定です。
- 人類におけるもっとも著名な碩学といえば、レオナルド・ダ・ヴィンチといえるだろう。
「碩学」の類語
「博学」の意味と使い方
「博学(はくがく)」とは、幅広い分野にわたり、豊富な知識を持っている、という意味です。「碩学」とその意味はまったく同じですが、「博学」の場合は、人そのものを表す意味は持ちません。したがって、人を指す場合は「博学者」となります。
現代においては、「碩学」の代わりに「博学」が用いられることがほとんどとなっています。また、会話においては、本来の意味よりも軽い感覚で使われることも多いようです。
少々いろいろな知識があるくらいのレベルでも、「博学だね!」などと言う場合も多くみられます。「博識」や「物知り」もこれに近い用いられ方をする言葉です。
- 文学部の坂本教授は実に博学で、講義では、文学上のことのみならず、社会学、文化、心理学などまで絡めて教えてくれるので、学生の人気が高い。
- 良子ちゃんは、テレビ番組を観ていても、いろいろなうんちくを語るし、若いのに博学だね。
「有識」の意味と使い方
「有識(ゆうしき)」とは、学問や知識、教養を備え、見識が高いこと、またその人を意味する言葉です。「碩学」と比べ、幅広い様々な学問を知っているということに重点はなく、知識と教養が深いことにポイントがあります。
「有識」で人そのものも表しますが、あまり用いられることはなく、「有識者」として表されることが普通です。報道番組やバラエティ番組などでコメンテーター・アドバイザーなどとして登場することも多い人々で、「知識人」もほぼ同じ意味を持ちます。
- 我が部の有識は、なんといっても田中君。複雑なトラブルが起こるたびに、部員に頼られているよ。
- 親による子供の虐待が増加しているため、専門家と有識者による対策プロジェクトを準備中だ。