「百戦錬磨」の意味
「百戦錬磨」とは、数々の戦いによって経験を積み、鍛え上げられることを言います。
「百戦とは」
「百戦」とは、数多くの戦いのことです。「百戦」における「百」は、「百回」などのように十を十倍した数の単位ではなく、数量の多さを表しています。紀元前500年辺りの中国の兵法書『孫子(そんし)』には、以下のような一文があり、「百戦」が古来から使われていた表現だとわかります。
(敵と味方の実態をよく知っていれば、何度戦ったとしても負けることはない)
「錬磨」とは
「錬磨」とは、技芸や学問などを練り磨く、という意味です。厳しい練習などを繰り返し、能力や技術などを鍛え上げることを言います。
「百戦錬磨」の意味の変化
「百戦錬磨」の原義は、数々の戦いを経験し、武芸の技量や戦闘能力が鍛え抜かれていることを意味していました。つまり、文字通り「戦い」「戦争」のシーンのみで用いられていたのです。
そこから転じて、現在では、社会生活における様々な局面を戦いに例え、仕事などあらゆるシーンで多くの経験を積み重ねて、優れた能力を発揮することなどに用いられるようになりました。
「百戦錬磨」の使い方
それでは「百戦錬磨」の例文、用例と使い方を見てみましょう。
「百戦錬磨」の例文
- 相手は世界ランキング一位。百戦錬磨のつわものだ。我々には失うものは何もないから、全力でぶつかってこよう。
- あのコーチはさすが百戦錬磨で、子どもたちのいいところをのばすのが本当にうまい。
- 小さな町工場だが、わが社には百戦練磨の技術者たちがいる。どんな大企業にも負けない自信があるさ。
「百戦錬磨」は、これらの例文のようにスポーツや仕事などにおける勝負や戦いの場面で使われることが多い四字熟語です。
また、一番下の例文のように「錬磨」という漢字は「練磨」と表記されることもあります。一方、「磨」は「摩」と表記することはありませんので、気をつけてくださいね。
「百戦錬磨」の用例
佐藤垢石『議会見物』
この用例や上述の例文のように、「百戦錬磨」は、数多くの経験を積み、高い能力や技術力を持っていることを評価する肯定的な意味で使われています。
「百戦錬磨」の類語
「百戦錬磨」には、似たような意味を持つ四字熟語がいくつかあります。そのうちのいくつかを「百戦錬磨」との違いを含めてご紹介します。
「海千山千(うみせんやません)」
「海千山千」は、様々な経験を十分に積み、世の中の表も裏も知り尽くしている、という意味です。多くの経験を積んだことにより、裏にまで通じており、「ずるがしこい」「したたか者」というマイナスのイメージが伴う場合がある点が「百戦錬磨」との違いです。
また、「海千山千の女だからあいつだけはやめとけ」などのように、「男女関係において場数を踏んでいる人」という意味もあります。これは「百戦錬磨」にはない意味です。
「千軍万馬(せんぐんばんば)」
「千軍万馬」とは、大規模な軍隊のことです。「千軍万馬の将軍」というと、多くの戦いの経験がある人物を意味します。「百戦錬磨」が、多くの経験を通して「技術が磨かれた」ことにポイントがあるのに対し、「千軍万馬」は、「経験が豊富である」ことにポイントがある点が両者の違いと言えます。
「一騎当千(いっきとうせん)」
「一騎当千」は、一人の騎兵が千人の敵を相手にできる、つまりずば抜けて戦いに強い勇者を意味します。「百戦錬磨」には「多くの経験を積んでいる」という意味が含まれているのに対し、「一騎当千」は経験は問わずとにかく「強い」ということを表現したい際に用いられます。
「百戦」が含まれる四字熟語
【百戦百勝(ひゃくせんひゃくしょう)】戦いにすべて勝つこと。
【百戦不殆(ひゃくせんふたい)】どれだけ戦っても、決して負けないこと。
「百」と「磨」が含まれる四字熟語
【百古不磨(ひゃっこふま)】ずっと後の世まで滅びずに残ること。