「老獪」とは？意味や使い方を類語を含めてご紹介

「老獪（ろうかい）」とはたくさんの経験を積んでいて、ずる賢いことです。単に経験豊富なだけでなく、豊かな経験ゆえにかえって悪賢くなっている人に対して使います。

仕事にせよ趣味にせよ、全く経験がないことに初めて取り組む人は正面から事に当たるものです。けれど何度も繰り返しているうちに楽な方法というものがわかっていきます。無駄な部分を省いたり、簡単な方法で置き換えたり。人相手なら、裏をかいたり予防線や根回しを用意したり。

良く言えば手馴れたベテランです。悪く言えばずるくてしたたかな腹黒い人と言えます。どちらかと言えば「老獪」は悪い意味で使われることが多い言葉です。

「老獪」の「老」と言えばお年寄りを指すことが多いのですが、必ずしもそうと決まっているわけではありません。物慣れた人、一番偉い臣下という意味もあります。

皆さんは大河ドラマは好きですか？江戸時代に置かれた役職に「老中」や「大老」があります。いわゆる大臣ポジションであり、田沼意次や松平定信、水野忠邦あたりが有名ですね。他にも「若年寄」や「家老」などの役職名があります。

「老」の字の由来は、お年寄りを表す象形文字です。お年寄りはいろいろな経験を積んでいますから、それだけ知恵があるということであり、出世もしていることが多い。だから「老獪」や「老中」などの熟語にも使われるわけですね。

では、「老獪」の「獪」の字はどうでしょう。この字は他ではあまり見かけないので、印象やイメージが固まっている人の方が少ないでしょう。「狡獪（こうかい）」という言葉などに使われます。

けものへんは広く動物のことを指しますが、「狡」「犯」「狂」のように「（動物のように）手に負えない、悪い行い」という意味も持っています。

一方、つくりは「会」の旧字体で、蓋のある鍋でいろいろなものを煮込んでいるさまを表し、「集まる、組み合わせる、結ぶ」などの意味があります。

へんとつくりを合わせて、「手に負えない悪いものを集める」ことを示し、すなわち「獪」はずる賢いという意味を表しているようです。悪さをする老獪な動物に手を焼いたことがある人もいらっしゃるのではないでしょうか。

• 老獪な手口で手玉に取る。
• あの政治家はなかなか老獪だ。
• 勝利を手にするためには、老獪に立ち回る必要があります。

「海千山千（うみせんやません）」とは経験を重ねて世の中の裏表を知り尽くした人のことです。特にずる賢くてしたたかという点に関して使われます。

海に千年、山に千年住んだ蛇は竜になるという伝説に由来する言葉であり、「海千河千（うみせんかわせん）」とも言います。

あまりにも長い間生きているので、この世で起きるようなことは大抵見てきてしまった。世の中で起きることも人の心も、裏まで知っている。そこから、老練な食わせ者という意味で使われています。

「たぬきおやじ」は良い人そうなふりをしたずる賢い人のことです。特に、年老いた男性に対する悪口やののしりとして使われます。

それにしても、なぜ「たぬき」なのでしょう。たぬきは、日本の民話では色々な人やモノに化けて人間をだますと言われています。また、「たぬき寝入り」といわれるように、眠ったふりをすることとも。

このような相手をだますというイメージゆえに、とぼけた様子で悪賢く人をだます様子や、その人のことを「たぬき」と呼ぶようになったと言われています。

「抜け目がない」とは、自分の利益になりそうなことを逃さない様子のことです。「抜け目」とは手抜け、手抜かり、気の抜けたところという意味ですので、このまま考えれば、「抜け目がない」は非の打ちどころのない様子、という意味となりそうですね。

しかし、例えばこの「抜け目」が商売の話だったとしたらどうでしょう。どこにも抜け目がないわけですから、他の人から見れば、小さな利益も取りこぼさず、儲けにこだわって、ずる賢く立ち回っているように見えるかもしれませんね。

それゆえ、慣用句としては「判断力がある」とか「準備万端で機敏な人」といった肯定的な意味がある一方で、「ずる賢い」という否定的な意味も含まれるため、使用には注意しましょう。