「一筋縄」とは?
「一筋縄」(ひとすじなわ)とは、「普通の方法、尋常(じんじょう)な手段」という意味の言葉です。
「一筋縄」をそのままの意味で読むと「一本の縄」の意です。しかし、この場合の「縄」は単なる「一筋のもの」の比喩であると考えられており、「何か特別な用途に使う縄のこと」というわけではありせん。
古語においては「一筋」という言葉自体に「普通なさま」という意味があり、江戸時代にこれに一般的な用途の(何にでも用いるものとしての)「縄」をつけたものが「一筋縄」の由来とされています。
「一筋縄」の使い方
「一筋縄ではいかない」
「一筋縄」をこのまま単独で使うことはなく、原則として「一筋縄ではいかない」(意味:普通の方法ではうまくいかない)といった否定形で使います。
冒頭で述べたように「縄」は「汎用的な手段」の意です。よって、「簡単にはいかない」「普通のやり方ではうまくいかない」「他の手を用意する必要がある」という物事全般について「一筋縄ではいかない」と言うことができます。
また、「気難しい性格」「頑固」「ひねくれもの」「何かと難癖をつけてくる」といった人間の性格や様子を指して「一筋縄ではいかない人」と使われることもあります。
例文
- 百人の生徒がいれば、百通りの教え方を考えなければいけない。教育というものは一筋縄ではいかないよ。
- 今度引き受けた仕事は、始める前から難題だらけだ。これは一筋縄ではいかないだろう。
- 私のパパは昔気質で頑固だから、ただ外泊の許可を取るだけと言ったって、一筋縄ではいかないわ。
- 彼は一筋縄で説得できる相手ではなさそうだ。
「一筋縄」の類語表現
正攻法
「正攻法」(せいこうほう)とは、「策略などを用いず、正面から正々堂々と攻めるやり方」のことです。
「一筋縄ではいかない」が、策略として二本目の縄、三本目の縄を用意しなければならないという意だと考えれば、「正攻法ではいかない」がよく似た意味であることがわかりますね。
【例文】
- 人間関係のトラブルは、変に遠回りせず正攻法で対処したほうが後を引かない。
- 彼女に謝罪を受け入れてもらうには、もはや正攻法では難しいだろう。
常套手段
「常套手段」(じょうとうしゅだん)とは、「いつも決まって使う手段のこと」です。いつもその手段を使うわけですから、その主体にとっての「普通の方法」ということであり、「一筋縄」と似た意味があると言えるでしょう。
【例文】
- まず自分を信用させ、相手の安心感に付け込むのは詐欺師の常套手段だ。
- さすがに警察相手には、彼女お得意の泣き落としの常套手段が通用しなかった。
スムーズ
「スムーズ」とは、「なめらかなさま、物事や動作が円滑に進むさま」という意味の言葉です。英単語「smooth」に由来する言葉であり、原語の発音に従って「スムース」とすることもあります(最後の「ス」が濁らない)。
「一筋縄ではいかない」物事は、すなわち「スムーズではない、スムーズに進まない」物事であると言えるでしょう。ただし、「スムーズではない人」のように人に対しては使いませんのでご注意ください。
【例文】
- 出逢いから結婚まで、二人の関係は誰にも邪魔されることなくスムーズに発展した。
- 取引先の社長は横柄かつプライドの高い人物で、どうも取引がスムーズに進められない。
「一筋縄」を英語で
「一筋縄(ではいかない)」を英語で言いたい場合、「縄」をそのまま「rope」(ロープ)と直訳しても、慣用表現としてのニュアンスが通じません。
「一筋縄」に相当する言葉としては、以下のような言葉が該当します。
- straight(line)(まっすぐな、率直な、簡単な)
- simple(簡単な、単純な)
- easy(楽な、簡単な、たやすい)
「一筋縄ではいかない」と否定形にする場合は「not」などで否定しましょう。もし「手段、方法」の意を付け加える場合は、「trick」「method」「deal」「means」などの単語が適します。
例文
- Life isn't a straight line.(人生というものは一筋縄ではいかない)
- It's not easy to persuade the president.(大統領を説得するのは一筋縄ではいかない)