「台風一過」の意味とは?
「台風一過」(たいふういっか)のもともとの意味は、台風が通り過ぎていくこと、または、台風が去った後に晴れた空が広がることを表します。そこから、大きな騒ぎが過ぎ去って元の静かな状態を取り戻したことを指すようにもなりました。
「台風」は、熱帯の海洋上で発生する低気圧で、夏から秋にかけて日本などアジアの地域に暴風雨をもたらします。「一過」はすばやく通り過ぎるという意味です。
「台風一過」の使い方と例文
台風が過ぎる・その後の空
「台風一過」は台風が過ぎたこと、また、その後気持ちの良い晴れの天気になった様子を表す時に使います。一般的に、台風がその地域を通り過ぎた後は高気圧が張り出してきて、雨風の天気から打って変わって青空が広がることが多いとされています。
【例文】
- 静岡県では台風一過の青空が広がり、前日の荒天が嘘のように感じられます。
- 台風一過で天候が回復したが、洪水や風害など、被害の状況はひどいものだ。
騒ぎが収まる
「台風一過」には、「騒動が収まってもとの状態に戻った様子」を表す用法もあります。台風は各地に甚大な被害をもたらす場合もしばしばですが、その台風が去った後のように、騒動が収束し静かになった様子を「台風一過」という言い回しで表現します。
【例文】
- あの2人はよくケンカをするが、今回のはひどかった。やっと収まって、今は台風一過といったところだ。
- 半年ほど前から騒ぎになっていた俳優Aのスキャンダルも、報道が一段落して台風一過の感がある。
「台風一過」の類語
雨過天晴/雨過天青
「雨過天晴/雨過天青」(うかてんせい)とは、雨が過ぎて(雨がやんで)空が晴れて明るくなる、または青空が広がるという意味です。転じて、雨から晴れの天気になるように、物事が悪い状況から良い方に向かっていくことを表すようになりました。
なお、「雨過天晴」と表記された場合、「天晴」を「あっぱれ」と誤読しないように注意しましょう。
【例文】
- 失敗続きで諦めようかと思っていた研究で成果が出てきた。雨過天晴といえるだろう。
- 隣家とのトラブルが解決し、ようやく雨過天青の状況となった。
「台風一過」と反対に近い意味を持つ表現
嵐の前の静けさ
「嵐の前の静けさ」(あらしのまえのしずけさ)とは、台風などの暴風雨が来る直前に、一時的に雨や風が収まって静かになる様子をいいます。そこから転じて、凶事(事件)が起こる前に不気味な静かさを感じるさまを表すようになりました。
「嵐の前の静けさ」は「台風一過」の物事が収束していく状況とは逆に、これから起こることへの不安が増すような状態を描写しています。
【例文】
- 国境の辺りは普段睨み合いをして落ち着かないのに、今月に入ってからは何もないな。嵐の前の静けさでなければ良いけれど。
- 対立している関係者が顔を揃えた会場は異様な雰囲気で、あたかも嵐の前の静けさといった様相だった。
「台風一過」以外に「台風」を使った語
台風の目/台風の眼
「台風の目(眼)」(たいふうのめ)は、台風の中心にある雨雲が無い部分をいいます。上空から見ると台風の真ん中に穴が空いたようになっていて、「目」のように見えるためこのようにいわれています。
「台風の目」は、台風の中心付近にあるところから、物事の中心的存在というイメージを持つようになりました。そこから、激しい動きのある物事の中心、もしくは、事態を引き動かす要因となる人物や勢力のことを指す言葉になりました。
【例文】
- B氏は反対勢力のリーダーで、台風の目にあたる人物だ。
- 前年の最下位のチームが台風の目となって、番狂わせを起こした。
「台風一過」書き間違いに注意
夏から秋にかけて、大きさも勢力もそれぞれに違いがある台風が次々と発生します。このような台風の様子から、「台風一過」を「台風一家」と間違えて覚えてしまうケースもあり、間違いに気づかぬまま大人になってしまう人もいるようです。
子どもが誤解している場合、大きい台風を親、小さい方を子供や兄弟として「台風が一家で日本にやってくる」と想像を巡らせているのかもしれません。可愛らしい間違いですが、意味や表記を正しく教えてあげたほうがいいでしょう。